イザベルに の商品レビュー
名作「レクイエム」の姉妹作品。「レクイエム」での「私」に死者として過去を語るイザベル(実際に何を語ったかは書かれていない)とタデウシュが、この小説では自殺した失踪者と、罪の意識からその真相を知ろうと探索する人物(の魂)として再登場する。曼荼羅の外周から中心へと近づくように、多くの...
名作「レクイエム」の姉妹作品。「レクイエム」での「私」に死者として過去を語るイザベル(実際に何を語ったかは書かれていない)とタデウシュが、この小説では自殺した失踪者と、罪の意識からその真相を知ろうと探索する人物(の魂)として再登場する。曼荼羅の外周から中心へと近づくように、多くの証人に会うことで真相に接近していくタデウシュ。リスボンからマカオ、スイスからイタリアへ、旅を重ねたタデウシュの前についにイザベル本人(の魂)が現れる。クライマックスは生前の2人の最後の別れと二重写しになるような船の上のシーン。涙なしではとても読めない。
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[関連リンク] イザベルに −ある曼荼羅− - アブソリュート・エゴ・レビュー: http://blog.goo.ne.jp/ego_dance/e/0adc57043462a1aa8da21dbba02c8721
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何読んでるの?読んで聞かせて、と4才の息子に邪魔をされながら、細切れに読み通した。声に出して読もうとすると、セリフが誰のものかわからなくなることがあった。少し混乱しながらも、これぞタブッキと思った。
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初めて読んだタブッキが「供述によるとペレイラは」であったこともあり、作家の言葉のなかに常に体制に抗う芯の強さのようなものを読み取ろうとしてしまう。物語はまさに抵抗運動に命を懸けたものたちへのオマージュのようにして幕を開ける。しかし、徐々に探索の旅が進むにつれ、ある証人から別の証人...
初めて読んだタブッキが「供述によるとペレイラは」であったこともあり、作家の言葉のなかに常に体制に抗う芯の強さのようなものを読み取ろうとしてしまう。物語はまさに抵抗運動に命を懸けたものたちへのオマージュのようにして幕を開ける。しかし、徐々に探索の旅が進むにつれ、ある証人から別の証人へと繋がる道筋はそれほど確かなものではなくなり、時に時代を超越し空間を超越しながら繋がってゆく。まるでカルヴィーノの作品のようなしなやかさ。曼陀羅に準えた旅の意味は何かと、次第にタブッキの作品に対して勝手に抱いていた期待が削がれるのではないかとの不安が膨らむ。しかし双六の上がりのように中心の円に物語が辿り着く時、一瞬にして白が黒にひっくり返り、全てが無に帰するような展開を(それは半ば想像することが可能であったとはいえ)目の当たりにすると、言葉ではなく感覚として全てが府に落ちる。この探索の旅がなぞっていたものはウロボロスのようなものであったのか、と。 若い頃に誰かに聞いた。革命とは若さをエネルギーとして進むもの、と。それは革命が暴力的とも言える力そのものを頼りにすることを言い表しつつ、そのエネルギーが消費される一方のものであることも言い当てている。更に言えば、革命の宿命的な構図も言い表している。訴追する側もやがて訴追される側になるのだ、と。自らを白を代表するものと考え、それに反対するものを黒と思い定める。その構図は分かり易いが、過分に単純化されているとも言える。黒と思われるモノを排除した後に起きるのは、各々に異なる白さの中での過剰な白黒の峻別だ。そうなれば、容易に地は図となり、図は地となる。色即是空、空即是色。 タブッキが曼陀羅の構図に見たものは、円環、あるいは輪廻のようなものでも、ましてや解脱でもなく、自らの尾を喰らう蛇の循環、あるいは永遠に同じ探求を繰り返す無限地獄のようなものであったのか。これが、不寛容の跋扈する今の時代に、遺稿第一作として問われることに不思議な廻り合わせを感じずにはいられない。
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タブッキ「イザベルに」http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309206714/ … 読んだ、よかった。。女性の消息を知りたいという未練で成仏できない男が幽霊になって女性を探す旅をする話。女性が関わっていたらしい地下活動と2つの名前のせいで、情報...
タブッキ「イザベルに」http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309206714/ … 読んだ、よかった。。女性の消息を知りたいという未練で成仏できない男が幽霊になって女性を探す旅をする話。女性が関わっていたらしい地下活動と2つの名前のせいで、情報は断片的で不確かでなかなか実体に近づけない(つづく 手が届いたと思った女性が霧散したのは、男のほうが実体がない幽霊だからでは。だから完成したパッチワークを手に取ることはできず、バイオリンも旅と未練はもう終わりだよと告げる。49日経ったのかな。ファンタジーだけれど、自分が思う確実な事実が意外に曖昧なのは現実世界でも同じだ(おわり
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ポルトガルの独裁政権下で地下活動に関わり姿を消した女性イザベルをめぐる物語。リスボン、マカオ、スイスと舞台を移しつつ9人の証言者によって紡がれる謎の曼荼羅。
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