パレスチナ人は苦しみ続ける の商品レビュー
パレスチナ問題を扱った書籍。イスラエルがパレスチナにしていることを「民族浄化」「アパルトヘイト」と表現する。著者は国連人権高等弁務官事務所パレスチナ事務所副所長であった。市民運動家がパレスチナ問題を告発した書籍を読んだことはあるが、国際公務員からも強烈なイスラエル批判がなされてい...
パレスチナ問題を扱った書籍。イスラエルがパレスチナにしていることを「民族浄化」「アパルトヘイト」と表現する。著者は国連人権高等弁務官事務所パレスチナ事務所副所長であった。市民運動家がパレスチナ問題を告発した書籍を読んだことはあるが、国際公務員からも強烈なイスラエル批判がなされている。 著者は自己を人権野郎と定義する。国連競争試験に合格後は国連犯罪防止機関で麻薬関係の条約課に携わった。依存性薬物は人格を損なわせ、人間を廃人にするもので、人権侵害の最たるものである。SDGs; Sustainable Development Goalsは目標3「すべての人に健康と福祉を」のターゲット3.5で「薬物乱用やアルコールの有害な摂取を含む、物質乱用の防止・治療を強化する」と薬物乱用を問題としている。薬物乱用の防止は人権野郎にとって重要な課題になる。 イスラエルによるパレスチナの抑圧はアメリカで警察官による黒人射殺と共通する(3頁)。2020年にミネソタ州ミネアポリスで警察官が黒人男性ジョージ・フロイドを締め付けて殺害したMurder of George Floydが起きた。この事件によって「Black Lives Matter」「Defund the police(警察解体)」の運動が起きた。締め付けられたフロイドの言葉「I Can't Breathe(息ができない)」は抗議デモのスローガンになった。これは日本でも報道されているが、似たようなことはアメリカで繰り返されていたことが理解できる。 本書はイスラエルやイスラエルを擁護するアメリカの支配層の問題を以下のように表現する。「社会全体が軍国化し、「セキュリティー」の一言さえ出せばどのような人権侵害も当局の横暴も許される。経済は軍需産業一本で、政治は国民の福祉のためでなく、事実上、仲間の金儲けの道具と化す。そしてそれを糾弾しようにも、「安全保障」の美名で作られた秘密保護法で守られた政府や、コネのある支配階層は好き放題」(8頁) これが問題であることは大賛成である。しかし、これを新自由主義とすることはどうだろうか。新自由主義は全体主義に対抗する思想として生まれたものである。国家よりも個人を重視する。「どのような人権侵害も当局の横暴も許される」体制は軍国主義や全体主義である。本書自身が「パレスチナの一番の特殊性は、それが植民地主義の状況下だということだ」と主張する(20頁)。ストレートに植民地主義、帝国主義と呼べばよいだろう。
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なかなか捉え難いパレスチナの実相を国連スタッフとしてエルサレムに駐在した経験を持つ著者が明かす。イスラエルによるアパルトヘイトや入植を始めとした無法行為、西岸やガザに関する実録と解説から始まる。国連やアメリカ政治、メディアについての分析が続き、終盤にここ最近の情勢変化と合わせて史...
なかなか捉え難いパレスチナの実相を国連スタッフとしてエルサレムに駐在した経験を持つ著者が明かす。イスラエルによるアパルトヘイトや入植を始めとした無法行為、西岸やガザに関する実録と解説から始まる。国連やアメリカ政治、メディアについての分析が続き、終盤にここ最近の情勢変化と合わせて史実を纏める構成。総じて読み易く為になる内容で、これまでのパレスチナに対する理解が大きく修正された。
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