七夜物語(下) の商品レビュー
主人公は小学生の ファンタジーなのだが、読んでいるうちに、過去や現在の自分に置き換えて考えてしまっていた。 哲学的?宗教的?不思議な成長物語。 酒井駒子さんの絵が素敵すぎる。
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児童文学、に位置付けられるのだと思うけれど、十分に楽しめた。 一番良かったのは解説で、上中下三冊を読んでいるうちにふわりふわりと感じていたことと、これまでの読書体験の中で、あるいは自分の物語の読み方として、一部言葉にしていたこととが、より高い位置から見渡した視点で紡がれていた。1...
児童文学、に位置付けられるのだと思うけれど、十分に楽しめた。 一番良かったのは解説で、上中下三冊を読んでいるうちにふわりふわりと感じていたことと、これまでの読書体験の中で、あるいは自分の物語の読み方として、一部言葉にしていたこととが、より高い位置から見渡した視点で紡がれていた。10ページにも満たないこの解説が付いているだけで、印象が、多分星一つ分くらい増している。 本編は、特別何かが起こるわけでもなくて、特別難しい課題に迫られているわけでもなくて、どちらかと言えばのんびりと、物語が語られていて、自分の読み方で本編だけを読んでいたら、可もなく不可もなく、という印象で終わっていたと思う。 すべてを読み終わって、解説を読んで、その意味を理解して振り返ると、確かにすごくよく表現されていたことに、そこで初めて気付くことができた。 ほとんど解説に対する感想だけれど、この本編あっての解説でもあるわけで、1+1が2に収まりきっていないと、もしかすると初めて感じたかもしれない。 151213
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七つの夜は,旧約聖書の天地創造に通じているのかも知れない.メタ認知ができるようになった子供達には,世界に於ける自分の立ち位置と役割が与えられる.ファンタジィのような物語であって,その実子供の成長を丁寧に描いたノンフィクションのような印象も受ける.
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朝日新聞に連載されていた作品の文庫版。酒井駒子の挿絵が印象的。 童話のような語り口で話が進む。内容も、少年と少女の冒険ファンタジーといったところで、これまでの著者の作風とは少し異なる。常に、大事なことを優しい言葉で伝えてくれる作家だが、それが遺憾なく発揮されている。 (2015....
朝日新聞に連載されていた作品の文庫版。酒井駒子の挿絵が印象的。 童話のような語り口で話が進む。内容も、少年と少女の冒険ファンタジーといったところで、これまでの著者の作風とは少し異なる。常に、大事なことを優しい言葉で伝えてくれる作家だが、それが遺憾なく発揮されている。 (2015.7)
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小学4年生の女の子と男の子が、図書館で偶然見つけた本にいざなわれ、不思議な夜の世界を冒険するというお話です。児童文学の典型ともいえるストーリー仕立てですが、多くの児童文学がそうであるように、本書も人間の内面を抉るような味わい深さを持っています。 私たちはどこから来たのか?私たちは...
小学4年生の女の子と男の子が、図書館で偶然見つけた本にいざなわれ、不思議な夜の世界を冒険するというお話です。児童文学の典型ともいえるストーリー仕立てですが、多くの児童文学がそうであるように、本書も人間の内面を抉るような味わい深さを持っています。 私たちはどこから来たのか?私たちは何者か?私たちはどこへ行くのか?という、有史以来の大問題を孕みつつ、身近なことがらとして、生と死を繰り返すことで、世代が交代することの寂しさ、この世の儚さ、現実の危うさ、けっきょく誰もが真実を、あるいは愛を渇望していながら、一方でそんなものはどこにもないと気づいてしまっていることの虚しさ、侘しさ、哀しみ、・・・少女と少年の冒険を通して、そんなことが語られています。ふたりは幼いながらも、ちゃんと感じ、考えています。子供の頃に、そういったことを意識し、考えるということは、とても大事なことですネ。生涯天真爛漫に過ごせればそれに越したことはないでしょうが、あのピーター・パンでさえ、それなりにいろんな悩みを抱えていましたものネ。 あらゆるものは生じて滅し、すべてのものの姿も本質も常に流れ、変わるものであって、一瞬といえども同じ状態を保つことはできません。苦しみは生滅から生ずるのではなく、生滅する存在であるにもかかわらず、それを常住なものであると勘違いするから苦しくなるんです。けれど、そんなことは理屈ではわかっていても、そう簡単に割り切れるものじゃありません。大人だってこの物語の主人公である少女や少年のように、夜の世界を手探りで生きているんだもんネッ。世界は概念的で、人生はままならないものですネェ。 本書では川上さんらしいふわふわした艶っぽさは影をひそめていました。ちょっと残念な気がしないでもありませんが、読み始めたら止まらなくなる物語でしたぁ。 べそかきアルルカンの詩的日常 http://blog.goo.ne.jp/b-arlequin/ べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ” http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2
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川上弘美版「はてしない物語」とでもいうべき、オーソドックスなファンタジーでした。オーソドックスではあるけれど、行間に潜む妙な艶っぽさはやっぱり川上弘美らしくて、「ファンタジー」よりも「幻想」や「異世界」という言葉の方が似つかわしいようだ。川上弘美が冒険ファンタジーを書くとこうなる...
川上弘美版「はてしない物語」とでもいうべき、オーソドックスなファンタジーでした。オーソドックスではあるけれど、行間に潜む妙な艶っぽさはやっぱり川上弘美らしくて、「ファンタジー」よりも「幻想」や「異世界」という言葉の方が似つかわしいようだ。川上弘美が冒険ファンタジーを書くとこうなる、という感じだろうか。 エンデの描く冒険者は勇ましく、勇気を求めて戦う者だった。 対して川上弘美の描く冒険の主人公は優しくて、彼らがいちばんに求めていたのは「愛」だったのではないだろうか。これが最大の違いだろう。 その違いがはたして時代性なのか、作者の個人的な感性なのか、何に由来するのかはわからない。 なんにせよ、エンデと並んで児童ファンタジーの定番として読み継がれていってほしいなあ。と、個人的には思ったのでした。 あとはやっぱり、酒井駒子さんの挿画が素敵すぎる。世界観に合いすぎる。これだけで画集にしてほしいくらいだ。 それから、この開放的な終わり方も川上弘美らしい(というか日本文学らしい)ところだと思った。 2人はその後、どうなったのだろう。あのまま離れていってしまったのだろうか。それは哀しすぎるなあ。 できればもう一度2人には巡り会ってほしいのだけれど。 けれどもこれは別の物語、いつかまた、別のときに。
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六つ目の夜と七つ目の、夜の世界を見て聞いて過ごした二人の七夜が終わる。忘れてしまっても記憶の底には刻まれた七夜をぼんやりと思い出すこともある気がする。私にも忘れてしまった七夜があるかもしれない。 「みんな違ってみんないい」という金子みすゝ゛さんの詩を思い出しました。
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久しぶりに「本を読んだ」という気分にさせられた。毎日本は読んでるし読んできた本は面白かったのだけど、毎日読んでるとどうしても本への感動は薄れがちになってしまう。 子供の頃のような、全身をかけて入り込むように本を読む体験はなかなかできない。 それがこの「七夜物語」では体験出来たのだ...
久しぶりに「本を読んだ」という気分にさせられた。毎日本は読んでるし読んできた本は面白かったのだけど、毎日読んでるとどうしても本への感動は薄れがちになってしまう。 子供の頃のような、全身をかけて入り込むように本を読む体験はなかなかできない。 それがこの「七夜物語」では体験出来たのだ。現実と夜の世界を行き来きする子供たちに懐かしさと羨ましさを覚え一気に夢中になって読んでしまった。
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冒険の旅にでる。 どんな風に? ある時には洋服ダンスの奥に広い世界が広がっているだろうし、柱時計が真夜中の時間を告げる瞬間だったりする。 この物語では別な世界への冒険へ出かけていくには明確な方法が書かれてはいない。 さよと仄田君の心のあり方がカギとなる。 全部で七夜。冒険を続けて...
冒険の旅にでる。 どんな風に? ある時には洋服ダンスの奥に広い世界が広がっているだろうし、柱時計が真夜中の時間を告げる瞬間だったりする。 この物語では別な世界への冒険へ出かけていくには明確な方法が書かれてはいない。 さよと仄田君の心のあり方がカギとなる。 全部で七夜。冒険を続けていくうちに、大人になっていく二人。 二人の冒険は二人の成長のあかしでもあるのだ。 大人になることは、怖いことだけれど、決して怖れることでもないのだと思いながら本を閉じた。
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