家政婦のニタ の商品レビュー
傷だらけで微笑む青年が表紙。丁度「痛い系」がとにかく読みたい、と言う時に見つけて、でも、余りにも露骨な表紙絵に、今読んでいる「痛い系」作品と比べてしまうだろうから読まずにおこう、と思っていた作品。 財閥の御曹司で、金さえ与えていれば愛情欠如な家庭の子供であっても文句を言う権利はな...
傷だらけで微笑む青年が表紙。丁度「痛い系」がとにかく読みたい、と言う時に見つけて、でも、余りにも露骨な表紙絵に、今読んでいる「痛い系」作品と比べてしまうだろうから読まずにおこう、と思っていた作品。 財閥の御曹司で、金さえ与えていれば愛情欠如な家庭の子供であっても文句を言う権利はない、と言う環境で育った自己中心男まっしぐらの大学生・恵。彼の元へ父親から送り込まれた5人目の家政婦(と言う名の監視役だと恵は斜に構え軽んじている)の新田潤。彼はいつも微笑みを浮かべ、恵が見下した態度を取ろうと同じ態度で接する。それが「気持ち悪い」と更に恵は反発する。むしゃくしゃしてた恵が「乱交パーティーして気持ち悦くなろう」と新田を巻きこもうとするが、彼は自分がゲイである事を言い、それが恵の怒りに火を注いで新田に暴行を加えてしまう。翌日、体中傷跡だらけなのにいつもと同じ様に家政婦の仕事をしにやって来る新田。 新田への暴力は彼氏が加えていたもので、その彼と、自分と、新田に対し、恵は全員が「人間のクズだな」と言い放つ。「アンタ他人の事ばっかで自分はどうでもいいんだな」…自分とは真逆のクズだな、と。 人に怒りをぶつける時と同様に、人に優しくする時にも責任は生じている。自分を犠牲にする、と言う一番手っ取り早い方法でしか優しく出来ない人は、その責任を全うしているとは言えないと私も思う。 人間不信の塊だった恵を、新田の行動が溶かして行った、と言う「類い」の作品である事は間違いなく、予定調和内なのだが、ひたすら優しい人間を単純に「善良」と言うくくりに入れなかった作者に賛同した。 金に目を付けて群がる人間の他に、恵には大学に渡辺と言う友達がいる。短髪に眼鏡をかけたお洒落坊主と言う感じで、恵にとっては唯一「普通」に触れられる相手である。金に物を言わせる彼にこんな友達がいる奇跡、あり得んだろう、と思ったら、渡辺は恵が好きな人間だった。作者もあとがきで書いているが、私も渡辺がとても気に入ってしまった。余計な茶々を入れるとしたら、恵は渡辺を選んだ方がいいよ、こいつ良い奴だよ、常識有り余ってるし、人の気持ち解るし…だけど、恋愛感情と言うやつは「トキメキ」で出来ているモノでもあるのだ、と言う事を考えた作品だった。 Amazonで評価が低いのは「予定調和内」である事と、恐らく「痛い」描写が少ない、加え「ありきたり」と捉えられるからだろうと思われる。確かに「痛さ」を期待して読むと「足りねぇ」と思う程度ではある、表紙のインパクトが印象付けられるだろうし。が、個人的に新田の様な人間を知っている為、良い人であれば何でも許される訳ではないと思っている私としては、その部分がきっちり描かれていたのでジャンルくくりで評価して読むのは損するよ、と言う作品であった。痛い系好みで表紙に釣られると「表紙負けしている!!なんだよ!!」ってなるんだろうなぁ、だから密林の評価低いんだろうな。痛さは物理的なものと心理的なものと性質とと言う具合に細分化されるんだよ。ニタのこの微笑みがもっと気持ち悪いものだろう、とか、痛みを感じない体質である、とか、そう言う事想像しないで読む方がいい。そう言うのはない、ないが、誰にでも共感して人の痛みや孤独を癒そうとする行動に出てしまうのは「痛みに目を瞑れないから」だろうと思うんだよね。
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これ、マガビーの付録の短編見ないと分かり辛いんじゃない? 最初に短編の方を読んであまりに救いようのない話で辛かったけど、本編でニタさんが幸せになってよかった~。 最後の甘々に救われた。
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クズのトライアングル(笑) どクズパートが長い分、反面教師からの成長が著しい。 唯一の良心、渡辺がいいポジションとってます! お前がいなかったらみんなどうしようもない(誉め言葉/笑)
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