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上田閑照集(第3巻) の商品レビュー

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2013/02/16

『西田幾多郎を読む』(岩波セミナーブックス)から西田哲学の「場所」に関する文章を再編集したものや、新たに書き下ろされた「「場所」再論―「現実の世界」へ」を収録している。 著者は本巻で、西田哲学における「自覚」から「場所」への展開の必然性を論じている。西田が「自覚」の思想を築く際...

『西田幾多郎を読む』(岩波セミナーブックス)から西田哲学の「場所」に関する文章を再編集したものや、新たに書き下ろされた「「場所」再論―「現実の世界」へ」を収録している。 著者は本巻で、西田哲学における「自覚」から「場所」への展開の必然性を論じている。西田が「自覚」の思想を築く際に手がかりとしたのが、J・ロイスがあげている、英国の中にいて英国の完全な地図を描くというたとえ話だった。 英国の中にいて英国の完全な地図を描くためには、地図の中に完全な地図を描き込まなければならず、その地図の中にもまた地図を描き込まなければならない。西田は、「自覚」が「無限に進み行く」ありようを、こうした例によって説明しようとしていた。 だが著者は、そこに見られるのは単に「自己が自己を写す」という構造ではなかったという。むしろそこで語られているのは、「私が英国に居て英国を写す」ことだというべきである。ここに著者は、西田がのちに「自己が自己に於て自己を映す」と語ることになる「場所的自覚」の構造が先取りされていたと論じている。「自覚」の立場では、自己の内にある意志の創造的働きによって、自己の内に自己を映す作用が無限に進行することが論じられていたにすぎない。だが「場所」の立場に至ると、そうした自覚的な働きをおこなう自己が、「於てある場所」と不可避的に重なり合っているところで自覚が捉えられるようになったのである。 「場所」という発想を確立した後、西田は「私と汝」、「現実の世界の論理的構造」などの論文を通して、「場所」の考えを「現実の世界」へと具体化することに力を注いだ。本巻では、そうした展開もおおまかに紹介されている。

Posted byブクログ