軍隊の文化人類学 の商品レビュー
自衛隊をめぐる議論が近年盛り上がりを見せている。集団的自衛権に関する昨今の議論もその一つである。自衛隊の活動のあり方が政策的視点から問い返されていると言えるだろう。そうした中、「軍隊」のあり方をやや異なる切り口から検討しているのが本書である。女性自衛官のキャリア形成や自衛隊の広報...
自衛隊をめぐる議論が近年盛り上がりを見せている。集団的自衛権に関する昨今の議論もその一つである。自衛隊の活動のあり方が政策的視点から問い返されていると言えるだろう。そうした中、「軍隊」のあり方をやや異なる切り口から検討しているのが本書である。女性自衛官のキャリア形成や自衛隊の広報における女性性の現れ方といったジェンダーの問題であったり、自衛官の家族に対する留守家族支援(災害派遣等に参加する自衛官の家族をいかに支援するか)の問題であったり、自衛隊とそれを取り巻く外部世界の相互関係に着目した論考が複数収録されている。また、自衛隊だけにとどまらず、戦前の帝国日本軍や在日米軍などを題材とした論考も本書の中には含まれている。これらの論考は、軍事力や政策などの視点から「軍隊」を捉えたものではない。「軍隊」を構成する人々も一人の生活者であるという平時のあり方に立ち返り、紋切り型の軍隊像からは捨象されしがちな実態に迫っていくものである。「軍隊」に関心のある方のみならず、昨今の議論に関心がある方にとっても示唆に富む一冊となるだろう。 (ラーニング・アドバイザー/国際 OYAMA) ▼筑波大学附属図書館の所蔵情報はこちら http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1671666
Posted by
- 1