浅草の勘三郎 の商品レビュー
舞扇の老舗「荒井文扇堂」主人・荒井修氏が書いた、十八代目・中村勘三郎との交友録。 ちょうど図書館で本作を借りて読み始めたところ、荒井氏の訃報を知り、驚いた。 この貴重なエピソードの数々を世に残してくれたことは、本当に有り難いことだ。 本書を読むと、平成中村座の成功には、浅草の協力...
舞扇の老舗「荒井文扇堂」主人・荒井修氏が書いた、十八代目・中村勘三郎との交友録。 ちょうど図書館で本作を借りて読み始めたところ、荒井氏の訃報を知り、驚いた。 この貴重なエピソードの数々を世に残してくれたことは、本当に有り難いことだ。 本書を読むと、平成中村座の成功には、浅草の協力が欠かせなかったこと、浅草観光連盟副会長でもあったご主人が、中村屋と浅草との橋渡し役であったことが伺える。 努力家の天才・中村屋は、いつでも大きな夢を持っていて、なぜだか、その周りには彼の夢の実現に一緒に奔走してくれる、素晴らしい才能を持った仲間が集まってくる。この求心力は、どこから生まれるのかと考えると、やはり中村屋の人柄によるところが大きいのだと思う。 本書にはこんなエピソードが紹介されている。 文扇堂が雷門店をオープンした日、雪が降ってしまい、開店祝なのにお客が来ず、荒井氏が落ち込んでいたところに、中村屋からの電話。 「僕、歌を詠んだんだ」 雪の朝 扇の店の 新たなる 客も積もりて 末は広がる 雪が降ったっていいじゃない!というこの前向きな歌に、荒井氏は、 「それまでストーブでも暖まりきれなかった店のなかがほんわかした」 と書いている。 みんながハッピーになれる魔法のような力が、中村屋にはあった。
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とても読みやすい文章。 落語や歌舞伎をこよなく愛してる作者は、18代中村勘三郎の初舞台から観ている。 扇職人として歌舞伎役者たちと深い繋がりがあり、勘三郎とも深い信頼関係があったのだろう。平成中村座を立ち上げる原動力となり、ニューヨーク公演の成功に貢献、還暦の演目まで二人で決めて...
とても読みやすい文章。 落語や歌舞伎をこよなく愛してる作者は、18代中村勘三郎の初舞台から観ている。 扇職人として歌舞伎役者たちと深い繋がりがあり、勘三郎とも深い信頼関係があったのだろう。平成中村座を立ち上げる原動力となり、ニューヨーク公演の成功に貢献、還暦の演目まで二人で決めていたのに、その夢を果たせず見送ることになり、勘九郎、七之助の成長を見守り、七緒八の将来にまで夢を馳せるその気持ちが、とても良く伝わってきて、心地好い。 中村屋贔屓でなくても、浅草を愛し、江戸を守り、文化を継承していこうとする江戸っ子気質に触れられる一冊だと思う。
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