あん の商品レビュー
樹木希林さん主演映画の原作ということで、先日読んだ『一切なりきり』にも載っていたこちらの小説を選書。 どら焼き店を営む青年のもとへ、働きたいとやってきた高齢の女性。彼女が作る餡は絶品で、一緒に働き始めたが… 無知による差別や偏見。ハンセン病について、正しい知識がないばかりに、必要...
樹木希林さん主演映画の原作ということで、先日読んだ『一切なりきり』にも載っていたこちらの小説を選書。 どら焼き店を営む青年のもとへ、働きたいとやってきた高齢の女性。彼女が作る餡は絶品で、一緒に働き始めたが… 無知による差別や偏見。ハンセン病について、正しい知識がないばかりに、必要以上に恐怖を感じてしまうのだよね。 罹患した後の壮絶な人生…家族も、持ち物も、自分の名前も、すべてを失って、それでも生きていかなくてはならなくて。しかも、それは、ごく最近まであった話だというからいたたまれない。 優しい気持ちになる物語でありながら、それだけではなく、生きることの意味についても考えさせられた。読めてよかった。
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本屋で表紙を見て、あん? 何の話?ってなった。セーラー服を着た女学生の手にはどら焼き。そして桜舞う季節。 どら焼きのあんなのか、少女の名前なのか。 読み始めてすぐにそのタイトルの由縁がわかり、主人公の冴えない中年男ともう一人の主人公徳江の出会いから物語が始まる。 この物語はフィク...
本屋で表紙を見て、あん? 何の話?ってなった。セーラー服を着た女学生の手にはどら焼き。そして桜舞う季節。 どら焼きのあんなのか、少女の名前なのか。 読み始めてすぐにそのタイトルの由縁がわかり、主人公の冴えない中年男ともう一人の主人公徳江の出会いから物語が始まる。 この物語はフィクションであるが、過去、それも近い過去にこんなことが日本で起こっていたのかと自分の無知を知るきっかけをくれた。ハンセン病という病。正に今、コロナという未知のものに怯えた恐怖と無知から生まれる差別が人を迫害へと追いやる構図は同じであった。時代は流れても人の心の弱さは変わらないなと痛感した。終盤の流れは哲学であり、私も徳江と会話をしていた。
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「極めること」を甘いあんを通して、深く感じられ味わえる。 しかし、現実や苦い過去は同じ位、味わうことができ胸を締め付けられた。 知らない世界、人との出会いが桜色で彩られ私の心を穏やかにしてくれた。
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一気に読んだ。 とても重くてつらい話を、どら焼きのあんを通してゆったりと表現されるこの本、とても素晴らしかったです。 ハンセン病のことはほとんど知らなかった。感染してしまったら隔離される怖い病気だというくらい。 そして隔離がなくなったということもなんとなくニュースで知っていたは...
一気に読んだ。 とても重くてつらい話を、どら焼きのあんを通してゆったりと表現されるこの本、とても素晴らしかったです。 ハンセン病のことはほとんど知らなかった。感染してしまったら隔離される怖い病気だというくらい。 そして隔離がなくなったということもなんとなくニュースで知っていたはずなのにリアルには知らなかった。隔離がなくなったのも2000年よりちょっと前のことで、そんな最近までこんなに差別されていたということも、知っていたはずだけど実感としてなかった。 さらに、隔離が終わっても、隔離されていた人たちの失われた人生は取り戻せないこと、まだまだ理解不足による差別や偏見を受けていること、これは全く認識できていなかった。 この本に出てくる人たちが暮らしているまちは西東京に実際にあるらしい。機会があったら訪ねてみたいと思う。 徳江さんが「なんのために生まれるのか、ではなく、世界が自分のために存在しているのだ」と言っていたのが非常に胸を打ちました。
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読書記録44. #あん 作中、主人公が訪れたハンセン病資料館を見学した部分 「苦難を生き抜いた人々の証言から、自分はなにかを与えてもらったと強く感じるのだ。だが、それと等しく、目を開こうが閉じようが消えてくれない目眩の種も植え付けられた」p158に着目 そのくだりで中でもとて...
読書記録44. #あん 作中、主人公が訪れたハンセン病資料館を見学した部分 「苦難を生き抜いた人々の証言から、自分はなにかを与えてもらったと強く感じるのだ。だが、それと等しく、目を開こうが閉じようが消えてくれない目眩の種も植え付けられた」p158に着目 そのくだりで中でもとても気になった 『舌読』する男性写真 病で視力も末端神経も奪われた男性が点字を舌で舐め一文字ずつ追って本を読む と書かれた場面が主人公と同じく心に残り調べたところ、自宅にもあった(積読だった)韓国慶尚北道出身の男性 金夏日氏の事のよう 今日からすぐに読み始める 聴覚障害についての作品を読み、ハンセン病患者についての本を読む事に関心が繋がってきた私の読書 読んだところで、では自分はいったい何ができるのか?どうすればよいのか? 考えてももどかしく、無力な自分に落ち込むこともあるが、この作品を通し、徳江さんの言葉を通して力をもらった その場面を以下に共有する 「私たちはこの世を観るために生まれてきた。この世はただそれだけを望んでいた。〜中略〜世の中には、生まれてたった2年ぐらいでその命を終えてしまう子供もいます。 そうするとそんな哀しみのなかで、その子が生まれた意味は何だったのだろうかと考えます。 今の私にはわかります。それはきっとその子なりの感じ方で空や風や言葉をとらえるためです。 その子が感じた世界は、そこに生まれる。 だから、その子にもちゃんと生まれてきた意味があったのです。 その人生を通じて空や風を感じたのですから」p237 読んで、知ること、そのもの自体が私の生きる意味としてとらえ、さらに知る人を広げていけたらと願いながら、読後のアウトプットに繋げて行きたい
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誰もが目を背けたくなるような歴史の絡んだストーリー。 主人公が作中で感じている重苦しく苦い気持ちに、共感「してしまう」自分がいやにもなったりした。 人の評価を他人から聞くと、案外見え方が変わってきたりするリアルさも印象的。 すいすいと読みやすく、それでも読後感の強い物語だった。
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どら焼き屋で働く雇われ店長のもとに、絶品のあんこを作るおばあちゃんがやってきて店は繁盛。しかしおばあちゃんの見た目から、おばあちゃんはとある病気なのではないかとの噂が広がり… 普通なら自分では選ばないジャンルの本だけど、義母の勧めで読む。感想は、夢中になって読むほどいい本だった...
どら焼き屋で働く雇われ店長のもとに、絶品のあんこを作るおばあちゃんがやってきて店は繁盛。しかしおばあちゃんの見た目から、おばあちゃんはとある病気なのではないかとの噂が広がり… 普通なら自分では選ばないジャンルの本だけど、義母の勧めで読む。感想は、夢中になって読むほどいい本だった。 ある過去をもつ雇われ店長と、ある過去をもつおばあちゃん。この二人がどら焼きを通して絆を深める。病気+絆って、一見使い古されたテーマだけど、この病気が差別の歴史をもつ病気ということもあり、自分は本当に差別意識はないのかと考えさせられた。あと店長もおばあちゃんも全てが完璧にハッピーエンドみたいな展開じゃないのも良かった。差別する奴らを見返す!的な展開にはならないけれど、心がほっこりする結末。みんな幸せになってほしいと思わされた。 ページをめくる手を止められないような、とても滑らかな文章も良かった。
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ドリアン助川?お笑いとか振付師とかかと・・・ちょこっと調べるといろんなお名前をお持ちのれっきとした大学教授なのですね。 そして、この表紙のかわいらしさとタイトルから青春小説かと思いきや、いきなりの ハンセン病。衝撃だった。 手紙。徳江さんから千太郎への、は、もちろん、千太郎の...
ドリアン助川?お笑いとか振付師とかかと・・・ちょこっと調べるといろんなお名前をお持ちのれっきとした大学教授なのですね。 そして、この表紙のかわいらしさとタイトルから青春小説かと思いきや、いきなりの ハンセン病。衝撃だった。 手紙。徳江さんから千太郎への、は、もちろん、千太郎の書くすなおな手紙に心を打たれた。 ちょっとかっこいい言葉をつかってやろう、とか、欲張って結局何も「伝え」られない手紙しか書けない自分と違う、すなおな手紙。 徳江が去り、結局どら春を辞めた仙太郎が枕を抱きしめて「どら焼きいかがですか~」と叫ぶところで涙がこぼれそうになった。 さらにワカナが療養所を再訪したときに持参した白いブラウス・・・ 映画になっていたことは読んでいる途中で知った。キャストは知らなかったが、 徳江には樹木希林しかいないだろう、千太郎は大泉洋がイメージにピッタリではないか、と勝手に想像していたが、千太郎は永瀬正敏であった。想像とは違ったけど、長瀬の抑えた演技もよかった。 ハンセン病のことはよくはわからない。長い間、本当に長い間人間の尊厳をかけて闘っていたひとたちがいて、今の世になっていろんなひとが彼らに許しを乞い、確か、天皇陛下も療養所を訪れたというニュースも見た気がする。 この小説を読んでわかった気になったというつもりはない。でも闘うひとたちの「声を聞いた」気がする。 『舌読』というのは初めて知ったな。ショックだった。
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映画は観てないのですが、徳江さんのセリフは樹木希林さんの声で読んでしまいます。 偏見は無知や恐怖から生まれるのかもしれません。 私も知らなかったら怖いと思うし、関わらない方が良いかもと思ってしまいます。 生きる意味とはと考える作品を、桜が咲く季節に読めて良かったです。
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