死刑肯定論 の商品レビュー
国際的には死刑廃止国は90以上、準廃止国(死刑執行停止中や軍事法廷での特別なケースのみ実施)を含めると140ヶ国にものぼる。 こうした単純な統計比較や死刑は残酷だとかの感情論、人が人を裁くのは間違っているなどのべき論に安易に流されるべきではありません。やはり、自分の頭で考え抜いて...
国際的には死刑廃止国は90以上、準廃止国(死刑執行停止中や軍事法廷での特別なケースのみ実施)を含めると140ヶ国にものぼる。 こうした単純な統計比較や死刑は残酷だとかの感情論、人が人を裁くのは間違っているなどのべき論に安易に流されるべきではありません。やはり、自分の頭で考え抜いて自分なりの決論を出すべきです。 本書は、被害感情の問題、被殺者の数の問題、更生問題を論じ、死刑判断(被害者の復讐原理、犯罪者の悪性原理、社会の安全原理)にも触れています。 そうした考察の上で、筆者の立場は死刑存置となっており、その背景には「死刑が廃止された社会では、自分が殺されるのは絶対嫌だが、自分が他人を殺すのは構わない」というモラルハザードの危険性が避けられない点も含んでいるようです。 私も死刑存続支持ですが、以前に日垣隆氏の弟さんの死についての文を読んで、さらにその意を強くしました。 死刑賛成の理由は、人の命に軽重はないという真理、であれば人を殺せば自分の命でしか償えないという大前提にあります。(もちろん、どうしようもない過失や判断能力の有無など情状酌量の余地がある場合もあり。具体的には、幼少より実父にレイプされ続けた娘がやっと好きな人が出来てその結婚を反対されやむなく父親を殺したケースとかの、被害者が加害者以上の悪事を働いていた場合など) そして、基本的には、年齢で殺人が許容される少年法や心神耗弱による減刑も無くすべきです。どんな理由があれ、殺された人が現実にいる事実にきちんと向き合うべきです。 その上で、死刑にも強弱をつけるべきだと考えます。想像を絶する残虐な殺人には、殺された人とできるだけ同じ条件で執行し(生き埋め殺人なら、生き埋め死刑)、それ以外は絞首刑ではなく薬物注射で苦痛なく執行する。そして、死体の臓器を有効活用すれば最後の社会への罪滅ぼしと文字どおり最期のご奉公となる。 また、冤罪の問題にも触れておきます。まず、死刑廃止論の根拠とされる冤罪を無くすために、取り調べの全面可視化はもちろん、検察の持っている証拠は全て弁護側にも開示し、全ての証拠を元に裁判すれば、ありえない冤罪はかなり減らせると思われます。まず、そうした努力から始めるべきです。
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死刑の賛否について、多角的な視野から真摯に検討されている。著者は元裁判官であるが、これほど真剣に死刑について考えている裁判官がどれくらいいるか。 もっとも、著者は、結局のところ、死刑賛成の根拠にも穴のあることを認めつつ、死刑制度には生命尊重の規範確立という重大な機能があるとす...
死刑の賛否について、多角的な視野から真摯に検討されている。著者は元裁判官であるが、これほど真剣に死刑について考えている裁判官がどれくらいいるか。 もっとも、著者は、結局のところ、死刑賛成の根拠にも穴のあることを認めつつ、死刑制度には生命尊重の規範確立という重大な機能があるとする。これは実に巧みで、死刑制度は凶悪事件の抑止になっていないという統計的事実とは無関係に、生命尊重の規範から死刑制度の正当化を図れる。しかし、死刑は国家が市民を結局のところ殺すのであるから、この世には生命を尊重されない者もいる、という生命尊重の規範への逆効果にもなるはずである。 著者は持論である裁判所の権力志向への懐疑から、死刑制度の問題点も指摘する。おそらく、死刑でリポートを書く大学生ならば、本書を読んで、死刑はやっぱり必要、でもその基準には問題がある、と、簡単に感化されるだろう。その意味でも、本書は死刑肯定論としてやはり巧みである。 また、本書では、死刑廃止国は死刑を批判しつつ、戦争を肯定して矛盾であるとして、死刑廃止国の欺瞞と死刑存置かつ「戦争放棄」をしている日本の正当化を図る。これは、死刑賛成派からよく聞かれる意見ではあるが、全く説得力はない。日本が死刑を廃止したうえで、死刑廃止国に戦争をするのは矛盾だからやめるべきだと、訴えるべきだともいえるからである。 著者の真摯で膨大な哲学・法の知識に基づく緻密な論理は称賛されるべきではあるが、ただその主張に従うだけなく、死刑制度の賛否を深く考えるきっかけとして読むことが必要だと思う。
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死刑肯定派の論者による死刑の正当化論。死刑の究極的根拠を示すことは困難とする反面、死刑冤罪論は廃止論の相対的根拠とはなり得るが、廃止論を究極的な根拠ではないとしている。
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死刑について、いろいろ考えてたつもりだったけど、考えたことない切り口で説明されていたり、面白かった。 哲学や正義論など理論的・抽象的な話もあり、実際の事例に即した話もあり。 事例として出てくる事件が凄惨で、かいつまんだあらすじだけで精神的にダメージを受けた。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
タイトルが挑発的であるが、内容は単に「死刑肯定」ではなく、「死刑反対論」に対する穴をつく、ということに終始していて、単純に死刑を肯定する本ではない。 むしろ、死刑を肯定する側も必読であるかもしれない。 また、現状の政府の国家の死刑に対する姿勢への批判もある。 ただし、死刑に対する既存の論を並べただけの本である印象も拭えない。なるほどと思わせる所はあるが、最終的に結論が曖昧である気もする。 個人的には冤罪による死刑反対論がいちばん説得力があると思っているが、彼は「新幹線や車などの産業は、必然的に事故を起こす。まったくではないが、これは死刑制度にも同じことがいえる。ゼロにする努力はするが、その死刑制度そのものはのこすべきであるというのが、いまの世論である。」とする。 しかしこれは違和感がある。 産業による事故は完全に偶発的である(人為的に殺しているならそれはそれで解決せねばならない問題である)。 しかし、死刑執行は人が下して初めて執行されるものである。決して偶発的ではないはずだ。もちろん検察の取り調べに瑕疵があるかもしれないが、それでもなお求刑にたいして裁判官は死刑判決に関して回避する余地が残されているし、それは偶発ではなく任意によるものである。 コレに対して著者はあまり明確な反論を示しているとは思えない。やはり冤罪による死刑廃止論は一定の論拠があると思える。
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まずもって従来の宗教、道徳、哲学、法学上の議論を丁寧にまとめてあり、その知識と洞察力の深さが並大抵ではないことがわかる。 それを踏まえた上で、実際の事件も紹介しながらの死刑廃止論、存置論を展開してゆく。 一般的死刑廃止論や存置論のレベルにとどまらない、深い思考過程は死刑についての...
まずもって従来の宗教、道徳、哲学、法学上の議論を丁寧にまとめてあり、その知識と洞察力の深さが並大抵ではないことがわかる。 それを踏まえた上で、実際の事件も紹介しながらの死刑廃止論、存置論を展開してゆく。 一般的死刑廃止論や存置論のレベルにとどまらない、深い思考過程は死刑についての検証をもう一歩も二歩も堀り下げてくれる。
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