バウルの歌を探しに の商品レビュー
6月目前の東京、梅雨の気配を孕んだ風を頬に受けながら、思考は熱気と土埃と人いきれのバングラデシュに飛んでいく。 ほんとうに素晴らしい本に出会った。 「自分を探す旅」と言うと酷く陳腐だけど、著者は意図せずして自分を見つけに行ったのだ。 バウルの歌に引き寄せられて旅をしながら、思...
6月目前の東京、梅雨の気配を孕んだ風を頬に受けながら、思考は熱気と土埃と人いきれのバングラデシュに飛んでいく。 ほんとうに素晴らしい本に出会った。 「自分を探す旅」と言うと酷く陳腐だけど、著者は意図せずして自分を見つけに行ったのだ。 バウルの歌に引き寄せられて旅をしながら、思考は過去(国連での仕事、学生時代の経験、そして父親のこと…)と現実の間を行き来する。 まるで鳥籠の中と外を気紛れに飛び交う「見知らぬ鳥」のように。 バウルに出会うには2週間では短すぎると言われた旅で、信じられないくらい多くの邂逅があった。 彼女が引き寄せたのか、バウルが引き寄せたのか、いずれにせよ出会うべくして出会ったのだと思う。 時を得、人を得る。 いわゆる「持ってる」人だ。 旅先で出会うやさしい人々や、旅を共にしたカメラマンの中川さん、通訳のアラムさん、みんな抱きしめたくなるほどに魅力的だった。 バウルについて、もっと知りたくなった。 そして、私も心だけでもバウルになりたい。 見知らぬ鳥、つかまえたなら、「心の枷」をその足にはめたのに…
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解説で高野秀行さんが、「酸欠になった肺に新鮮な空気がいっぱい入ってくるような爽快感」と書いている、まさにその通りの読後感だった。これ見よがしの感じが全くない自然な書きぶりが好感度大。お気に入りの一冊になりそうだ。 「パリの国連で夢を食う」を読んだとき、この方のスーパーな経歴や、...
解説で高野秀行さんが、「酸欠になった肺に新鮮な空気がいっぱい入ってくるような爽快感」と書いている、まさにその通りの読後感だった。これ見よがしの感じが全くない自然な書きぶりが好感度大。お気に入りの一冊になりそうだ。 「パリの国連で夢を食う」を読んだとき、この方のスーパーな経歴や、それをまたあっさり捨ててしまう度胸の良さに驚いたものだが、この本で書かれている旅も「普通」からはほど遠い。観光地とはとても言えないバングラデシュに、ちょっと興味を持った「バウル」を探しに行く。連れは男性の友だち(川内さんには夫もいるのだが)。 本当におもしろいと思うのは、そういうことをなんでもないようにごく自然に行動する著者のスタイルだ。肩肘張らないとはこのことで、読んでいてとても気持ちいい。悪路をオンボロバスに何時間も揺られたり、寝袋で車中泊したりしながら、探し求めるのは、なかなかはっきりした姿をとらえられないバウルの歌。読み進めるうちに、いつの間にかその不思議な魅力にひかれて、著者とともに探索の旅をしているような気になる。 連れである写真家の中川さんも飄々としていていい感じだ。さらに、現地通訳のアラムさんがまたいい。アラムさんは日本に住んでいたことがあるのだが、その経緯はバングラデシュの厳しい歴史を物語るものだ。旅をともにするうちに打ち解けた彼が、そうした事情を語り、「日本のおかげで生きのびることができた」と言う場面では胸が熱くなる。 ほかにも、行く先々で忘れがたい出会いがある。これは川内さんたちの人柄だろう。また、ベンガル人は困った人を放っておけないのだとアラムさんは言う。人なつこいという感じではないが、優しい心を持った人たちなのだなあと思い、ほとんど知らなかったバングラデシュという国が少し身近に感じられたような気がする。 それにしても実に不思議な国だ。すし詰めの列車のなかで、著者に懇願された男性がバウルの歌を歌い出すと、皆熱心に聞く。それだけでなく、その歌詞の解釈について乗客同士で熱い議論が始まるのだ。アラムさんが「ベンガル人はテツガクとか宗教の話が大好きなんですよ」「ショウバイの話よりまずはテツガクなんですから」と言っていたそうだ。「アジア最貧国」バングラデシュの別の姿がそこにある。 「パリの国連で~」で詳しく書かれていたが、ここでも亡くなったお父さんについて触れたくだりがある。ここはちょっとしんみりする。子どもの頃からずっと、自由にさせてくれ、いつも応援してできる限りのことをしてくれた、とある。著者ののびのびした個性はそういう環境で育まれたのだろう。また、アメリカ留学時代、コスタリカを訪れたときに出会った女性とのエピソードも強く印象に残る。バウルの歌を探すなかで川内さんが見いだすのは、「人はココロに導かれて生きていく」ということ。その「ココロ」は人との関わりが作るのだろうと思う。
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川内さんの本を見つけてすぐさま購入。バウルを追い求めていくなかで、バングラデシュの様子やそこで川内さんが感じたことが描かれていておもしろい。川内さんの文章が好き。引き込まれるし共感できる。
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結局バウルに関して前より 何かわかった訳ではないけれども 前より少し生きる事について深く考えるようになった。
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バングラデシュのこと、ましてはバウルのことなど、何も知らなかった。本当に世界は広い。心の豊かさってなんだろう。
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