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ありふれた祈り の商品レビュー

4.1

33件のお客様レビュー

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2026/02/07

原題は『Ordinary Grace』Ordinaryはありふれたという意、そしてGraceは祈りと言うよりは神の恵み、恩寵と言った意で正しく訳すなら「ありふれた恩寵」といったところか そして恩寵とは罪深い人間を救うために神がもたらす奇跡のことだ それではこの悲しい物語のどこに...

原題は『Ordinary Grace』Ordinaryはありふれたという意、そしてGraceは祈りと言うよりは神の恵み、恩寵と言った意で正しく訳すなら「ありふれた恩寵」といったところか そして恩寵とは罪深い人間を救うために神がもたらす奇跡のことだ それではこの悲しい物語のどこに神の恵みがあったのか? 少年が愛する人々の存在に気付くために、少年が自らの行いに責任を持つために、そして少年が大人になるために、その悲劇が必要だったと神が判断したのだとしたら、それは恵みではなく呪いだったのではないだろうか そして悲劇から人生を取り戻した人々の変化を奇跡と呼ぶのなら、それは神の恵みではなく人の持つ強さなのだと思いたい

Posted byブクログ

2025/11/09

ミステリというカテゴリーやけど、情景とかが浮かぶ文章とか、少年から成長していく部分とか、文学としても良かったと思う。

Posted byブクログ

2025/01/04
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

1961年夏。ニューブレーメンに住んでいた「わたし」ことフランク・ドラムの級友が、構脚橋の線路で列車にはねられて死んだ。それを皮切りに、現場近くで亡くなっていた身元不明の男、フランクの姉アリエル、アリエルの友人カール・ブラント…と多くの人の死が続いていくが、特にアリエルの殺害事件をめぐっての家族や周囲の人々の動きが本作の中心になっている。 フランクの父ネイサンは牧師だ。もとは弁護士を目指していたが、戦争で人を殺す経験をして牧師になった。フランクの母ルースはそれを不満に思っている。決して怒らず、情熱的に話すわけではないが静かに説教をして人々に神の存在を宣べ伝える姿は、神のように絶対的に正しい姿に見える。対して街の人々は粗野で、彼が戦場で臆病だったと揶揄したり、フランクの弟ジェイクが吃音なのをからかったりしている。一番印象に残ったのは、アリエルの葬儀の後の食事の席で、食前の祈りを唱えようとした父に、「ありふれた祈りをして」と母が頼むシーン。いつでも卒なく正しい道へ人々を導くネイサンに対し、この時母は突然娘を奪われた悲しみと怒りで神を拒否する心情になっているから、そんな夫の正しさが我慢できなかったのだと思う。それに対して、人前では3語とどもらずに話せたことのないジェイクが名乗り出て、代わりに本当に定型句のような、食前のありふれた祈りを、どもらずに捧げたシーンが本当に良かった。それは神からの奇蹟だし恵みだと思う。ありふれた祈り、原題はOrdinary Graceだが、そのgraceは祈りとも恵みとも訳せる。ラザロの復活のような劇的な奇蹟はなくとも、どもらなくなったとか、それで母に笑顔が戻ったとか、そうしたありふれた些細な出来事が神からの恵みであって、それに気づくこともまた恵みだと思う。 インディアン、吃音、障がい者、同性愛者など、弱者を描いた物語でもあった。 父は戦争で人を殺したことを、フランクは姉を殺したかもしれないインディアンのウォレンを見逃したことを、ジェイクは人から揶揄われる自らの吃音を、それぞれ十字架として背負いながら生きている。遠くへ行っても自分からは逃れられないから自殺したくなる気持ちは分かるとジェイクは言うけど、そうではなくて自分の重荷を口にして誰かと担いあったり許されたりしながら生きていく人間の姿がとてもよかった。最終的にウォレンは犯人ではなかったし、フランクが見逃したからウォレンは生き延びることができたのも、そもそもそうでなければ生きられなかったということ自体先住民差別が背景にあるけれども、それをフランクが後に知って許された気持ちになることも含めて恵みだと思う。

Posted byブクログ

2023/07/22

1961年、ミネソタに住む13歳のフランクと弟ジェイクとその家族の物語。 その街に住むひとりの少年の死から物語は始まるものの、ミステリーというより、 少年の成長や人間ドラマにポイントが置かれていて、じっくりとその世界を楽しめた。 やんちゃでちょっと短絡的、だけど兄弟思いの兄と、...

1961年、ミネソタに住む13歳のフランクと弟ジェイクとその家族の物語。 その街に住むひとりの少年の死から物語は始まるものの、ミステリーというより、 少年の成長や人間ドラマにポイントが置かれていて、じっくりとその世界を楽しめた。 やんちゃでちょっと短絡的、だけど兄弟思いの兄と、 吃音というハンデをかかえつつ、慎重で思慮深い弟の対比が良かった。 最初は冒険を嫌い、前に出ない弟にヤキモキハラハラし、中盤からは「お兄ちゃんもいいとこあるやん!」と兄の印象も変化し、二人のことが大好きになった。 ラスト付近で起こる奇跡にも胸が熱くなった。 牧師であるこの兄弟の父親にも好感が持てた。 信仰心を持たない自分にも、彼が場面場面で放つ言葉にうなづいたり、考えさせられた。 怒りを抑えることや冷静に行動するためのヒントをもらえた。 登場する他の大人たち、特に牧師と兄弟を精神的に支える男と 犯人の嫌疑をかけられるインデアンの男も良かった。 ※フォローしている方の読書記録は 次に読んでみたいと思う本の参考になり、たいへんありがたく思ってます。

Posted byブクログ

2026/02/07

読書備忘録696号。 ★★★★★。 翻訳される海外文学作品は、評価が高いから翻訳されている訳であり、やはりアタリが多い。 アメリカの中北部州ミネソタ州を舞台に少年が大人になっていく様を描いた秀作。 ミネソタ州はミシシッピ川があり、トム・ソーヤやハックルベリー・フィンが大冒険を繰...

読書備忘録696号。 ★★★★★。 翻訳される海外文学作品は、評価が高いから翻訳されている訳であり、やはりアタリが多い。 アメリカの中北部州ミネソタ州を舞台に少年が大人になっていく様を描いた秀作。 ミネソタ州はミシシッピ川があり、トム・ソーヤやハックルベリー・フィンが大冒険を繰り広げたり、大草原の小さな家でインガルス一家が住むウォールナットグローブがある。笑 すなわち、豊かな自然に恵まれた牧歌的な風景がすごく似合う舞台。 そんなミネソタ州のミネソタ・リバーのほとりの町ニューブレーメンで13歳の少年フランク・ドラムが初めて人の死、しかも最愛の家族の死に直面する残酷なひと夏の物語。そしてミステリでもある。 その年の夏、死の連鎖は知り合いの少年ボビー・コールがミネソタ・リバーに掛かるユニオンパシフィック鉄道の構脚橋で列車に轢かれるところから始まる。 そして、その事故死は、見知らぬ旅人の自然死を経て、最愛の姉アリエルの殺人事件に繋がり、連鎖して自殺と広がっていく。 物語は、主人公のフランクが当時の1961年夏を40年後の視点から回想する語り形式で進む。 まだ第二次世界大戦の傷跡が人々の心に残っている時代。戦争から戻り牧師となった父、牧師となったことに不満を持つ母、吃音が激しく人前では一切喋らないが聡明な弟ジェイク、そして音楽の才能がありジュリアード音楽院に進学予定だった最愛の姉アリエル。 教会で、父の手足となり働く戦友のガス、巡査のドイル、母の昔の恋人エミールとその家族たち。 ニューブレーメンという小さな町に暮らす人々がフランクの目を通して、生き生きと、日々懸命に生きる。 そして物語の大きな柱は中盤に突如訪れる。最愛の姉アリエルが家に帰らない。懸命に捜索する家族。そしてフランクはミネソタリバーに浮かぶアリエルの発見者となる。事故なのか事件なのか。悲嘆に暮れる家族の元に、検死の結果として殺されたことが伝えられる。 誰が何の目的でアリエルを殺したのか。町のごろつきや差別に苦しむインディアンに容疑者として浮かび上がる。しかし、フランクがたどり着いた真相は驚くべきものであった・・・。 少年であるが故、行動の不自由さ、それを巧みに潜り抜けて真相に近づいていくストーリーは、間違いなく珠玉のミステリー小説である。 牧歌的な風景の中で起きた死の連鎖、そして少年が必死で背伸びして青年になっていく通過儀礼的残酷なひと夏の物語には引き込まれました。 この作者の作品「このやさしき台地」も読む予定。そのうちに。舞台は当然ミネソタでしょう。笑

Posted byブクログ

2022/09/05

悲しい物語 でもミネソタ州の田舎町の風景と人々の情感がたっぷりで、荘厳な家族愛の映画を見終わったような、満足感と脱力感を感じる物語。 1961年夏 牧師の父と美しい母と姉に囲まれ、吃音障害を持つ弟と13歳の主人公フランクが経験した特別なこの夏の出来事。 自身の心の底に住み着...

悲しい物語 でもミネソタ州の田舎町の風景と人々の情感がたっぷりで、荘厳な家族愛の映画を見終わったような、満足感と脱力感を感じる物語。 1961年夏 牧師の父と美しい母と姉に囲まれ、吃音障害を持つ弟と13歳の主人公フランクが経験した特別なこの夏の出来事。 自身の心の底に住み着いた戦争の後遺症ゆえに、ひたすら“神”の道を進む父の言葉は、困難にあった町の人びとの心にいつも寄り添っていた。 自分の家族に起こった困難のとき、母はそんな夫に「せめて今日だけは“ありふれた祈り”にして……」とつぶやく。 キリスト教の赦しや救済について、疑い迷い罵るという感情が普通にあること、それでいて、それらをすべて俯瞰するように包み込み潜んでいる“神”の存在。 信仰心ですべてを解決していたら、この本は「つまらない祈り」になっていただろう。

Posted byブクログ

2019/08/20
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

いくつもの死に向き合う中で成長する兄弟。 とりわけひとつは最愛の姉の死。 姉の死にまつわるフーダニットの目くらましも悪くない。 また、そういったミステリ性をおいておいても、周囲の人々との繋がり、母の心身崩壊と再生を通じて過ぎて行く少年時代の特別時間の描き方がとても良いと感じた。 時間の軸を進め、関係者達のそれぞれの死でこの物語を締めくくっていくところもふさわしいクロージングだった。

Posted byブクログ

2018/12/25

40年前の1961年の夏を当時13歳だった主人公が回想する。ミネソタ州ニューブレーメンに住まう主人公とその家族や、かかわりのある人々が構脚橋で起きた出来事とともに丹念に描かれ、時代と西部のテイストが楽しめる。中盤からは・・・もうネタバレしちゃうので書かないけど、じっくり読ませる深...

40年前の1961年の夏を当時13歳だった主人公が回想する。ミネソタ州ニューブレーメンに住まう主人公とその家族や、かかわりのある人々が構脚橋で起きた出来事とともに丹念に描かれ、時代と西部のテイストが楽しめる。中盤からは・・・もうネタバレしちゃうので書かないけど、じっくり読ませる深い味わいがあり堪能しました。初クルーガー。他の作品もボチボチ読もっかな。

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2017/12/25

2014年エドガー賞、 文春3位、このミス3位 1961年夏、ミネソタ州の田舎町 語り手 フランク・ドラム13歳 牧師の父親 ネイサン 芸術家肌の母親 ルース 音楽の才能に恵まれた姉 リーゼ 吃音症の弟 ジェイク ジョン・ハートの『ラスト・チャイルド』『川は静かに流れ』に続い...

2014年エドガー賞、 文春3位、このミス3位 1961年夏、ミネソタ州の田舎町 語り手 フランク・ドラム13歳 牧師の父親 ネイサン 芸術家肌の母親 ルース 音楽の才能に恵まれた姉 リーゼ 吃音症の弟 ジェイク ジョン・ハートの『ラスト・チャイルド』『川は静かに流れ』に続いて『ありふれた祈り』を読んでみると エドガ―賞って長編推理小説だけどミステリー的な要素より 人間の内面を深く描いた優れたヒューマンドラマが評価されてるような印象。 後半、動き出してエピローグまで良かったけど 中盤にかけては退屈な感じ あんまり退屈な時間が長くてどうも エピローグがなかなか効いてましたが たどり着くまでは、いまいち感が強かったなぁ

Posted byブクログ

2017/09/17

★3.5 少年達のひと夏の思い出は、キングの『スタンド・バイ・ミー』や『IT』を彷彿とさせ、取り返しのつかない過ちを回顧する語りは、クックの『記憶』シリーズを思い起こさせる。ただクック作品とは違い、ミステリやサスペンス色はかなり薄く、事件は起きても爽やかさ(と言うには死が身近す...

★3.5 少年達のひと夏の思い出は、キングの『スタンド・バイ・ミー』や『IT』を彷彿とさせ、取り返しのつかない過ちを回顧する語りは、クックの『記憶』シリーズを思い起こさせる。ただクック作品とは違い、ミステリやサスペンス色はかなり薄く、事件は起きても爽やかさ(と言うには死が身近すぎるが)が前面に出ている印象だ。 主人公兄弟の忘れ得ぬ夏は一人の少年の事故死から始まり、あまりにも痛ましい悲劇を経て否応なく子供達を大人へと成長させる。子供らしい好奇心がひとつの悲劇を生むきっかけを作ってしまうくだりは読んでいて痛ましいが、この後に迎える家族の再生と奇跡はその悲劇ゆえに心に響くものがある。

Posted byブクログ