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芸術と宗教 の商品レビュー

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2016/11/20

200ページ弱で、文字数も多くない本だが、読み応えと示唆がたっぷりあった。はじめに本書執筆の狙いが書かれている。 「本書の主題は、このように宗教にからんで世界の危機的な状況があらわとなり、宗教自体の意味がきびしく問われざるを得なくなった現代を意識しつつ、ひとつの方法として、芸術...

200ページ弱で、文字数も多くない本だが、読み応えと示唆がたっぷりあった。はじめに本書執筆の狙いが書かれている。 「本書の主題は、このように宗教にからんで世界の危機的な状況があらわとなり、宗教自体の意味がきびしく問われざるを得なくなった現代を意識しつつ、ひとつの方法として、芸術との関係においてそれを見直してみるということである。あるいはむしろ逆に、宗教と関連させながら芸術の役割はなにか、その独自な課題はいったい何なのかを考えることである」 非常にわかりやすく書かれていたのだが、自分の頭の問題もありまとめることがまだできない。暴力的に書けば、かつての西洋にあったように宗教の場面を描き出すツールでもなければ、日本でそうであったように日常の装飾として愛でるツールでもなく、宗教があろうがなかろうが人間が直面する不条理に、たどり着けない答えに対して「目覚めていること」が芸術なのであるという。つまり「批評精神を忘れず現実を曇りない眼で認識する役割、そして現実を越え出てその先にある世界を模索する役割」が求められているというのだ。 しかしその役割への要請は執筆の時点で相当脅かされている。本書の発行は20年前。まだインターネット興隆以前の執筆だ。だが既に消費に芸術がからめとられていることを示唆している。消費のスピードはいっそう加速し、宗教は魂の救済である以上に現世利益への解説書であることが亢進している。芸術はエンターテインメントであるか、トリビアであるか、さもなくばデモのプラカードのごとく主張であるような状況が進んでいる。

Posted byブクログ

2015/08/03

私は何を知ることができるか? 私は何をなすべきか? 人間には一体何が希望できるか? 人間とは何か? このような基本的問いを抱えて芸術はそれぞれ探求を続けている。 答えのないような永遠の問いに対して答えようと努める、しかし答えのない問いとは何か? 究極の答えのない問いーエリエリレ...

私は何を知ることができるか? 私は何をなすべきか? 人間には一体何が希望できるか? 人間とは何か? このような基本的問いを抱えて芸術はそれぞれ探求を続けている。 答えのないような永遠の問いに対して答えようと努める、しかし答えのない問いとは何か? 究極の答えのない問いーエリエリレマサバクタニ(神よ神よなぜ私をお見捨てになったのですか?) 趣味と芸術の間ーーー いきの構造、フランス語ではコケット、シック、ラフィネが近いが似て非なるもの。九鬼周造 「いき」の第一の徴表は異性に対する「媚態」 「いき」は媚態でありながらなお異性に対して一種の反抗を示す強みを持った意識 芸者の世界 いきー媚態、意気地、諦め 趣味の理論ー色と味については議論するべからず(ラテン語のことわざ) 色目プラス目が過去の潤いを想起させるだけの一種の光沢を帯び、目はかろらかな諦めとした凛乎とした張り(凛々しい)とを無言のうちに有力に語っていなければならぬ。 「いき」は武士道の理想主義と仏教の非現実性とに対して不離の内的関係にたっている。運命によって諦めを得た媚態が意気地の自由に生きるのが「いき」である。 ニヒリズムのあとの超越みたいだ。 ヨーロッパの高級娼婦が差別対象であるのに日本の芸者の理想は倫理的であると同時に美的ないきと呼ばれるもので逸楽と気品の調和した統一である。 死が生を殺すものではない。死が生を本当の意味で生かしているのである。 自分の死を重視しないことは他者の死を重視しないことを意味する? なんかちょっとイデオロギー的偏りが見えるけど、いきの構造は気になった。

Posted byブクログ