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大坂蔵屋敷の建築史的研究 の商品レビュー

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2015/09/25

一級建築士の編者と、谷直樹先生をはじめとする建築史家との共同作業によって実現した画期的一冊。 大坂蔵屋敷は古くは経済史、近年では社会史の角度から分析されてきたが、建築史というフィルターを通してみることで、また違った側面が見えてくることを鮮やかに示している。 特に鮮烈だったのは...

一級建築士の編者と、谷直樹先生をはじめとする建築史家との共同作業によって実現した画期的一冊。 大坂蔵屋敷は古くは経済史、近年では社会史の角度から分析されてきたが、建築史というフィルターを通してみることで、また違った側面が見えてくることを鮮やかに示している。 特に鮮烈だったのは、蔵屋敷が祭礼を通じて、地域住民に娯楽を提供する場にもなっていたこと、そしてそれを戦略的にマネージすることで「賽銭ビジネス化」していたこと。 これはやはり江戸の藩邸とは違う、商都・大坂ならでは、といったところだろう。 個人的には、改築前後の図面を比較することで、何が建築上の問題とされ、どのように解決されたかを把握し、そこから翻って、当時の人々の動線、空間利用のあり方を復元するという建築史のアプローチに感心した。 それと、谷直樹先生の博識。これはただ頭が下がる。 編者の植松先生がトレースした数々の図面資料込みでこの値段は破格といっていいと思う。 江戸時代の大坂に関心を寄せる者には必読の書である。

Posted byブクログ