日本人とオオカミ の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
原本は2004年刊。さまざまな文献と植生・生態系の知識を駆使して描かれる「オオカミ観」の変遷。原始日本においては、牧畜のない稲作ゆえに、オオカミは害獣ではなく脅威たりえなかった、と筆者は述べている。このくだりは本書の出発点でもある。 とはいえ、かつて読んだ『イヌの考古学』では、弥生期における「食用犬飼育」について、出土した骨を元に推定されている。狭義ではあるが、畜産と稲作が原始日本に並存した可能性。そのあたりをどう捉えればいいのか、若干困惑しつつ読み進めた。 史料や参考文献によるソース提示は丁寧(一次史料と二次史料の混同はあるが)で、さすが元新聞記者。特に、近世における大規模開墾でヒトとオオカミの関係が激変していく様は、現代の獣害と同様であり「今の自然破壊」云々という定型句がいかにいいかげんかを思い知らされる。掲載文献のいくつかはweb上でも読めそうなので、あとで確認したい。
Posted by
- 1