辺境の誇り の商品レビュー
【由来】 ・図書館の新書アラート 【期待したもの】 ・ ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。 【要約】 ・ 【ノート】 ・ニーモシネ 【目次】
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うかつだったよ。表紙のアメリカ先住民の写真とタイトルを見て、いわゆる ジャケ買いした本なんだ。だから、サブタイトルに入っている「日本人」と いうのはアイヌの人とかサンカの人だと思っていた。 でも、違った。本書が指す「日本人」は福島第一原発事故の被災者で あり、反捕鯨団体...
うかつだったよ。表紙のアメリカ先住民の写真とタイトルを見て、いわゆる ジャケ買いした本なんだ。だから、サブタイトルに入っている「日本人」と いうのはアイヌの人とかサンカの人だと思っていた。 でも、違った。本書が指す「日本人」は福島第一原発事故の被災者で あり、反捕鯨団体の標的にされたイルカ漁の和歌山県太地町の人々 だったり、被差別部落出身者だったりなんだよな。 なんでこの日本の人々がアメリカ先住民と並列で語られるのか分からない。 分からないから本書を読んでいると無理ばかりが目に付く。 原発事故被災者に対しては「故郷を奪われた」という括り。和歌山県太地 町の人たちは「反捕鯨」と「白人的価値観」とう括り。被差別部落出身者に 至っては「差別」という括り。 著者はアメリカ先住民の研究者なのだから、アメリカ先住民に日本人を 絡めて書くなんてことをさせなきゃよかったのにと思う。これは著者だけ の責任ではなく「アメリカと日本の辺境を繋げる本を書いて畝いい」と いう編集部の企画自体がいけなかったんじゃないかな。 だから全体にまとまりがない。日本人の話の中に唐突にアメリカ先住民 の話が挟まれる。それも彼らが自発的に日本人を語るのではなく、著者 の方から「こうこう、こういう日本人に対してどう思うか?」という質問を 投げているんだよな。 アメリカ先住民にしろ、原発被災者にしろ、太地町の人々にしろ、被差別 部落出身者にしろ、個々で十分に作品が書けるんだけどね。 「部落にとってのコロンブスは、天皇制だ。部落差別の歴史の方が、 先住民差別より長い」 とある場所でアメリカ先住民に関する話をした著者に対して、被差別部落 出身者が発したコメントなのだが、これはどう受け止めればいんだろうか。 著者は「勉強し直せ」と言われている気分だと書いているのだが、受け取り 方によっては「自分たちの方が長い差別の歴史に晒されているんだ」と いう主張のようになってしまうのではないか。 歴史が長いからどうなんだ?と思ってしまったんだけど、私は。自分たち の方が虐げられているってことなのかなぁ。この一文が読み手にどう 解釈されるか、著者は配慮しなかったのかな。 残念でならない。それぞれに興味深いテーマであるのだが、鍋料理の ようになんでもかんでも盛り込んで、結局はぐずぐずになっている。 男性の書き手にしては珍しく感傷的な表現が多くて、読んでいて疲れ ました。 アメリカ先住民と同じ土俵に乗せるのなら、やっぱりアイヌの人たちでは なかったのかなぁ。
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福島県民に大津波が押し寄せて来たように、アメリカ先住民にも白人という大波が押し寄せていた。 福島県民同様、原発に影響を受けているアメリカ先住民もいる。 白人至上主義という時代遅れの考えが未だに残っているのは周知の事実だが、信じられない! 同化政策なんていうのは受け入れるよりも変え...
福島県民に大津波が押し寄せて来たように、アメリカ先住民にも白人という大波が押し寄せていた。 福島県民同様、原発に影響を受けているアメリカ先住民もいる。 白人至上主義という時代遅れの考えが未だに残っているのは周知の事実だが、信じられない! 同化政策なんていうのは受け入れるよりも変えてしまったほうが楽だと考えた怠け者の考え! 「先祖から受け継いだのではなく、子孫から借りている」という言葉は重い! 国は国民に見放されないようにしないと大変なことになると理解しておくべき!
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表紙は、自らのルーツを誇る思いが伝わってくるアメリカ先住民の写真である。この本を手に取ったのは、アメリカ先住民の現状、現在の思いなどについて学びたかったからだったのだが、私の期待はいい意味で裏切られた。著者はアメリカ先住民の専門家だが、本書に登場するのはアメリカ先住民だけではな...
表紙は、自らのルーツを誇る思いが伝わってくるアメリカ先住民の写真である。この本を手に取ったのは、アメリカ先住民の現状、現在の思いなどについて学びたかったからだったのだが、私の期待はいい意味で裏切られた。著者はアメリカ先住民の専門家だが、本書に登場するのはアメリカ先住民だけではない。主眼はむしろ、今、日本で、同じように巨大な力によって権利を剥奪され、「辺境」に追いやられている人々の声、思いを伝えることにある。 「辺境」に暮らす人々はおそらく、2つの意味で「辺境」にいる。自分が本来生きる土地から遠く離れた場所で暮らさなければいけないという地理的な意味、そして、人々の意識に昇らず、心の片隅にしか存在しないという心理的な意味においてである。著者が接していくのは、原発の爆発、津波によって故郷を追われている被災者、アカデミー賞をとった映画「ザ・コーブ」によって、イルカを殺す悪党として一方的に断罪された和歌山県太地町の漁師などである。 彼ら、彼女らは確かに、途轍もない苦難を強いられているが、本のタイトルにあるように、決して誇りを失ってはいない。例えば「南三陸ホテル観洋」の女将阿部憲子氏。人がいなくなり、町そのものがなくなることをくい止めようと、通常宿泊料金の半分にもならない政府からの補助金だけで600人の被災者を受け入れ、従業員、宿泊客、避難民を守るために奮闘し、また、震災を風化させないため、語り部つきのバスツアーも提供している。 「人のお世話をするのはそういうことです」 名字が同じ響きを持ちながら、弱者を平気で切り捨てていくどこかの国の冷酷な総理大臣と比べて、何と気高いことか。 和歌山県太地町には移民として海を渡り、アメリカを含む海外で数年を過ごした後、再び町へ帰ってきている人々が、現在もいる。太地町は「アメリカ村」と呼ばれていたことすらあるとのことだ。イルカ漁に反対する活動家はときに、町の人の権利を平気で侵害する行動を取るが、アメリカ帰りの人々は、活動家が英語で浴びせる大変侮蔑的な言葉を、実は理解している。そうした横暴に対しての、ある漁師の言葉を引用しておく。 「わたしたちは、漁師だから、魚を獲るのが先決です」 この本で覚えた言葉が2つある。一つはechocide(エコサイド)。genocide(大虐殺」)、homicide(警察の殺人課)、insecticide(殺虫剤)、suicide(自殺)などに見られるように、「-cide」とう語尾は「殺す」ことを意味する。生まれ育った土地、家は単なる場所ではなく、遥か昔から、いくつもの世代を超えて手渡され、そこに生きる者と一体化している。原発からの利潤にしがみつく見下げ果てた人々は、放射能の影響が晩発性であるのをいいことに、これだけの不幸を撒き散らしながら原発事故で死んだ人はいないと嘯くが、生きることの意味を矮小化している、或いは、そもそも理解していない。 そしてもうひとつは White Man Syndrome(白人男性症候群)。自分の知識が常に他人よりも圧倒的にすぐれていると確信し、人の話をきけなくなる病とのことだ。バージニア大学で教鞭を執るデイビッド エドモンズ氏によれば、「サ・コーヴ」はこの病の典型的な産物である。私は、白人などではない日本人にもこの病を患っている人がたくさんいるような気がするが、それは、残念ながら日本の英語教育にも大きな責任があると思う。 本書は「アメリカと日本の辺境をつなげる本を書いてほしい」という依頼で執筆したとのことだが、その目的は十分達せられている。
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アメリカ先住民研究家の著者による、アメリカ先住民に共通する日本の「辺境」に生きる人達の共通点、など。 まさか、この表紙で、太地町のイルカ漁の話が出てくるとは思うまい。 白人のエコサイドで生きる場所を収奪されてきた。土地というものが如何に大事なのか。アメリカ先住民の話。原発...
アメリカ先住民研究家の著者による、アメリカ先住民に共通する日本の「辺境」に生きる人達の共通点、など。 まさか、この表紙で、太地町のイルカ漁の話が出てくるとは思うまい。 白人のエコサイドで生きる場所を収奪されてきた。土地というものが如何に大事なのか。アメリカ先住民の話。原発事故で生きる場所を追われた福島近隣の人たち。イルカ漁について攻撃を受けている和歌山県太地町。 アメリカは権力と正義による暴力的収奪の先輩格であり、日本もそのようになってしまっている、けれど辺境に生き、それにもめげず頑張っているよ!…という人たちが紹介されている。場面は頻繁に日米を往復する。そのせいか、どうも話が一本につながらない。 巨大な「権力」と暴力的な「正義」が辺境の敵、のようだけど、その塩梅がどうもひといろでないような。もうちょっと砕けていうと、原子力開発と太地町の話はなかなかつながらないなあ、と。 もちろん太地町も、いま反捕鯨テロリストに狙われているというだけではなくて、歴史的にアメリカとの関わりもある。知らなかったことがたくさんあった。 だが、辺境は、権力や正義にどう立ち向かえばいいのか。アメリカは建国以来変わらぬ侵略者スピリッツを持ち、日本にはそれが過度の中央集権として感染っているようだ。 抗う方法がズバッと示されているわけではない。発信し続けること、とはいうが、いつ飲み込まれてしまうかわからない。まったくもってすっきりしない。
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