チベット仏教王伝 の商品レビュー
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14世紀のチベットの歴史物語『王統明鏡史(Rgyal rabs gsal ba'i me long)』より、チベット王国(吐蕃)建国の祖・ソンツェン・ガンポ王の事績部分を抄訳した書。後世「観音菩薩の化身」と讃えられた護法王の伝説を注記・解説と共に紹介する。 本書は、チベット仏教サキャ派の学僧ソナム・ギェルツェン(Bsod nams rgyal mtshan)によって著された歴史物語『王統明鏡史』の抄訳である。底本はSa skya pa Bsod nams rgyal mtshan. (1993). Rgyal rabs gsal ba'i me long. 民族出版社 であり、全三十三章のうち序章から十七章(ソンツェン・ガンポ王と妃たちの崩御)までを収録している。日本ではあまりなじみのないチベット(及びチベット仏教)の歴史物語ではあるが、詳細な脚注や解説が付されているので初学者でも比較的分かり易くなっている。 観音菩薩の化身であると共に初のチベット統一王朝(吐蕃王国)建国者であるソンツェン・ガンポ王は、鬼神ひしめく無明の地チベット教化のため数多くの伝説的事績を成し遂げる。大臣トンミによるチベット文字の発明、ネパール・中国(唐)両妃の請来、ラサ・トゥルナン寺並びにラモチェ寺の建立――。チベット古来の伝説や釈迦本生譚等をも交えて語られる本書の歴史は、伝統的なチベットの仏教的歴史観を反映するものである。 特にそれが色濃く表れているのが、度々語られる観音菩薩によるチベット教化の大誓願、そして中国への対抗意識である。ソンツェン・ガンポ王自身が観音菩薩の化身として語られていることからも分かるように、本書におけるチベットの歴史は一貫して観音菩薩による有雪国チベット教化という視点から語られている。今日のチベット仏教においても大きな位置を占めている観音信仰の強さを伺わせるといえよう。また、中国妃請来において中国皇帝の与える難題を次々に攻略するばかりか彼らを欺いてその権勢を削ぐ賢臣ガルの姿は、かつて大唐帝国と覇を競った吐蕃王国への懐古、また元朝支配を脱し再び統一政体樹立を成し遂げんとしていた本書執筆当時の時代的背景を反映するものと言えるかもしれない。
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ソンツェンガンポ我儘すぎやし、菩薩もいちいち振り回されすぎやし、最早何の為の仏教なんかわからん。一切が無であり空であるなら、寺も質素で本尊一体あれば十分やん。
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