イスラム潮流と日本 の商品レビュー
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2014年刊。著者は現代イスラム研究センター理事長。 反イスラエル(正確には反ネタニヤフ政権)、反サウジアラビア(サウード王家と王政維持堅持への否定的視線)という観点で、イラク戦争後の中東現代史を粗描する。 IS悪玉論という方向性だけでは見えてこない中東情勢を感得できるのは本書の買いだ。 といっても、日本とイスラム(アラブのみならず南米など)の関係や、ロシアvsイスラムや、ウクライナ情勢も叙述し、やや纏まりに欠ける。 IS以外に、イスラエルやサウジアラビアの悪玉化は後二者を支援する米国の問題も浮き彫りに。 ただし、それら悪玉の中に部分的な白さがあったりするなど、叙述の簡素さと対照に、現実模様の輻輳・複合・複層ぶりが見て取れる。 ここに①米国の思惑、②米政権の方向性による濃淡、あるいは③仏・英など中東諸国の旧宗主国の思惑、④スンナvsシーアなどイスラム教内部の対立、⑤イスラム教国間の対抗関係と国毎の利害の相違、⑥イスラム同胞団との親疎、⑦王政に対する親疎といった別の方向の考慮要素が複雑に絡まり合っている模様も看取できそうだ。 かかるモザイク模様はかなり複雑である。 これを見て取るにはこちらの基本的情報と認識が十分ではなく、再読してもう一度吟味すべきかな。 とはいえ、イスラエルのガザ空爆・陸上からの侵攻の情報端緒となっただけでも本書読破の意味はあったとは思う。 ただ、ウクライナ・ロシア問題と中東問題とは別の書にしてもらいたかった。
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イスラム過激派に一番とまどっているのは本来のイスラム教徒。 イスラエルという国をめぐって、世界がしてきたことをつかみやすい。 中東あたりというのは日本に比べたら生きていくにはどうなの?暮らしやすい土地?その土地にあった生き方、治め方というのがあったのでしょう。 イスラムというの...
イスラム過激派に一番とまどっているのは本来のイスラム教徒。 イスラエルという国をめぐって、世界がしてきたことをつかみやすい。 中東あたりというのは日本に比べたら生きていくにはどうなの?暮らしやすい土地?その土地にあった生き方、治め方というのがあったのでしょう。 イスラムというのはその知恵の形の一つなのでしょう。
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2014年9月、国連人権高等弁務官事務所は2011年から2014年4月末までにシリア内戦の死亡者数が19万1369人に達したことを発表した。 シリアはアサド親子二代の政権下の時代から混乱していたわけではない。 日本の外務省の「世界の学校を見てみよう」というページには、1997年当...
2014年9月、国連人権高等弁務官事務所は2011年から2014年4月末までにシリア内戦の死亡者数が19万1369人に達したことを発表した。 シリアはアサド親子二代の政権下の時代から混乱していたわけではない。 日本の外務省の「世界の学校を見てみよう」というページには、1997年当時、「シリアのダマスカス市内の学校では、生徒の話題の中心は音楽とファッションで、欧米で流行している服装や髪型が関心を集めています。シリア人は大変親日的で、第二次世界大戦後の日本の経済成長や日本人の勤勉さ、自動車など工業技術の高さが知れ渡っています」とある。 現在、シリアでは、石油・ガス生産施設を含む国土の三分の一がイスラム国の実行支配を受けている。 イスラム国に軍事的に対抗できるのはシリアのアサド政権のみという状態で、米国は、軍事支援をしているサウジアラビアがスンニ派のテロリスト集団の重要な活動資金源になっていることもあり、現在ジレンマに陥っている。 同じように軍事支援をしているイスラエルのミサイルがガザで1400人もの住民を殺害した事件では、米大統領報道官が「到底容認できず、かばいようがない」と厳しく発現したように、外交政策の支離滅裂ぶりを露呈している。 米国のイスラエルに対する資金援助は、イスラエル軍事費の四分の一を構成。 また、米国の議員たちは多額の資金をイスラエルのロビー(圧力団体)から受け取っているため、イスラエルのロビー活動を批判できない。 ではイスラエル社会とは何か? ユダヤのタルムード(法律と解説の集大成)によれば、「ユダヤ人とは、ユダヤ教の信徒であり、また母親がユダヤ人でなければならない」とある。 この規定によれば、現在イスラエルを構成する人口600万人のうち、300万人がユダヤ人ではなくなる。 主にロシアやウクライナからやってきたユダヤ人でないもの多くが祖父母の一人がユダヤ人だったということで国籍が認められた。 ヨーロッパ出身のユダヤ人(アシュケナージ)の祖先の母系はユダヤ人商業社会に嫁いだヨーロッパのクリスチャンたちが婚姻を契機に改宗した女性たちで、もともとパレスチナで生まれたユダヤ人の子孫ではない。 また、イスラエル総人口の五分の一はアラブ系イスラエル人で、彼らは2030年には人口の三分の一になると推定されている。 ネタニアフ首相がイスラエルを「ユダヤ人国家」であるというのはあきらかにアラブ系市民のことを差別するものである。 現在、パレスチナ人たちの「ゲットー化」はシャロン政権下(2001〜2006)によって推進され、パレスチナ自治政府と交渉しないという姿勢はネタニヤフ政権にも継承されている。 ヒットラーは、『我が闘争』の中でユダヤ人を邪な人種としてとらえ、ナチスの反ユダヤ主義は、ヨーロッパに旧来あった「反セム主義」という人種的な蔑視が融合し、ユダヤ人の放逐による究極の目的「絶滅」をも視野に入れられた。 現在イスラエルのタカ派政権が抱く「大イスラエル主義」はパレスチナ人を放逐することだ。 イスラエルは5000人のパレスチナ人を拘禁中だがそのうち200人近くが未成年なのだ。 ここに、現在のイスラエル問題の歴史的皮肉が浮かび上がる。 レニ・ブレナーは『独裁者たちの時代のシオニズム』(法政大学出版局)を著したが、ナチズムとシオニズムのイデオロギーの類似性を指摘している。 また、本書には日本とユダヤ人との歴史に関しても解説している。 日本は戦前、満州に逃れて来たユダヤを受け入れ、彼らに自治を認めた経緯もある。 また樋口季一郎(1888〜1970)は、日独防共協定が締結された後の1937年に、極東ユダヤ人大会に出席。ナチスドイツのユダヤ政策を批判するかのように「ユダヤ人を追放するならば、まずは彼らに土地を与えるべきだ」と訴え会場のユダヤ人から拍手喝采を受ける。 樋口の計らいで満州国に入ったユダヤ人は、1938年だけでも250万人近くに及んだというから、満州国にあったユダヤ人社会の規模は非常に大きいものだったに違いない。
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