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丸山眞男と戦後思想 の商品レビュー

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2021/03/05

著者による「近代日本思想論」シリーズの第三巻で、丸山眞男の思想について考察をおこなっている本です。 著者は丸山の仕事を三つの時期に分け、第一期は荻生徂徠を中心に近世の思想に近代の萌芽を見いだそうとする試みがなされていた時期、第二期は同時代の政治について活発な批評活動をおこなうと...

著者による「近代日本思想論」シリーズの第三巻で、丸山眞男の思想について考察をおこなっている本です。 著者は丸山の仕事を三つの時期に分け、第一期は荻生徂徠を中心に近世の思想に近代の萌芽を見いだそうとする試みがなされていた時期、第二期は同時代の政治について活発な批評活動をおこなうとともにマルクス主義への厳しい批判をおこなった時期、第三期はいわゆる「古層」論が展開された時期とされています。 著者はマルクス主義に共感的な立場に立っており、丸山のマルクス主義批判についてある程度立ち入った検討をおこなっています。著者によると丸山は、政治における支配と服従をめぐる権力構造について分析する立場を脱して、多層的な権力の支配形態を分析する立場へと移っていったとされています。こうした丸山の政治批評についての理解は、いわば重層的決定論のような現代的な見方に通じるところがあり、個人的には興味深く感じましたが、著者自身はそうした丸山の立場の観念性を指摘し、「永久革命」としての「真正近代」を追求するものであるとして一定の評価をあたえつつも、批判をおこなっています。

Posted byブクログ