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古民家で戯れて の商品レビュー

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スローライフに込めた理想に反して訪れた淫靡な現実

官能小説としてシンプルかつストレートに「何ともいやらしい作品」と評したい。しかも、大体において蔑ろにされがちな妻が一番いやらしくて出番も多いという珍しいストーリーを紡いだ結果である。 田舎のスローライフを夢見て引っ越した初老(52歳)の主人公が、お嬢様育ちの後妻(38歳)に...

官能小説としてシンプルかつストレートに「何ともいやらしい作品」と評したい。しかも、大体において蔑ろにされがちな妻が一番いやらしくて出番も多いという珍しいストーリーを紡いだ結果である。 田舎のスローライフを夢見て引っ越した初老(52歳)の主人公が、お嬢様育ちの後妻(38歳)に振り回されながら地元の娘(22歳)と出会ったり、後妻の妹(33歳)がやって来たりする賑やかしさに翻弄され、竹細工や畑仕事などに取り組んで質素ながらも清らかな生活を送ろうとすればするほど何故か都会よりも淫らで淀んだ生活になっていく皮肉に加え、魔が差した結果ながら、それを招いた理由は自分自身にもあるところに何とも言えない滑稽さも感じた作品である。 しかしながら、やはり混乱(?)のきっかけをつくった悪女は後妻の【冴子】と言わねばなるまい。軽い気持ちでついてきた田舎暮らしに合わず、元より自己中で性的にも強欲なためにイマイチ元気のない主人公のムスコの代わりを早々に見つけ出す始末。実は全六章のうち前半3章が冴子の一人舞台であり、ねっとりした夫婦の営みを白昼から見せたかと思えば地元の武骨な男を挑発し始め、思わせ振りな営みを風呂場で見せつけた後は納屋に連れ込んで夫の居ぬ間に昼下りの情事へと耽るありさま。しかも後半では夫の竹細工工房にトラブルを招き、そこでも若い男と関係を持つというどうにもけしからん妻なのだが、それが欲求不満の捌け口だったとはいえ、じんわり滲む夫への嫉妬という真の背景を見れば憎めない一面もあったりする。そんな想いをはっきりと表に出さないところがプライドの高い熟女らしくもあり、それでいて最後に諦念含みで発露した、思いも寄らない言動で夫婦の決定的な亀裂を回避する離れ業をやってのけるところに本作のメインヒロインは妻であることをまざまざと見せつけた次第。感度の良さや貪婪に求める積極さで官能的にも妖艶な魅力を放つ冴子である。 そして、そんな納屋の情事を覗き見てしまうのは霧原作品のお約束ながら、それを竹細工の師匠でもある地元の娘【野枝】が一緒に目撃してしまうところが展開の肝である。回春ヒロインの王道のごとく主人公の求めには極めて従順な野枝とは冴子への当てつけもあって年の差の恋に落ちる主人公。この迷走が話を面白くしつつ、過去に経緯があって若いのに実は熟れている野枝の良好な感応が淫猥度を高めている。 また、工房の危機を救いにやって来た冴子の妹【佳菜子】はIT系のデキる女なのだが、主人公と野枝の秘密を知って、それをネタに義兄とのアバンチュールを楽しむ淫らさがあり、それでいて地元の青年とはイイ仲になって明るい未来をも築こうとしているのは、あの姉してこの妹とも言えそうな反面、最も都会的な人物が田舎に最もフィットしているような好対照の面白さも見られた。 「そうキタか」という結末へと導きつつ、何事も理想通りにはいかないことをスローライフと淫らな関係で描き出しながら、当初から野枝に潜む何かに気づいていたかの素振りを見せ、行く末にまで主導権を握ろうとするオンナ達に「あな恐ろしや」というしたたかささえも見たような作品だった。

DSK