マーシャル諸島 終わりなき核被害を生きる の商品レビュー
著者の14年にわたる現地フィールドワークにもとづく書籍。冷戦初期に67回もの核実験が行われたマーシャル諸島のビキニ環礁、エニウェトク環礁の人々、ブラボー実験での核被害で難民化を余儀なくされたロンゲラップ環礁の住民たちに対する丹念な聞き取りと、合州国での公文書調査とを組み合わせる...
著者の14年にわたる現地フィールドワークにもとづく書籍。冷戦初期に67回もの核実験が行われたマーシャル諸島のビキニ環礁、エニウェトク環礁の人々、ブラボー実験での核被害で難民化を余儀なくされたロンゲラップ環礁の住民たちに対する丹念な聞き取りと、合州国での公文書調査とを組み合わせることで、くり返された核実験が人々の何を奪ったかを顕在化した健康被害という観点にとどまらない範囲でたどり直し、明らかにしていく。 著者がくり返し問題化しているように、マーシャル諸島での生存者(サバイバー)たちの経験は明らかに東京電力福島第一原発事故の近隣住民たちが強いられた生の先蹤と言える。合州国が住民の核被害(とその可能性)を了知しつつ、恣意的な線引きを通して被害の範囲を小さく小さく見せようとしていたこと、「見舞金」を支払う形で二度と補償をしない「最終的解決」方式を持ちだしていたことなど、産業公害に対する日本政府の過去の行き方や「戦後補償」問題への対応とも接続する問題が提起されている。 個人的に重要と思ったのは、1970年代以降のマーシャル諸島住民たちが、広島や長崎の経験や知見を積極的に参照しようと企て、日本の市民団体側もそれに呼応していたという部分。マーシャル諸島住民たちの抵抗は、「唯一の被爆国」というナショナリズムに囚われていた日本の反核運動のあり方を変えていく契機ともなったのだ。著者が提唱する「グローバルヒバクシャ」という概念の着想も、こうした活動の延長線上にある。 人間にとっての生の基盤となる環境を「生命維持系」というサブシステンスとして捉え、開発主義とそれがもたらす被害の双方を批判する視点など、戦後日本の平和学の議論の水準について、ほとんどフォローできていなかった自分を反省する。勉強しなければ。
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レポート作成の情報収集の一環で読んだ。 正直戦後の核被害は第五福竜丸事件しか知らず、マーシャル諸島の核被害についてはほとんど、いや全く知らなかったため勉強になった。 特にアメリカは核実験の被害の大きさを知っていたにも関わらず住民に伝えなかったこと、被害を認めなかったことに驚いた。今現在でも先住民差別、有色人種差別が根底にあることを改めて感じた
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【琉大OPACリンク】 https://opac.lib.u-ryukyu.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB1815367X
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