整形美女 の商品レビュー
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なんやかんや言うてもわたしはお金があるのなら整形したいですわ。ほんとに。 阿部子は決して鼻持ちならない高慢な女ではない。すこやかなのである。文化祭の準備を手伝ってくれ、便箋数枚にわたる文字量の多い手紙を三度以上よこし(二年のあいだにであろうとも)、東京からP市までやって来、もうひとりの男との角度を六十度に維持したあとに走って自分のもとにもどり、自分とふたりだけで会いたがった異性は、自分のことを好いている。そう確信できることは特異なことではない。日常のさわがしさのなかで人はあらためて気づかないが、阿部子のように信じられる人間は男女の性差なく数多く存在する。圧倒的多数といってもよい。すこやかとはそういうことである。
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「ないものねだり」の変身願望を行動に移した2人の主人公。傷を負ったけれど「自分」に戻ろうとした阿部子は救われ、変身が定着して「自分」を見失った甲斐子は救われなかった。 「あなた」が幸せになりたいなら、「あなた」のまま幸せになろうとしなきゃ。 幸せな「他人」になろうとすると、「あなた」は不幸のまま放ったらかしになるよ。 ってことかな。 さて、ここからは余談。 「女性の美しさとは」をテーマにした作品ということで、「リアルシンデレラ」を思い出させます。どちらもとても面白いけれど、「リアル~」は「女性の美しさを審査する者」=他者の視点で美を考えているのに対し、この作品は「美しさを審査される者」=女性自身の視点で描いています。ベクトルが逆なんですね。 ベクトルという点で言うと、羨望と軽蔑、尊大と卑下といったような感情も、そのベクトルが交錯します。美しい甲斐子は美しくない顔に整形することによって望みの人生を手に入れ、美しくなかった阿部子は美しい顔に整形することによって人生を狂わせるという、これだけだと単純なベクトルのお話ですが、そうはならないところが、姫野カオルコの姫野カオルコたる所以ですね。 幸→不幸とか不美→美とか、そのベクトルが時間軸で入れ替わります。モノは全然違いますが、そういう意味では、有罪→無罪を描いた「12人の怒れる男」に対する、無罪→有罪→無罪を描いた三谷幸喜「12人の優しい日本人」を思い出しました。
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完璧な美女、「繭村甲斐子」はいわゆるブスに整形手術し、一方、高校の同級生可愛いけど美人ではない「望月阿部子」は甲斐子をモデルに美女に整形手術してもらう。 そして、手術後の二人の運命はどうなったか。 まず、 なんで美女なのにブスに変身するの、もったいない!とは下世話な話。 もっと...
完璧な美女、「繭村甲斐子」はいわゆるブスに整形手術し、一方、高校の同級生可愛いけど美人ではない「望月阿部子」は甲斐子をモデルに美女に整形手術してもらう。 そして、手術後の二人の運命はどうなったか。 まず、 なんで美女なのにブスに変身するの、もったいない!とは下世話な話。 もっと高尚な理由が。 『自分が醜いと信じている、どすぐろい強欲な未練を断ち切れないから、整形手術という手段を使えばこの状態から抜け出せるのではないか。ブスになったら健康であることを神に感謝できる。』 これでも訳、解らないよね。 甲斐子は精神も完璧に強かったのだ。個性も美人ということ。 他人は個性的な人に『変わっているね』というが、『個性的だとほめられたなどゆめゆめ思わぬがよい。自分の経験からはみ出した状況や物や人に対して嫌悪していて』仲間に入れぬ。という経験をして痛いほど嘆いていた甲斐子なのだ。 うーんわかる。しかしその後の運命は...。 はたまた、対称的な「望月阿部子」はどう...。 これから読む方に悪いのでやめる。 でも、美女ってほんとうに男性にもてないの?? 整形外科医、大曽根三ヶ衛(おおそねみかえ)のキャラクターがいい。 姫野カオルコさん初めて読んだが、お、面白い。シニカルなんだけれど、真実をついているね。示唆に富んでいるし。私が言うのもなんですが、沢山書物を読んでいらっしゃる方ですねぇ。 私は曽野綾子さんの「ギリシャの神々」を愛読しているが、その解説に 『一見役に立ちそうもないもの、どうでもいいように思えるものをどれだけ許容し、包含しているかが、その社会の体力、奥行きの深さを測る目安といえるのである』(田名部昭) とあり私もいろいろと興味をもっているので、こういう作風が好もしいのである。 姫野カオルコさんは一作ごとに文体が違うらしいから、他作品も読もうと思う。
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整形の話だけど、「顔としての美しさ」と、「それがどう他者から見られるか」を切り分けて描こうとしているのが伝わった。 そもそも美人とは何なのかという話。
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視点が面白い。 読後はもやもやが残る。答えがでる話じゃないから。。。 色々考えさせられる内容で、読んだ後に誰かと話したくなる1冊。
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二十歳の繭村甲斐子は、誰から見てもいわゆる美人。だが、彼女は名医・大曾根に懇願し、彼女の思う美人に(一般的には可愛くない)全身整形をする。一方、同郷の望月阿倍子も、上京を機に整形。甲斐子の卒業アルバムをみせて、そっくりにしてもらう。 甲斐子のだんだん狂気じみてくる心の中が恐ろしく...
二十歳の繭村甲斐子は、誰から見てもいわゆる美人。だが、彼女は名医・大曾根に懇願し、彼女の思う美人に(一般的には可愛くない)全身整形をする。一方、同郷の望月阿倍子も、上京を機に整形。甲斐子の卒業アルバムをみせて、そっくりにしてもらう。 甲斐子のだんだん狂気じみてくる心の中が恐ろしく、本当の美しさとは?と考えることになる。 このような小説は読んだことがなかった。 読後感よくはないが衝撃の作品。
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可愛いとは?ブスとは?ってめちゃくちゃ考えさせられた。 タイトルからは想像できない話だった。 顔面にコンプレックスを持つものとしてはそのまま生きててもいいのかなと考える事が出来たので読んでよかった。
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題名から想像したストーリーとは乖離があったが、読者が勝手に求めるお約束ストーリーではなく、美人とは何?ブスとは何なの!?と考えさせられる一冊。 登場人物は聖書の登場人物の名前から考えられているらしく、所々聖書の一節が引用されたりしている。 個性的ななかなか面白い表現をされてい...
題名から想像したストーリーとは乖離があったが、読者が勝手に求めるお約束ストーリーではなく、美人とは何?ブスとは何なの!?と考えさせられる一冊。 登場人物は聖書の登場人物の名前から考えられているらしく、所々聖書の一節が引用されたりしている。 個性的ななかなか面白い表現をされていたが、私には少し苦手だと感じてしまった。 文章の相性が少し合わなかったのかもしれない。 しかし話は終盤にかけて、なかなかに惹き付けられるものがあった。
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意味不明。最後まで 2人の名前を覚えられず。なんだろう。隣の芝生は青い的な?他人を羨むな的な?結果誰もシアワセにならない切ない話
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完璧な美を備えている、と(大曾根医師には)思われた甲斐子が「全身整形したい」と手術を望む。絶世の美女ではなく、大衆受けする程度の女(大曾根医師によると「ブス」)に。一方、整形なんか興味なかったのに「なんとなく」やってみた二重瞼手術に始まり(甲斐子のような「美人」に)全身整形した阿...
完璧な美を備えている、と(大曾根医師には)思われた甲斐子が「全身整形したい」と手術を望む。絶世の美女ではなく、大衆受けする程度の女(大曾根医師によると「ブス」)に。一方、整形なんか興味なかったのに「なんとなく」やってみた二重瞼手術に始まり(甲斐子のような「美人」に)全身整形した阿部子。結果、甲斐子は男受けし、阿部子は男から敬遠される。……「美人」って何ですか?という姫野先生の深い考察が物語となっているが、正直「豆つぶのような目」は美人…?と疑問を感じながらも面白く読んだ。与瀬くんが良い味出してた。
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