蜜夢ホテル の商品レビュー
山間の小さなホテルを舞台とした支配人の官能奮闘記
竹書房文庫からの2作目となるが、前の作品『蜜情ひとり旅』よりは官能密度が高く、「官能要素が多分にある小説」を超えて本来の官能小説と呼べる水準にあると思う。すなわち、官能面においては竹書房ラブロマン文庫に比肩すると言ってよかろう。これに品のある山間の小さなホテルに勤める品のある支配...
竹書房文庫からの2作目となるが、前の作品『蜜情ひとり旅』よりは官能密度が高く、「官能要素が多分にある小説」を超えて本来の官能小説と呼べる水準にあると思う。すなわち、官能面においては竹書房ラブロマン文庫に比肩すると言ってよかろう。これに品のある山間の小さなホテルに勤める品のある支配人(主人公)とそのスタッフ達、そして宿泊客とが織り成すドラマがある。これが竹書房文庫から出ている所以となる、そんな作品である。 財前 - 完璧かつスマートに仕事をこなす46歳の支配人は前職に秘密あり。 明日香 - 支配人ラヴを隠さないフロント係は何につけても前向きな22歳。 杉崎 - ベルマン兼ポーターは岩のような大男の32歳。 田所 - 財前支配人に恩義があって苦楽を共にする55歳のシェフ。 4人の正社員と数人のパートタイマーのみで切り盛りするホテルはアットホームな魅力と気品に満ちており、その仕事振りを読んでいるだけでも癒されそう。そして、明日香のアタックを受けてたじろぎながらもパートタイマーの薄幸そうな美女を気にかけ、淡い想いを抱いていく財前という構図が基本となっている。 貴子 - 財前が気にかけるパートタイマーの35歳は独身に理由あり。 ただし、そんなホテルにやって来る宿泊客は一癖ある面々ばかり。全五章のうち3章で客との話となるが、何らかの形で悩みや問題を抱えた客もいる。それらは解決できそうなこともあれば何ともし難いこともあるのだが、それでも翌朝には前向きになってチェックアウトできる物語の心地良さがあり、それには巻き込まれる形ながらも結果的に心のみならず体も解放して差し上げる財前の「夜の支配人」振りが寄与していることは言うまでもない。 杉崎や田所と財前といった過去の男臭い義理人情的なバックボーンに触れながらホテルの内部や宿泊客とのトラブル(?)といった多角的な読み切りエピソードがネタの尽きるまで続けられそうな、そんな構成が出来上がっているので続編としてもう1冊くらいは出せそうな気もするのだがいかがであろうか?
DSK
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