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ヒーローを待っていても世界は変わらない の商品レビュー

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8件のお客様レビュー

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2021/05/01

本書は、「日本では、主権者であるはずの国民が主権者として振る舞っていない」という問題≒国民の政治への無関心を、政治不信を理由に無関心を正当化する一部の国民への批判や、無関心が故に生まれるヒーロー待望論の解説を交えつつ論じ、積極的な政治参加を促す啓蒙的な作品。 しかし、議論が基本...

本書は、「日本では、主権者であるはずの国民が主権者として振る舞っていない」という問題≒国民の政治への無関心を、政治不信を理由に無関心を正当化する一部の国民への批判や、無関心が故に生まれるヒーロー待望論の解説を交えつつ論じ、積極的な政治参加を促す啓蒙的な作品。 しかし、議論が基本的な国内における要因のみを考慮して展開されている点(例えば、著者は日本国民の政治離れの一因を議会制民主主義の特徴である合意形成までの議論の煩雑さに求めているが、同じく議会制民主主義を採用している国でも日本より政治への関心が遥かに高い国はあるのでは?と疑問に感じた)や、あくまで著者の貧困支援という経験に基づいた視点に立っているため提言(国民が議論できるプラットフォームの開設など)の実現可能性に疑問が残る点など、一般論として論じるには不十分だと感じた。 他方、ヒーロー待望論についての考察は興味深かった。作中ではヒーロー=切込隊長の資質として、①悪=既得権益を名指しする力、カリスマ性、②反対意見を無視する大胆さ、③即断即決力の三点を挙げつつ、その具体例として小泉元総理や橋本元大阪府知事を挙げていたが、2021年現在においては、河野行政改革担当大臣が上記の資質の全てにぴたりと当てはまっていると思われる。 そして、著者がヒーロー待望論の危険性として警鐘を鳴らす、ヒーローが何が既得権かを断定してしまうため、一度既得権の烙印を押されてしまったら議論が行われずに悪者扱いされてしまう可能性がある点についても、押印廃止の一件で問題になったとおりだと感じた。

Posted byブクログ

2018/08/31

関係調整のコストを担う存在が必要。 ヒーローを求める集団の心理を想像すること。 現実的で、地に足の着いた支援を重ねてこられた方の言葉だと思いながら読みました。

Posted byブクログ

2018/06/04
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

「みんなにいい顔はできない。現実は厳しいんだ」と言われますが、もしそれが虚構(フィクション)を現実だと思いこんで、現実を見ていないのだとしたら、それは現実に裏切られる他ありません。現実は複雑につながり合っており、弱く見える者を排除していく社会は不活性化し、停滞します。(p.44) 「壊す時には、壊す前にその建物がなぜ建てられたかを考えてみよ」という格言がヨーロッパにあるそうですが、それを思い出します。(p.65)  誰でも、支えられるよりは、支える側に回りたい。実際そのほうが、人はより大きな力を発揮します。では、その人が「自分は支え手だ」と実感できるような形でその人を支えることはできないのでしょうか。それが私たちの力量です。  面倒くさい話です。人と人が出会う場、関係のないところに関係をつくる場、人と人の関係を結び直す場づくりというのは、面倒くさいものです。その面倒くささは、民主主義の面倒くささに通じます。(p.130) 「決められる」とか「決められない」とかではなく、「自分たちで決める」のが常識になります。(p.160)  結局、必要なことは、他者の気持ちをくみ取る想像力と(それは自分を省みる力がないとできません)、それを言葉にしたり形にしたりする創造的な実践力です。他人を思いやる気持ちと、それに言葉や形で応える力。人としてもっとも基本的な力が、人間の人間的領域として残るのだと思います。(p.173) 聞き入れなかった政府が悪いからだ、で済ましてしまうと、自分たちの意見をより政治的・社会的力関係総体に浸透させるために不足しているものは何か、どうして自分たちの意見は十分に広がらないのか、どんな工夫が足りないのか、という問題意識が出てきません。(p.235) 立てられるべき問いは「なぜ、政治家にロクな人間が少ないのか」「なぜ、政治家は私たちの声を聞かないのか」ではありません。そういう政治家はいるでしょう。しかしより本質的で重要な問いは「なぜ私たちは、主権者なのに、主権者でないように振る舞うのか」という点にあります。どんなときも問いの立て方が重要です。  これは、政治家の問題ではありません。私たち自身の問題です。(p.244)

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2017/07/20

年越し派遣村の村長をしたことで知られる社会活動家で、内閣府参与として政府入りした経験も持つ湯浅誠氏による民主主義論。 民主主義は面倒くさくて疲れるものだ。その事実を直視した上で、どうすべきか考えよう。民主主義の活性化のためには、対話が必要であり、そのための時間と空間が必要だ。それ...

年越し派遣村の村長をしたことで知られる社会活動家で、内閣府参与として政府入りした経験も持つ湯浅誠氏による民主主義論。 民主主義は面倒くさくて疲れるものだ。その事実を直視した上で、どうすべきか考えよう。民主主義の活性化のためには、対話が必要であり、そのための時間と空間が必要だ。それらをデザインする力を身につけることが必要だ。本書の大きなメッセージはこのようなものである。 本書の内容には、かなり共感しながら読み進めた。自分が漠然と考えていたことをうまく言い表してくれていることが多かった。特に政策実施には、異なる意見の人との意見調整が必須であり、その調整コストの負担が必要(政府のやる気の問題ではない)、最善を求めつつ最悪を回避するという態度が求められる、という指摘には膝をうつものがあった。「”溜め”のない社会」になりつつあるという懸念にも同感である。結局、人任せではなく、一人ひとりが直面する課題に向き合い、他者と対話して、一つずつ前に進めていくということを積み上げていくしかないのだと感じた。

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2016/02/17

傑作。こういう本が書きたかったね。 でも、湯浅さんほど社会運動していないから、私には無理か。 私が言いたいことを代弁してくれている本なので、学生たちには絶対にしっかり読ませたい。

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2015/10/13

引用に残ったことば。 ・壊す時には壊す前のその建物がなぜ建てられたかを考えてみよ。(ヨーロッパの格言) ・なぜ私たちは主権者なのに主権者でないように振る舞うのか。 ・民主主義は時間と空間、及び、その場の設計、参加とデザイン。 ・船長の源泉はイノベーションです。イノベーションは「参...

引用に残ったことば。 ・壊す時には壊す前のその建物がなぜ建てられたかを考えてみよ。(ヨーロッパの格言) ・なぜ私たちは主権者なのに主権者でないように振る舞うのか。 ・民主主義は時間と空間、及び、その場の設計、参加とデザイン。 ・船長の源泉はイノベーションです。イノベーションは「参加」や「場のデザイン」という衣装ダンスの中にたくさんの服(手法)を入れ、そのコーディネートの試行錯誤を重ねる中で生まれます。対人関係や各種のコミュニティの運営、社会や政治のあり方はまさに衣服を増やし、コーディネート経験を積む実践の場です。それが民主主義を活性化する。

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2015/07/14

やっとこさ読了。 実に考えさせられる本であった。 民主主義はおそろしく面倒くさくてうんざりするシステムである。だから、待っていられない焦りから安易に「強いリーダーシップ」を発揮してくれるヒーローを求め、「決めてくれ、ただし自分の思い通りに」という願いをもつ。そして、裏切られてま...

やっとこさ読了。 実に考えさせられる本であった。 民主主義はおそろしく面倒くさくてうんざりするシステムである。だから、待っていられない焦りから安易に「強いリーダーシップ」を発揮してくれるヒーローを求め、「決めてくれ、ただし自分の思い通りに」という願いをもつ。そして、裏切られてまた新しいヒーローを求める。 では、どうすればいいのか、主権者たる国民が民主主義の面倒くささを引き受けることである。 18歳に選挙権が与えられることになり、主権者は拡大した。善悪二元論のようなわかりやすい議論でなく多面的に考えられる人材を育てていきたい。

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2015/03/22

民主主義の面倒くささ(利害調整の拒否)を放棄するところに、強いリーダーを待望する心象が作られる。自分が何ができるか、できるところから始めなければ、上が変わればという誘惑、堕落は常に押し寄せてくる。はっと目の覚めた文章でした。 ・政府も個人もやる気や意欲の問題にするのは安直で見せ...

民主主義の面倒くささ(利害調整の拒否)を放棄するところに、強いリーダーを待望する心象が作られる。自分が何ができるか、できるところから始めなければ、上が変わればという誘惑、堕落は常に押し寄せてくる。はっと目の覚めた文章でした。 ・政府も個人もやる気や意欲の問題にするのは安直で見せかけの回答。 ・直視すべきは、自分と仲間うちがいかに限定された、ごく限られた人たちにすぎないか、全く理解できないという気持ちになるのは、他の多数の人と大きく意識が乖離してしまっているか、という距離の問題。 ・あるテーマに強い執着を持っている人ほど、自分はわかっていると強い自信を持っているだけに、異なる意見を落ち着いて聞くことができない。 ・これからの日本はより競争を激化させる方向では個人も社会も元気にならない、かえってより停滞する。必要なことは競争環境をより過酷にすることではなく、人と人をつなぎ、その関係を結び直す工夫と仕掛けを蓄積すること。 ・すりよった、とりこまれたという評価の仕方が好きな人たちは、もしかしたらその人自身が俺のいうことを聞けといった一方的なコミュニケーションしか知らない。 ・時間と空間の問題は、言い換えれば参加の問題。 ・アウトリーチしても説教では意味がない。 ・自殺のキーワード。ごめんね、まさか。 ・誰でも支えられるよりは支える側に回りたい。 ・なぜ政治家は私たちの声を聞かないのかではなく、より本質的な重要な問いはなぜ私たちは主権者なのに、主権者でないように振る舞うのか、という点。

Posted byブクログ