動物珈琲店 ブレーメンの事件簿 の商品レビュー
+++ 平井瞳が営む喫茶店は家庭的な雰囲気を売りにしてきたが、ある事件をきっかけにペットも入れるように店の改装を決心、名前も一新することに。その名も“動物珈琲店ブレーメン”。店は常連たちが連れてくるペットで大賑わいとなるが、奇妙な事件もいっしょにやってきて…。ペットカフェを舞台に...
+++ 平井瞳が営む喫茶店は家庭的な雰囲気を売りにしてきたが、ある事件をきっかけにペットも入れるように店の改装を決心、名前も一新することに。その名も“動物珈琲店ブレーメン”。店は常連たちが連れてくるペットで大賑わいとなるが、奇妙な事件もいっしょにやってきて…。ペットカフェを舞台に、犬も猫も大活躍のユーモアミステリー! +++ 「犬が電話をかけてきた」 「この猫の名前はいくつある?」 「宗像さんの福の神」 「ノラが家出するわけがない」 「幕を引くには早すぎる」 「猫は秘密を嗅ぎつける」 +++ タイトルを見ると、なんだか近頃よくある感じのほのぼのほっこり系のカフェミステリのようだが、そこは著者の作品である。もちろん動物は出てくるし、犬や猫がキーになってもいるし、彼らが解決に導いてくれることさえあり、この町の人たちを結びつけるほのぼのとした存在であったりもするのだが、そんな中に、ぴりっとブラックな要素が練りこまれていることがあって、ああやっぱり、と安心したりもするのである。ただのハートウォーミングでは終わらない。事件は、はっきり犯罪と言えるものもあれば、かなりシリアスなものもあり、くすっと笑ってしまうものもありで、バラエティに富んでいて愉しめる。ただ、動物に比べて人間のキャラクタがちょっぴり弱かった気がしなくもない。もっと読みたい一冊である。
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独特の奇妙な味わいで、ミステリー界に孤高のポジションを築く作家、蒼井上鷹(築いているのか?)。文庫で届けられた新刊は、どこかで見たような装丁。この方もとうとう、そういう路線に手を出したのかと思って読み始めると…。 いやあ、やっぱり蒼井上鷹は蒼井上鷹でした。『動物喫茶店ブレー...
独特の奇妙な味わいで、ミステリー界に孤高のポジションを築く作家、蒼井上鷹(築いているのか?)。文庫で届けられた新刊は、どこかで見たような装丁。この方もとうとう、そういう路線に手を出したのかと思って読み始めると…。 いやあ、やっぱり蒼井上鷹は蒼井上鷹でした。『動物喫茶店ブレーメンの事件簿』と題されているが、カバーイラストのような美人の探偵役がいるかといえば…そもそも探偵役がいない。ブレーメンという店の存在も薄い。背景の一部というか、何というか…。 最初の「犬が電話をかけてきた」だけは、事件簿っぽい内容である。事件の内容はちっとも笑えないし、犯人の思考回路に色々突っ込みたくなるが、それでも無理矢理伏線を回収している辺りは、この方らしい味わいと言っておきましょう。 「この猫の名前はいくつある?」。どいつもこいつも、怪しい話に引っかかるかよと呆れてくるが、現実にこの手の詐欺は枚挙に暇がない。「宗像さんの福の神」。骨董の世界は魑魅魍魎が跋扈する。素人が欲を出したばかりに、無駄に混乱したという話…か? 「ノラが家出するわけがない」。こういうネタは、誰に書かせても受け付けない。蒼井上鷹の手腕をもってしてもだめでした、はい。「幕を引くには早すぎる」。何でそんなイベントやるんだとか、こんなにこじれる前にどうにかならかったのかとか、いくらでも突っ込めるが、早合点のようで早合点ではなかったってか。何だそりゃ…。 「猫は秘密を嗅ぎつける」。あるカップルが誤解に誤解を重ね…とだけ書いておくか。最後らしい大団円があるわけでもなく、今回も微妙な読後感が残ったのだった。 そもそも、普通にミステリーを楽しみたい読者にはお薦めしにくい蒼井作品だが、本作に至っては、街の日常を描いているような乗りで、もはや何が論点か、誰が主人公かすら曖昧である。短編なのにやたら込み入っているのは相変わらずだし。 それでも蒼井上鷹に興味を持ったというあなたには、『4ページスミテリー』辺りをお薦めしましょう。蒼井さんにはある種の才能があると、僕は確信しているが、その才能が広く理解される日は、おそらく来ないだろうなあ。
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