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指の骨 の商品レビュー

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33件のお客様レビュー

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2023/12/15

太平洋戦争のパプアニューギニアで負傷した一兵士の記録。 実際の戦闘シーンは多くありません。前半の多くは野戦病院。十分な医薬品もなく、戦傷や風土病などで亡くなっていく兵士たち。悲惨だけど、銃声もなく一時的な平和にどこか空白感が漂います。後半は長く悲惨な敗走シーン。敵兵に遭遇すること...

太平洋戦争のパプアニューギニアで負傷した一兵士の記録。 実際の戦闘シーンは多くありません。前半の多くは野戦病院。十分な医薬品もなく、戦傷や風土病などで亡くなっていく兵士たち。悲惨だけど、銃声もなく一時的な平和にどこか空白感が漂います。後半は長く悲惨な敗走シーン。敵兵に遭遇することも無く、ただ病気や飢餓で次々に路傍に打ち捨てられて行く兵士たち。 感情は動きます。しかし昂じない、激さない。どこか冷静。悲惨さを静かに受け入れ、淡々と描きます。その客観性が深く染み込んできます。 若い作家さんが、なぜ戦争をテーマにした作品を描いたのか。「反戦・平和主義」と言った思想性では無さそうです。たまたま知った戦争の悲惨に興味を持ち、それを表現したものだと思います。 読み応えたっぷりの中編でした。 =============== 太平洋戦争での日本兵の戦没者・約230万人のうち、一説では6割ほどが病気や餓死などの戦病死と言われています。充分な食料も持たずに遠征。補給線も貧弱で食料は現地調達。反撃を受け侵攻に失敗すると食糧不足に陥る。直接的な餓死だけでなく、食料不足から体力が低下したための発症・病死が多い。 さらに言えば。。。 民間人(110万人)を含めた死者数は日本全体で310万人。これに対し日本軍占領下のインドネシアでは、飢饉と強制労働によって約400万人が死亡したそうです(国際連合の報告)。

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2023/09/10

[これは戦争なのだ、これも戦争なのだ]そしてこれが戦争なのだと思う。あの時の日本軍の戦争なんだ…。実際に戦って亡くなった人よりも餓死で亡くなった戦死者が6割にものぼるという現実。 一兵卒の目から淡々と紡がれた何かもかもが欠乏している戦地での有り様は戦うことよりも生きること生き残る...

[これは戦争なのだ、これも戦争なのだ]そしてこれが戦争なのだと思う。あの時の日本軍の戦争なんだ…。実際に戦って亡くなった人よりも餓死で亡くなった戦死者が6割にものぼるという現実。 一兵卒の目から淡々と紡がれた何かもかもが欠乏している戦地での有り様は戦うことよりも生きること生き残ることの惨たらしさをまざまざと見せつけてくる。 祖父は南方に出征しマラリアに罹って内地に送り返された。今にして思えばそれはとても幸運なことだったんだな。もっともっと話を聞いておけば良かった。

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2021/03/15

これはまさに戦争の地獄。内容としてはドンパチ戦うものではなく、戦いから弾かれてしまった軍人が気が狂うほどの状況をとてもリアルに描いている。 戦争映画なんかよりもとても生々しく、ここまでの描写を文字で表現できることに感心した。

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2019/12/11

淡々とした、ただ淡々とした、ある男の戦記。 派手な戦闘シーンはない。エンタメ的なストーリーもない。周りの男たちが一人また一人と怪我や病気で死んでいく日常の風景の描写が続く。 「果たしてこれは戦争だろうか」「これは戦争なのだ」「これも戦争なのだ」 感情を抑えた徹底した観察描写が効果...

淡々とした、ただ淡々とした、ある男の戦記。 派手な戦闘シーンはない。エンタメ的なストーリーもない。周りの男たちが一人また一人と怪我や病気で死んでいく日常の風景の描写が続く。 「果たしてこれは戦争だろうか」「これは戦争なのだ」「これも戦争なのだ」 感情を抑えた徹底した観察描写が効果的な小品。 戦争物としてはどうしても古処誠二さんと比べてしまうため見劣りがしてしまう。この作品に興味を持ったら、ぜひ古処さんの「接近」や「ルール」も読んで欲しい。

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2019/08/23

戦争ってなんなんだろう?使い古された言葉なのかもしれないが……この話には戦闘など殆ど出てこない。南方に出征された祖先の方々に心からの感謝と哀悼の意を表します。 日本軍は本当に人を大事にしなかった。葉書一枚でくる兵隊は馬よりも安いと言われた。悲しいけど日本人の本質がそこにある気...

戦争ってなんなんだろう?使い古された言葉なのかもしれないが……この話には戦闘など殆ど出てこない。南方に出征された祖先の方々に心からの感謝と哀悼の意を表します。 日本軍は本当に人を大事にしなかった。葉書一枚でくる兵隊は馬よりも安いと言われた。悲しいけど日本人の本質がそこにある気がする。

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2019/03/17

 文章も端正で、ストーリーの運びもリアル。戦後派の誰かが書いていれば、評判になるだろう。しかし、この作品を今書くこの作家が、信用ならない。まあ、読み手の感覚が古いのであって、書くということは虚構だというふうにいえば何を書いてもいいんだろう。  でもこれ嘘でしょ。そんな感想から逃れ...

 文章も端正で、ストーリーの運びもリアル。戦後派の誰かが書いていれば、評判になるだろう。しかし、この作品を今書くこの作家が、信用ならない。まあ、読み手の感覚が古いのであって、書くということは虚構だというふうにいえば何を書いてもいいんだろう。  でもこれ嘘でしょ。そんな感想から逃れられないのは何故なんだろう。こう書いている、ぼくが古いのだろうか。

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2018/08/16

終戦のこの時期に読んでみました。 作者の方の非常にリアリティのある表現で、経験者と思ってしまうぐらいです。 読んで感じた言葉は、「人間死ぬ時は死ぬ」ということ。 この作品の舞台は、第二次世界大戦中の南方戦線。 傷ついて野戦病院に担ぎ込まれた主人公が、上官、仲間の死に面する...

終戦のこの時期に読んでみました。 作者の方の非常にリアリティのある表現で、経験者と思ってしまうぐらいです。 読んで感じた言葉は、「人間死ぬ時は死ぬ」ということ。 この作品の舞台は、第二次世界大戦中の南方戦線。 傷ついて野戦病院に担ぎ込まれた主人公が、上官、仲間の死に面するまでの経緯や感じたこと、そしてついには自分も、、、そんな流れが切々と描かれてます。 戦争の戦いの中で敵に立ち向かって死ぬ、 味方の誤射に当たって死ぬ、 疫病で死ぬ、 衰弱して死ぬ。 至る所に死の影は潜んでおり、 戦争が有ろうと無かろうと、 戦争が良いものであろうと悪いものであろうと、 全てを超えたレベルで、誰の身にも死は訪れるものである。 私は長生きしたいので、死を怖れてます。 しかしいずれ死ぬ時が来る。 その時までに自分は何をしておくべきか。

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2018/08/06

戦闘する様な激しい戦争についてではなく傷を負った兵隊たちの話。 戦争を知らない私と同世代の人が描いたとは思えないくらい鮮明な表現力で書いてあった。 最初は薄い本でびっくりしましたが、読み応えがあり、考えさせられる作品でした。

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2018/08/06

122ページの小品だが非常に濃い作品だと感じた。こんな戦争ものを広島 原爆記念日の日に読むとは何かの縁かな? それにしても作者初の著書とは思えないくらいな水準の高さだと思う。 この作品も含め何回も芥川賞候補になり、ついに今年の芥川賞を受賞したのが首肯できる。

Posted byブクログ

2018/04/24
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

戦争小説。 太平洋戦争、南洋の密林での戦い。 死と隣り合わせのなか、故郷や死んでいった仲間たちを思い、自分の死をやがて忘れていったこと。 負傷して野戦病院にいた若き兵士。 死んだ兵士たちは、指を切り落とされ、それすらも故郷に帰ることができる可能性も薄い、国のために命を捧げた証。 悪化する戦中、動ける負傷兵たちだけでもと、戦うために密林の中をさまよった日々。 何と戦っているのかもわからないまま、次々と死んでいった若き命。 その場にいるかのようにリアルに書かれていて、それでいて戦争でたくさん人がなくなったのも事実で、なんともやるせない。 正直主人公は助かるのではと思ってたのに、最後死んでしまうのとんでもなく悲しかった。 人って愚かで愛しい。

Posted byブクログ