コモン・グッドのための歴史教育 の商品レビュー
「歴史って何のために学ぶの?」これまで学校で歴史を習ってきて、そう思ったことはありませんか?本書は、その疑問のひとつの答えを示しています。 本書では、アメリカ、北アイルランド、ニュージーランド、ガーナなどの教室で行われている歴史の授業の調査から、それぞれの国に多様な歴史の学び方...
「歴史って何のために学ぶの?」これまで学校で歴史を習ってきて、そう思ったことはありませんか?本書は、その疑問のひとつの答えを示しています。 本書では、アメリカ、北アイルランド、ニュージーランド、ガーナなどの教室で行われている歴史の授業の調査から、それぞれの国に多様な歴史の学び方があり、歴史を学ぶ様々な理由があることを示しています。それら調査は、 歴史を学ぶことに対して私たちが「当然」と思っている認識が、実は「当然」ではないことを読者に教えてくれます。例えば、すべての国の子どもが自国の歴史を学ぶと思いがちですが、実は北アイルランドの子どもたちは、歴史の授業で自国の歴史は学びません。では一体、北アイルランドの子どもたちは歴史の授業で何を学んでいるのか。それは本書を読んで頂ければわかるかと思います。 このように各国の調査研究から、歴史の学び方・学ぶ理由には多様性があることがわかります。とは言え、歴史を教えていく上で「歴史には多様な学び方・学ぶ理由があり、どれもが優れている」というのでは悪しき相対主義に陥ってしまいます。そこで、本書では、歴史の多様な学び方・学ぶ理由を示すだけではなく、それが「コモン・グッド(公共善)」に寄与するか否かを、望ましい歴史教育としての判断基準として設けています。すなわち、子どもたちが社会に参加していくために、小学校から高校までの歴史の授業で何ができるのか、を様々な歴史の学び方から問い直したのが、本書の最大の特徴です。 歴史認識問題や国境・国土・領土問題が大きく取り上げられる現在において、歴史の教えられ方は益々重要になっています。そのような中で、私たちはどうしたらお互いに公正に、互いに満足する方法で生活することができるのか。そのことに、歴史を学ぶことがいかに貢献できるのか。それらを示したのが、本書です。歴史を学ぶことは、歴史家だけでなく、社会を構成する市民全員に求められます。「歴史を学ぶ意義」に関心がある方に、ぜひ読んで頂きたい一冊です。 (ラーニング・アドバイザー/教育 UEHARA) ▼筑波大学附属図書館の所蔵情報はこちら http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1658378
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