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大不況には本を読む の商品レビュー

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2022/10/21

2009年の中公新書ラクレ版から13年後の景気回復の道筋が見いだせない今、この本を読むことは意味のあることだと思った。経済学者や為政者に言わせれば実現は難しいことなのかもしれないが、国会の議論などではもっとこの本に見られるような率直な議論がされるべきではないかと感じた。

Posted byブクログ

2022/09/26

そもそも本書は2009年6月に中公新書ラクレとして刊行されたものを2015年に文庫化したもの。 取り上げている『大不況』は2008年秋から連鎖的に勃発した未曾有の金融危機・リーマンショックを軸に扱っており、およそ13年前に執筆された内容ながらもコロナ禍およびロシアによるウクライナ...

そもそも本書は2009年6月に中公新書ラクレとして刊行されたものを2015年に文庫化したもの。 取り上げている『大不況』は2008年秋から連鎖的に勃発した未曾有の金融危機・リーマンショックを軸に扱っており、およそ13年前に執筆された内容ながらもコロナ禍およびロシアによるウクライナ侵攻下の世界という’今’を生きる私達、わけても生まれながらにして『不況』しか経験していない若い世代にこそ読まれるベき一冊であると感じた。 まず第一に、本書は「『大不況の最中に本を読んで、景気を回復させよう』という種類のものではない」(p195)し、「本を読むことの徳」(p146、150)を滔々と説くものでもないし、「これを読めばOKという本なんかない」(p224)と回答している。 もっと『不況』という状態の事を総括的に捉え直し、「この大不況が収束したらどう生きるのか」(p87、88)、つまり「『どのレベル』に届いたら『景気は回復した』になるのか」(p80)を、’景気悪いなぁ’と漫然とボヤくだけではなくて、目安なりをしっかりと自らの頭で考えましょう、という旨を示している。 一方で、バブル景気の頃にただ戻れば良いかといえばそうではなくて、「みんなが金持ちになって『金持ちばっかり』になってしまった時だって、経済は動かないかもしれ」(p162)ず、「豊かになっても経済はそうたやすく循環するものでもない」(p167)という状態を、かつての日本は既に経験している。 それが即ち「一億総中流」を達成した1980年前後の「飽食の時代」であり、戦後復興を経てひたすら働き、貯蓄して貯め込んでもまだ働いてモノを作り続けた真面目な日本人は1985年にアメリカからの干渉を受けた際にこれまた真面目に応じた。これが「プラザ合意」であり、日本国内の内需を刺激してアメリカ製品・金融商品をこれでもかと買いこみ、結果バブルが膨れ上がり、まさに’泡沫の夢’の如くに弾け飛んで「失われた30年」時代になだれ込んで行く…のである。 不況の収束を考える際には「『我々はこの先どうあればいいのか?』を考えることこそ」(p188)が不可欠であり、つまりは「自分達のあり方」(同)、「人のあり方」(p12)を見つめ直す事であり、即ち「『今までのあり方』を振り返」(p233)るとは『本を読む』行為に繋がってゆくのである…という寸法である(意訳)。 何も本を読むだけが唯一の選択肢というつもりは私には無いが、「『過去』を拒絶」(p234)って結構割と現代社会を鋭く突いた一節ではあると感じている。 ’新しい価値観’や’アップデートされた社会’みたいなメッセージは耳触り良く聞こえるし、大事だと思うけど視線が未来に’しか’向いていないって事は「未来に備える経験値となる過去」(p236)を蔑ろにしている事であり「『壁にぶつかってしまった現在の先にある未来』を考える力」(同)を養う事が出来ず、結果何も考えない・考えられない…という先細った袋小路に迷い込んでしまう恐れを孕んでいると思う。 ’見たいものだけ見る’’考えたいことだけ考える’’聞きたいことだけ聞く’というのでは真に豊かな人生を送れよう筈もなく、だからこそ私は『本を読む』ことを続けていきたいと気持ちを新たにした次第でありました。 1刷 2022.9.26

Posted byブクログ

2019/11/28

かつて「出版は不況に強い」といわれていたのですが、その後の不況のなかでは出版業界は振るわず、逆に「活字離れ」が問題だという嘆きの声が多く聞かれるようになりました。本書は、この事実についての考察を皮切りに、経済的な思考の「外」は、どこにあるのかということが追求されていきます。 戦...

かつて「出版は不況に強い」といわれていたのですが、その後の不況のなかでは出版業界は振るわず、逆に「活字離れ」が問題だという嘆きの声が多く聞かれるようになりました。本書は、この事実についての考察を皮切りに、経済的な思考の「外」は、どこにあるのかということが追求されていきます。 戦後の日本は、欲望は開放されてしかるべきだという発想に基づいて発展してきました。その後、バブルの崩壊を経験した日本は、「欲望は自分で抑えるもの」だという発想に舵を切ることもできたはずだと著者は指摘します。そうした発想の転換をおこなえなかったことが、経済的な思考の「外」に対して目を閉ざす結果につながったというのが、おそらく著者が本書で述べていることではないかと理解しました。 その上で著者は、経済的な思考の「外」に気づくためのリハビリテーションとして、「本を読む」ことを勧めています。ただし著者は、なにを読むべきなのかということを読者に向けて親切に教えるようなことはありません。むしろ、これまで日本が歩んできた発想の枠組みが行き詰まったことが明らかになったいまこそ、一人一人が「本を読む」ことでみずから考えなければならないというのが著者の主張なのであって、「で、どんな本を読めばいいでしょうか?」と質問するひとは、著者の主張を理解していないというべきなのでしょう。 議論の内容は、これまでの著者の主張のくり返しもまま見られるものの、おおむねおもしろく読むことができました。ただ、とくに前半に現代の経済状況について延々と議論がつづく割には、最初から結論が見えているような印象もあります。

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2016/06/18

本を読んで知力をつけて不況を乗り越えよう!という本ではなくて、経済分析の本です。(どちらかというと) 実経済と乖離した金融工学に振り回されるが、 どう生きていくか、本当に不況を恐れることなのか、 そこにおける本(文芸書)の果たす役割とは… ということを著者と一緒に考えたくなる...

本を読んで知力をつけて不況を乗り越えよう!という本ではなくて、経済分析の本です。(どちらかというと) 実経済と乖離した金融工学に振り回されるが、 どう生きていくか、本当に不況を恐れることなのか、 そこにおける本(文芸書)の果たす役割とは… ということを著者と一緒に考えたくなるような本。 どちらかというと口語体に近いので読み進めやすいです。

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2015/09/13

著者の最近の本を読んでいなかったが、「橋本節健在」で嬉しかった。あの内田樹氏が多大な影響を受けたというほどの御仁が、解りやすく丁寧に、なぜ「大不況には本を読むべきなのか」を解説してくれる。「本を読んで近代(開国から150年)の見直しをすることが、“この先どうするか”を考える時の先...

著者の最近の本を読んでいなかったが、「橋本節健在」で嬉しかった。あの内田樹氏が多大な影響を受けたというほどの御仁が、解りやすく丁寧に、なぜ「大不況には本を読むべきなのか」を解説してくれる。「本を読んで近代(開国から150年)の見直しをすることが、“この先どうするか”を考える時の先例になる」。一見するとありふれたような回答だが、かゆいところに手が届きまくる橋本節は、読んでいて痛快の一言。

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2015/08/05

 非常におもしろい考察で、うなづきつつ一気読み。しかもよみやすかったので助かった(氏の著書はしばしば読みづらいもので・・)。非常に珍しいかたちで先進国入りを果たした、途上国に今もある、という視点がすごい。こういう史観で現代社会を学習できれば、良い。氏得意の「わからん」という姿勢も...

 非常におもしろい考察で、うなづきつつ一気読み。しかもよみやすかったので助かった(氏の著書はしばしば読みづらいもので・・)。非常に珍しいかたちで先進国入りを果たした、途上国に今もある、という視点がすごい。こういう史観で現代社会を学習できれば、良い。氏得意の「わからん」という姿勢も、ただ言いっぱなしでなく、~だからわからん、という筋の通し方がおもしろい。ことごとく筋がずれていく世の中にあって、啓蒙書としても良い、と言いたいくらいの内容に思えた。二回目読むとそうでもないか、とか思うかもしれんが。  とにかく、そのタイトルはともかく、楽しめる現代日本経済史になっている。

Posted byブクログ

2015/06/30

明治維新を成功させ、一億総中流を実現させた日本近代の150年は、もはや過去となった。いま日本人はいかにして生きていくべきか。その答えを探すため、貧しても鈍する前に、本を読む。

Posted byブクログ

2015/06/15
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

2009年に新書で出たものの文庫化。しかし、いまだもってリーダブルな内容である。いくらアベノミクスを喧伝して、大企業が空前の収益を上げたところで庶民には好況感など感じられず、豊かな中間層が喪失してしまった今の日本は、あいかわらず大不況といっていいだろう。本書で作者が言うように、一度豊かになってしまった先進国は、もう二度と急激な経済成長を期待することはできない。したがって、大不況をどうしのぐのか、せいぜい現状維持を続けるくらいでそこそこやっていくにはどうしたらいいのか、を考えるほうが理にかなっている。そこで本を読む、ということになるのだが、それはつまり「答えなんかないのだから自分で考えるのだ」ということを知るためでもある。本を読む、ということは何が書かれていないかを知る、ということである。そこに答えがあるのだとも言える。目から鱗が落ちるような、知性の切れ味。答えはないが、脳内がクリーニングされたようにすっきりする書である。

Posted byブクログ