商品開発のための心理学 の商品レビュー

熊田孝恒

2016/09/12

基礎心理学とは、人間の基本特性を明らかにする心理学分野である。基礎心理学の特徴は、①実験室を仕事場にしている、②大学生やネズミやサルなどの実験動物を対象としている、ことである。基礎心理学は現場での問題を解決しようとしない。現場の課題に取り組むには、基礎心理学者にとって、実験室と現場のギャップに橋を架け、魔の川を渡る勇気が必要である。心理学者が、この魔の川をどのようにして渡ったのか、
①車庫入れの苦手な原因の追究
②視覚性ストレス軽減の試み
③駅の案内の視認性の研究
④高齢者に使いやすい情報機器の研究
⑤味覚の熟練度の測定
⑥情報機器使用時の心理状態の研究
⑦対面販売における相手の心に響く応対サービスの研究
などの研究を通して、具体的に説明している

2015/08/18

面白いの一言に尽きる。アカデミアとリアルが出会い、互いに成果を活かせる共同研究事例が豊富。

ひと昔前には考えられなかった試み。心理学が、心を取り扱う以上どのような場面においても本来役立つ学問であるはず。あまりに異なるアプローチであるため、融合し難かった企業とアカデミズムをつなげ、両者にとって益になるものに仕上げていく。それこそ、アカデミズムに基づいて事実を積み重ねて書かれているが、現場はなかなか大変であったのではないだろうか。

あとがきに記されている通り、基礎心理学者にとっても、また他領域の心理学者や周辺領域の研究者にも興味深く、かつなるほど心理学ってこういう側面もあるんだなと、普段は学問とあまり接する機会がない読者にも楽しめる仕上がりになっていると思う。