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経済学の宇宙 の商品レビュー

4.4

12件のお客様レビュー

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2015/05/12
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 MITの院生1年目にメジャー・ジャーナルに論文を載せ、サムエルソンとソローの助手を務め、学者人生の「頂点」を極めていた岩井先生が、3年目にケインズ『一般理論』に覚醒、以降、一貫して反主流派(独創)の道を歩むことになる半生を綴った「私の履歴書」であり、「不均衡動学」「シュンペーター経済動学」「資本主義論」「貨幣論」「法人論」「言語・法・貨幣論」の生成過程を辿ることのできる「『岩井克人思想史』決定版」。 通説を論理的に突き詰め矛盾を見つけ、逆説的な結果を導き出す、という岩井流思考が堪能できる。 私は、本書でFiduciary Dutyの意味を初めて知った。 ピケティについては、『21世紀の資本』の中心命題自体に論理的破綻がある、としている。

Posted byブクログ

2015/05/10

久々にすごい本を読みました。出版社からの紹介文に「経済を考え抜いた格闘の軌跡」と書かれていますが、正にその通りです。岩井先生の著書はかなり読んでいますし、講演会にもできるだけ出席しているのですが、この本に全てのエッセンスがまとめられていて、断片的に頭に入っていたことが頭の中で全て...

久々にすごい本を読みました。出版社からの紹介文に「経済を考え抜いた格闘の軌跡」と書かれていますが、正にその通りです。岩井先生の著書はかなり読んでいますし、講演会にもできるだけ出席しているのですが、この本に全てのエッセンスがまとめられていて、断片的に頭に入っていたことが頭の中で全て繋がりました。しかも、岩井先生の自伝がそのまま内外の現代経済学の軌跡になっていて、そうした意味でも経済学の歴史が臨場感をもって理解できます。 岩井先生のすごいところは、今の主流になっている新古典派経済学をきっちりと批判し、更にそれを止揚する不均衡動学という大きな体系を築いていることです。主流派経済学への批判は、往々にして「反市場原理主義」「反グローバリズム」的な感情的なものになりがちですし、急に宗教や思想がかった議論に流れてしまいがちですが、そういったところは全くありません。逆に、ある意味でそうした感情的に反発したり、主流派に迎合したりという政治的なスタンスがないがために、自身で言われているように、「学問をする人間としては幸せでしたが、学者としては成功したと思っていない」ということになるのだと思います。もっと上手く立ち回っていたら、きっと日本人初のノーベル経済学賞を受賞していたのではないかと思います(これからでもまだ分かりませんが・・・)。エール大学助教授から東大助教授で日本に戻らざるを得なかった時のガッカリした感じなど、大変エピソードとして面白いのですが、きっと岩井先生以外の人がこんなことを書いたら、東大の関係者に激怒されるのだろうなと思います。この本の難点はひとつだけで、『経済学の宇宙』というタイトルです。何で『宇宙』なのかがサッパリ分かりませんし、もっと正面から、『岩井克人の経済学』とか『岩井克人の思想』とかで良かったのではないかと思います。

Posted byブクログ