紺碧海岸のメグレ の商品レビュー
ヴァカンスの雰囲気満載な町、アンティーブの事件で呼ばれてきたメグレは、四人の女と会う。 被害者の愛人とその母親。被害者が懇意にしていたバーのママと一人の若い娘。 メグレが出会う女たちの物語。→ 戦前「自由酒場」という邦題で抄訳、「倫敦から来た男」とセットで刊行されていた話の完訳...
ヴァカンスの雰囲気満載な町、アンティーブの事件で呼ばれてきたメグレは、四人の女と会う。 被害者の愛人とその母親。被害者が懇意にしていたバーのママと一人の若い娘。 メグレが出会う女たちの物語。→ 戦前「自由酒場」という邦題で抄訳、「倫敦から来た男」とセットで刊行されていた話の完訳版。 舞台がフランス南海岸だからか、全体的に気だるげでゆっくりと話が進む。 紺碧海岸が舞台の割には暗く、モヤがかかったような読み心地。シムノン、なんだよなぁ。 事件そのものはあっさり→ まったり読み進めれば推理することもなく犯人がわかり(メグレも推理していない)ミステリとしてはちょっとな、な展開なんだけど、シムノンの物語らしさはちゃんとある。地味だけどいいんだよなぁ。 詳しい解説は作家瀬名秀明氏が書かれているブログがとても良いのでオススメ。
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お腹空く! 大蒜と果実の香りのするオリーブオイルのサラダってそれだけで美味しそう。 口調というか進み方も新鮮だった。もっと読みたい。何か美味しいものとお酒も用意して。
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▼ジャン・ギャバンと言えば、ルノワール作品であり、ドロンと共演した犯罪映画であり、メトロの香りであり・・・巨大な山脈のような「欧州のジョン・ウェイン」てな感じです。個人的にはなんと言っても「現金に手を出すな」「フレンチ・カンカン」が身悶えるほどに愛しいんですが、ギャバンの十八番、...
▼ジャン・ギャバンと言えば、ルノワール作品であり、ドロンと共演した犯罪映画であり、メトロの香りであり・・・巨大な山脈のような「欧州のジョン・ウェイン」てな感じです。個人的にはなんと言っても「現金に手を出すな」「フレンチ・カンカン」が身悶えるほどに愛しいんですが、ギャバンの十八番、というと、僕はメグレ警視です。「殺人鬼に罠をかけろ」(1958)、「サンフィアクル殺人事件」(1959)、「メグレ赤い灯を見る」(1963)の三本(どれも映画史に残る傑作かと言われると、議論の余地なく100%、そんなことはまったくありませんが)。ちなみに「赤い灯を見る」だけ、未だ見れていません。見れるなら、大抵のことはするのだけれど(そうでもないか・・・)。情報求む。 ▼哀愁とか人情、演歌の世界と言えば言えなくもないですが。それほどキレイごとでもない。足下と未来を覗き込んでぞっとする、貧しさ、希望の薄さ、みたいなドス黒い闇を、なんというか・・・「当たり前に知っている肌触り」というか、「着古してすり切れているけど、もはや体の一部となっているような部屋着」みたいなものとして描けるのが、持ち味な気がします。ジョルジュ・シムノン。これみよがしな、「ああ無情」ではなくて。 ▼ただ、主人公のメグレ警視は、その闇には暮らしていない。それはきっと、シムノンさんそのものが投影されています。シムノンさんは、少年時代から記者として、通俗小説家として、裏街道の”闇” を恐らく散々見て来ているけれど、自分は大金持ちの小説家になった。そんな「安全地帯」な温もりが、メグレ・シリーズのエンタメ感でしょう。全世界に圧倒的に影響を及ぼしています。金田一耕助しかり。そしてシムノン礼賛、メグレ信者の中には、司馬遼太郎さんも含まれます。 ▼「紺碧海岸のメグレ」ジョルジュ・シムノン。佐藤絵里訳、論創社。フランスでの初出は1932年らしいです。この本は2015年出版。原題は「liberty bar」で、戦前に「自由酒場」の邦題で一度翻訳されたらしいですが、その後なぜか邦訳されず、だったそう。 ▼シムノンさんの「メグレ警部シリーズ」は、海外ミステリファンには先刻ご承知の定番もの。個人的には「メグレ」は、小津安二郎やイーストウッドやウディ・アレンの映画、などと並んで、もう30年来の「聖域」とでも言うべき愛着作品。迂闊にもこの本の存在を知らなかったので、今回狂喜乱舞して購入、舐めるように読みました。いやあ、シアワセでした。1ヶ月くらい、毎日ごろごろしてメグレばかり読んだりしたいなあ。いや、半年くらいイケるか。メグレとフロスト・・・それにマーロウ。 ▼ちなみにシムノンと映画の関係は深い。「仕立屋の恋」もシムノン原作。シネフィル的にはジャン・ルノワールの「十字路の夜」(1932)も、メグレものです。メグレを演じるのは監督の兄弟のピエール・ルノワール。やっぱりギャバンの敵ではないですが。ギャバンと言えば、「港のマリー」も確かシムノン原作。「現金に手を出すな」などのフレンチ・ノワールも、圧倒的にシムノンの影響下。これだけ、「フランス風の物語」というジャンル?を、圧倒的にたったひとりで作っちゃったバケモノレベルの多作の文豪シムノンさんが、実はベルギー人だっていうところが欧州の奥深さ・・・。 ~~~~~~~ 以下内容の備忘録。 ▼舞台は執筆同時代、つまり1930年前後のフランス。普段はパリで活躍しているメグレさんが、故あって南仏リゾートの殺人事件に挑みます。中年?初老の男が殺された。オーストラリアの事業家(元・事業家)で、金持ちで、南仏で爛れた生活を長年送っていた。愛人とその母親を別荘に囲い、さらにカンヌのうらぶれた酒場の初老の女とも腐れ縁みたいな関係を持っていた。加えて、オーストラリアの血族とも金の浪費を巡って長年泥沼の訴訟中。欧州で事業を担当している息子とも関係は冷え切っている。財産分与を巡る蠢き。謎めいた遺言状の行方。容疑者多数、決め手を欠く。 ▼メグレ警視が関係者の間をあてどもなくうろうろする中で、謎めいた被害者の人生と、人生観が浮かび上がる。謹厳実直真面目、クールな実業家が、爛れたリゾートの虚飾や、退廃と懶惰な人生の体温に引き寄せられていった。犯人は結局、疑似娘的な若い女に、男を奪われた、カンヌの酒場の初老の女だった。酒と裏街道に健康を持ち崩した孤独な人生は、病で余命いくばくもなく。で、メグレの大岡裁きが炸裂・・・。
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