生き抜く力を身につける の商品レビュー
神奈川県にある私立桐光学園の中学生が、さまざまな学者、研究者、知識人の人たちから受けた講義を収録した内容です。 タイトルをそのまま信じると、なんだか「サバイバル能力」についてさまざまな角度からの示唆が得られるのではないかと思ってしまいましたが、実際に読んでみるとそこまでストレー...
神奈川県にある私立桐光学園の中学生が、さまざまな学者、研究者、知識人の人たちから受けた講義を収録した内容です。 タイトルをそのまま信じると、なんだか「サバイバル能力」についてさまざまな角度からの示唆が得られるのではないかと思ってしまいましたが、実際に読んでみるとそこまでストレートかつシンプルではありませんでした。それぞれの講師役が、それぞれの得意分野の視座から見たこの世界を語っている。聴衆の中学生、そして読者にとって、経験したことのない新たな「世界の見え方」を体験させてくれるような中身です。 講師役は7人。大澤真幸さん、北田暁大さん、多木浩二さん、宮沢章夫さん、阿形清和さん、鵜飼哲さん、西谷修さんの順で収録されています。講義が行われた時系列は順不同です。 まず、大澤真幸さんが自由について講義されていますが、これが僕にとってはもっとも知的興奮が得られた内容でした。人の名前の大切さを、孤児院から引き取られてそれまでと別の名前で呼ばれ出したことで知性の発達が遅れてしまった子どもを引き合いにだしながら、「存在」というものを哲学していきます。そして、他者からの承認が得られることが「自由の条件」であることを解き明かしていく。その道筋を、講師から教え諭されるというよりは、共にその道を歩みながら学ぶ、というような話しぶりなので、おもしろいんです。 他の講義では、キャプテン・クックの話、地図の話、世代によってその若い時代というものは違うという話、イモリやプラナリアの再生能力の話、グローバリゼーションの話、コミュニケーションのありかたの話が展開されています。 やっぱり、僕が本書を読む前に望んでいた「サバイバル」というものについて直結する話はなかったのですが、サバイバルすること、つまり「生き抜く力」は、広くしぶとく考え抜く能力が必要でしょうから、そういった意味では、頭を鍛えようという気持ちにさせる内容だったと言えます。巻末に、本書へ続く4冊の広告が載っていて、それを読むと、タイトルこそ違えど、どれも「生き抜く力」を大テーマとして編まれているのではないかな、と思えました。読んでみなければわかりませんが、そういった種類のシリーズといった感じがしました。
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阿形清和氏の「プラナリアの再生」の話が特に印象に残りました。プラナリアの再生から人間の再生医療まで繋がるとは。生命の不思議をいろいろ知りたくなりました。
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そうそうたる大人による執筆。 コンセプトは、中学生向けに大学並みに深いことを伝える、というものだろう。 第5巻は、「自分の能力」がテーマ。この巻の前までの巻で扱った中学生から大学講義5『生き抜く力を身につける』ちくまプリマー新書世界の捉え方を踏まえ、自分の力をどう高めるか。最初の...
そうそうたる大人による執筆。 コンセプトは、中学生向けに大学並みに深いことを伝える、というものだろう。 第5巻は、「自分の能力」がテーマ。この巻の前までの巻で扱った中学生から大学講義5『生き抜く力を身につける』ちくまプリマー新書世界の捉え方を踏まえ、自分の力をどう高めるか。最初の「学ぶ」ということに戻るのであろう。 一言で言えば、こういう執筆陣に共通するのは、一般人と異なる「問いの立て方」と言っていいだろう。どの設定においても、「答えの出そうな問い」というのがある。 大澤真幸 自由の条件の場合、 ・「名前とは何か」、「名前は概念と同じか」:その答えとしては、概念が「それが何であるか」を示すのに対して名前は「それがある」=存在そのものを示す、という洞察が鋭い 西谷修 私たちはどこにいるのかの場合、 ・「自分とは何か」ではなく、「自分はどこにいるのか」を考えることで、HOW=科学ではなく、WHY=哲学であることが示される。科学は記述であり、哲学は探究であるとする。 結局、人は自分で育つしかない。自分に必要な問いを立てる力が自分力である。教育のできることは、その手伝いまで。 大澤真幸 自由の条件 ・自由=理論上は、働く余地がない、現実的には、存在を感じずにはいられない ・ある子どもの例:フレデリックとアルマン ・「名前とは何か」、「名前は概念と同じか」:その答えとしては、概念が「それが何であるか」を示すのに対して名前は「それがある」=存在そのものを示す ・どうすれば、責任を持った「自由な主体」になることができるか=存在が付与される ・アキハバラの悲劇 北田暁大 いま君たちは世界とどうつながっているか ・グローバリゼーションとジャパニゼーション ・モバイルメディアを持つことは「いつでも、どこでも、誰とでも」即時通話ができる。その反面、プレッシャーも感じる。つながらないと深読みしがち。 ・土井隆義『空気を読む時代のサバイバル』「友達地獄」 ・正高信男『ケータイを持ったサル』 ・本田由紀『ハイパー・メリトクラシー』 ・フラッシュモブ、大規模オフ ・オタクの思想とストリートの思想 ・ニコニコ動画 ・アニメオタクコンテンツにおける「世界観の提示」vs 「「萌え」どころの断片の提示」 ・漫画の読み方の類型化:移入、表層受容、自己陶冶 多木浩二 キャプテン・クックの航跡 ・18世紀のイギリスに生きた航海者:ジェームズ・クック ・社会の中で主流となる思想の変化、政治的な仕組みの変化、学問の発達といった事柄を具現化した活動 ・クックの航海 1回目:天文学的な研究、地理学的な神話的大陸の発見、 2回目:神話的な大陸を直接目指す 3回目:北方航路の探求 宮沢章夫 地図の魅力とその見方 ・「地図を描くとはどういうことか」 1 記号化の作業 2 グラフィカルな欲望の実現 3 概念や思想の図示 4 世界をわがものにすること 5 世界を手なずけること 阿形清和 イモリやプラナリアの逞しさに学ぶ ・「再生できる動物と再生できない動物の違いは何か」=先っぽがつくれるか ・「勉強する子と勉強しない子の境は何か」=色々な業種のプロになるためにというモチベーション ・人間はかさぶたによって生命の維持はしやすくなったけれど、その代償として再生能力を失った 鵜飼哲 〈若さの歴史〉を考える ・名前と名字:必然的な分裂 ・「若い人同士が互いに教育しあう」ことから引き出されるポテンシャル ・つながるために「外側」に表現する、関心を持つ、「聞く訓練」と「読む訓練」 西谷修 私たちはどこにいるのか ・「自分とは何か」ではなく、「自分はどこにいるのか」 ・科学=特定の対象、哲学=対象を限定しない ・考える力を磨く=哲学 ・グローバル化の why 。世界の西洋化 例:西暦
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名前の役割や、それに伴う症状などの沢山の研究がなされていてとても面白かった。また、英語を勉強する時に、今までは受験のためだけにやっていると思っていたけど、社会に出て外国人と喋れたらいいなと思う
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少し難解なものが多い巻ですが、それもそれで勉強になります。難しいものをわかりやすくするのも大切ですが、難しいものを難しいまま知るのもまた必要なことです。大澤真幸さんの「自由の条件」、多木浩二さんの「キャプテンクックの航跡」、宮沢章夫さんの「地図の魅力とその見方」の3つは分かりや...
少し難解なものが多い巻ですが、それもそれで勉強になります。難しいものをわかりやすくするのも大切ですが、難しいものを難しいまま知るのもまた必要なことです。大澤真幸さんの「自由の条件」、多木浩二さんの「キャプテンクックの航跡」、宮沢章夫さんの「地図の魅力とその見方」の3つは分かりやすくて、かつ面白いです。考えさせられる哲学的な部分もあれば、新しい発見や捉え方を教えてくれます。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
中学生に大学講義をするシリーズの5作品め。内容は濃いが中学生にも判るようにと書かれている。そのため具体的な例を示してそれがどういう意味があるかを感がえさせているアキバハラの悲劇や便所飯などを例に出してそれがどういう意味を持っているのか書かれている。目から鱗の話もある。
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図書館で検索中に見つけた本 雑誌などに発表されたもののまとめかもしれない または学園での講演のようだ 一般の社会人にも答えを出すことが難しいテーマである なぜ生きる何のために生きる ヒトであるがゆえにつきまとうテーマである 中学生という多感な時期に 前向きに考えることは良いこと...
図書館で検索中に見つけた本 雑誌などに発表されたもののまとめかもしれない または学園での講演のようだ 一般の社会人にも答えを出すことが難しいテーマである なぜ生きる何のために生きる ヒトであるがゆえにつきまとうテーマである 中学生という多感な時期に 前向きに考えることは良いことだと思う 自由 他者との関係
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なかなか読み応えのある難しい内容の本であった。 中高生が理解するのは難しいとも思われるが、背伸びをしながら考えて成長していくことが大切だと思う。
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面白いのは,全く別の分野の全く別な方が全く別なタイミングで将来に対する姿勢について同じことを言及されている点.全く異なることを研究していても通底する思想,あるいは人生哲学は類似する点があるのかも知れない.その点について,異分野の講演者達の議論を聞いてみたい.
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前の4作に比べると、得られるものが少なかったように思う。大澤真幸さんはきっと重要なことを言っているのだろうけれど、最後の数ページを読み返してみてもしっくりいかない。北田暁大さんの「湘南海岸ゴミ拾いモブ」はなかなか面白かった。ネットを介して人が集まって大きな力になるということには興...
前の4作に比べると、得られるものが少なかったように思う。大澤真幸さんはきっと重要なことを言っているのだろうけれど、最後の数ページを読み返してみてもしっくりいかない。北田暁大さんの「湘南海岸ゴミ拾いモブ」はなかなか面白かった。ネットを介して人が集まって大きな力になるということには興味がある。キャプテン・クックはいったいどこから出てきたのか、地図の話は何だったのか。まあ、本の紹介で綴喜郡贄田が出てきたのにはちょっと笑えた。昨年まではしょっちゅう見ていた住所だから。阿形清和さんが岡田節人先生のいる京大を目指して勉強したという話には納得。しかし、「やる気」が大事なのはその通りなのだけれど、どうやってその「やる気」を出すかが問題なんだ。どうも幼児期の過ごし方が大事なようなのだけれど。残りの哲学者2人の話は何とも言えない。ということで5巻完了。まあ、当たりはずれはあるわけだけれど、中高生にはぜひ5冊とも読んでみてほしい。
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