杜甫の詩と生活 の商品レビュー

古川末喜(著者)

2015/07/14

杜甫の漢詩を口語文で分かり易く、一切の注も書かずに書き直し。また素の漢詩、読み下し文も併記されていることから実に読み易い。杜甫という実直そのもので清貧な生活を送っていたイメージが強いが、酒好き、船の旅行好き、妻・娘・弟たちへの愛情に満ちた表現、弟への細かい指示を詩にしたものなど、楽しい面が見えてくる。家族をここまで書いている詩人はこれまでになかったそうだ！50歳の時の「江亭」の四阿の暖かいひだまりの中で寛ぎ寝転んでいる様子の詩は何とも平安に満ちている。56歳の「昼夢」もまた。杜甫の重厚、雄渾な世界は口語文でも味を損ねていないのが、著者の凄いところ。著者が杜甫に惚れこんでいることがよく分る1冊。