交通事故低減のための自動車の追突防止支援技術 の商品レビュー
大半が知っていることで新規性に欠けるが、 緊急自動ブレーキの基本的な制御演算を数式で整理しており 製品を手がけるエンジニアには重宝する一冊。
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最近よく宣伝されている衝突安全システムについて、その考え方と技術の根拠を解説している。自動車メーカによるものではなく学術研究者側からみたものであるが、決して机上論ではなく、シミュレータによる実験や実車走行から得られたドライバー操作、さらにはドライビングレコーダーに記録された実際...
最近よく宣伝されている衝突安全システムについて、その考え方と技術の根拠を解説している。自動車メーカによるものではなく学術研究者側からみたものであるが、決して机上論ではなく、シミュレータによる実験や実車走行から得られたドライバー操作、さらにはドライビングレコーダーに記録された実際の事故映像などを利用してシステムの構築と理解を進めている。 なぜ「自動運転」ではなく「運転支援」という表現であるのかの説明にかなりのページを割いている。その後の章でも折にふれてその理由を説明している。「自動運転」という言葉から連想する意味が非常に広く、文字通り何もしなくても良いという印象を与えてしまう。それを避けるために「運転支援」という表現を選んでいるという。また、ドライバーの安全に対する責任の所在を明らかし、運転の主体はドライバーであることを明確にすることも意図している。これはシステムの設計にも影響を与えており、例えばアクセルを離す、ブレーキをかけるという操作において、その操作をしなければ確実に事故となってしまうという場合でなければ、まずドライバーに操作を促すような動作をするような設計となっている。また、「運転支援」という観点に立つと、自動でアクセルを緩める、ブレーキをかけるという技術よりも、それをどうドライバーに伝えるのかという点が課題であるかが浮き彫りになってくる。ドライバーがシステムに「依存」してもいけないし、逆に「不信」に陥るような状況も良くない。「依存」はドライバーが判断を放棄することで安全意識の低下を招き、「不信」はシステムを無視することにつながり、結果、事故を招くことにつながってしまう。まだまだ研究が必要な領域であるし、今後の衝突安全システムの普及が進むことで更に議論されるに違いない。 「運転支援」ひいては「自動運転」の難しさは技術ではなく実は心理学の問題であるというのは興味深い。こういった技術の発展と普及で運転は簡単になる一方で、免許の取得や更新に性格分析のようなもの(システムに依存しすぎないか、安全の意識は十分であるかなど)が加わって免許を持つことが今よりも難しくなることもあり得るのかもしれない。
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