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山口多聞 の商品レビュー

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2024/10/14

時系列に書かれており読みやすく、真珠湾からミッドウェイまでの流れについてより理解が深まった。数年前に公開された映画「ミッドウェイ」は、割と公平に描かれててはいるが、若干日本が一方的にやられたような印象があった。しかし本書では、生き残った方の証言なども詳しく書かれており、いかにひと...

時系列に書かれており読みやすく、真珠湾からミッドウェイまでの流れについてより理解が深まった。数年前に公開された映画「ミッドウェイ」は、割と公平に描かれててはいるが、若干日本が一方的にやられたような印象があった。しかし本書では、生き残った方の証言なども詳しく書かれており、いかにひとりひとりが日本のために奮闘してくださったのかを知ることができて良かった。大怪我を負い失神しながらも、母艦へ見事着艦し仲間を救った角野大尉のエピソードは特に印象に残った。加来艦長と山口司令官の最期には自然と涙がこぼれた。 次代連合艦隊司令官長と目されつつも、ミッドウェイ海戦で没した第二航空戦隊司令官の山口多聞少将。真珠湾奇襲やミッドウェイ海戦などにおいて、彼がどのような考えや心持ちでいたかも詳しく知ることができた。とにかく状況分析や判断力、また人格的にも優れ、まさにリーダーとしてふさわしく、また皆に慕われるお人柄だったのだと思う。硫黄島で散華した栗林忠道中将と似た印象を抱いた。アメリカ駐在経験があり、アメリカの軍事力を冷静に分析していた点についても共通点があるように思う。 山口少将が危惧していたことが次々と現実のものとなり、結果として日本は戦争に負けた。歴史において「もし」を考えるのは無駄かもしれないが、もし真珠湾奇襲の際、軍事施設の破壊を徹底していれば、もし南雲さんではなく山口少将が機動部隊総司令官だったら、戦闘中の兵装転換禁止を徹底していたら。もしかしたら広島・長崎に原爆が落とされることもなかったのではなどと考えてしまう。経験や知識を無視し、力不足の者を司令官にする年功序列の人事。情報を軽視した傲慢で慢心した態度。現実を無視し自分たちにとって都合の良い解釈ばかりした危機感のなさ。「そういう時代だった、そういう体質だった」と言えばそれまでだが、度々の警告や意見具申が無視された挙句、苦しい戦況の中で大切な部下たちを死線へ送らねばならなかった山口少将はきっと悔しさと怒りでいっぱいであったろうと思う。

Posted byブクログ