科学哲学への招待 の商品レビュー
科学のはじまりから現代まで、パラダイムの変遷を中心に纏められた完成度の高い入門書。 簡潔に淡々と科学の歴史を説明しながらも、没入感を感じさせる文章の上手さがある。 西洋のサイエンスと日本の科学の違いと違いが生まれた理由についての記述は興味深い。
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科学者≒哲学者、技術者≒職人というある種の身分差が欧州にはあるが、明治期以降に「ただ乗り」した日本においては「科学技術」という独自の単語を生み出す事により、両者の区別が曖昧である事が幸運でもあり、歪みでもあるとの事。結果、理学系より工学系が大学教育で強いのは日本独特らしい。 科学...
科学者≒哲学者、技術者≒職人というある種の身分差が欧州にはあるが、明治期以降に「ただ乗り」した日本においては「科学技術」という独自の単語を生み出す事により、両者の区別が曖昧である事が幸運でもあり、歪みでもあるとの事。結果、理学系より工学系が大学教育で強いのは日本独特らしい。 科学をテーマとして歴史、哲学、社会学の3つのアプローチをしていくわけだが、「科学とは何か?」という探求のみならず、この3つの学問的アプローチの違いを学べるという点においても有益である。
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うまくまとまった入門書です。アリストテレスの自然学かから科学革命を経て科学の制度化へと至る科学史。そして、論理実証主義やクワインのホーリズム、パラダイム論などの科学哲学。さらに、ソーカル事件、科学技術の倫理などの科学社会学。これまであれこれ読んで蓄えてきた知識について、頭の整理を...
うまくまとまった入門書です。アリストテレスの自然学かから科学革命を経て科学の制度化へと至る科学史。そして、論理実証主義やクワインのホーリズム、パラダイム論などの科学哲学。さらに、ソーカル事件、科学技術の倫理などの科学社会学。これまであれこれ読んで蓄えてきた知識について、頭の整理をするのに役に立ちました。(2015年7月20日読了)
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学者としての面目躍如な論考である。これまでの歴史の中で行われてきた学説を解説する手際は一流である。つまり、精彩を放つ学説のその有様を再現することにかけて、著者に知の閃きが十分に看取できる。一方で、学説史のみならず、現代社会の問題にも言及があるが、その点に関しては、マスコミが口にす...
学者としての面目躍如な論考である。これまでの歴史の中で行われてきた学説を解説する手際は一流である。つまり、精彩を放つ学説のその有様を再現することにかけて、著者に知の閃きが十分に看取できる。一方で、学説史のみならず、現代社会の問題にも言及があるが、その点に関しては、マスコミが口にするような、常識的な言説しかこの著者は描いておらず、創造性が発揮されていない。これでは社会に対して通り一遍な承認しか与えられず、突破口となる言説からは遠い。とはいえ、知の紹介に関しては私も興奮したし、面白い論考である。
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新書なのに科学史・科学哲学・科学社会学の三部構成で多角的に論じられている良質な入門書。放送大学の教科書がもとになっているだけあって、よくまとまっていて日本語も読みやすい。科学哲学の入門書はたくさんあるが科学史や科学社会学の入門書はあまりないので、その点でも貴重。
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2016年度昼間「科学哲学」前期後期。 科学哲学を本格的に学ぶのははじめてだったのだが、概観的であるうえに精度も高い印象のテクストで、講義でも自分ひとりでも、読めば読むほどに理解が深まっていくという非常によいテクストであった。 ウィトゲンシュタインの言葉を聞いたことがあるよ...
2016年度昼間「科学哲学」前期後期。 科学哲学を本格的に学ぶのははじめてだったのだが、概観的であるうえに精度も高い印象のテクストで、講義でも自分ひとりでも、読めば読むほどに理解が深まっていくという非常によいテクストであった。 ウィトゲンシュタインの言葉を聞いたことがあるような、というレベルだった自分が、記号論理学の革命性に深く感動するまでに至ったのは、この教科書とこの講義がすばらしかったおかげだと思う。 科学哲学の講義はとりあえず終わったが、この本は長く手もとに置いておきたい。とくに論理学はこれを足がかりにしてもっと学んでいきたい。
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放送大学のテキストとして刊行された『科学の哲学』に、福島原発が科学技術に対してどのような問いを投げかけているのかという問題を考察した補章を加えた本です。 全体は三部に分かれており、第一部では古代から近代に至るまでの科学史の概略が説明されています。第二部では、ウィーン学団による論...
放送大学のテキストとして刊行された『科学の哲学』に、福島原発が科学技術に対してどのような問いを投げかけているのかという問題を考察した補章を加えた本です。 全体は三部に分かれており、第一部では古代から近代に至るまでの科学史の概略が説明されています。第二部では、ウィーン学団による論理実証主義の運動から、ポパーの批判的合理主義を経て、クーンのパラダイム論がもたらしたインパクトまでの科学哲学の経緯を簡潔に説明しています。第三部では、科学知識の社会学の現代的展開から、いわゆる「ソーカル事件」によって広く知られるようになったサイエンス・ウォーズなどのテーマがとりあげられています。 著者は、村上陽一郎と並んで、クーンなどに代表される「新科学哲学」の日本における紹介者として知られており、本書でもひかえめながら自然主義的な科学哲学とは異なる潮流に対する共感が表明されています。そういう点ではやや偏りがあるともいえるので、内井惣七や戸田山和久、中山康雄らの入門書で、本書とは異なる科学哲学上の立場について補う必要があるかもしれません。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
考えてみれば、いまわたしたちのいる21世紀はとてもよい時代なのかもしれない。経済、科学、宗教、そういうものの破綻に嫌でも向きあわざるをえぬ時代。正常とされていたものの逸脱を、逸脱と見るのか、あるいは正常とされていたものの側への懐疑とするのか。そのように知性が試される時代。書店には狭義の「反知性主義」を問う本が並ぶが、もう一歩進んで汎知性を考えてみるときであるのかもしれない。 知らずに購読したのだが、放送大学のテキストに加筆して文庫化したもの。わたしが在学した時期にこの講座はなかった。モッタイナイことであった。
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