隆慶一郎短編全集(2) の商品レビュー
読んだ覚えがあると思ったら、『駆込寺蔭始末』 封建の世、迫害を受けた女たちの救いの場とされた鎌倉の東慶寺。 その住持・玉渕尼は前中納言の息女で、汚れを知らない純真な少女。 無垢ゆえに傷つきやすい少女を護るのは、麿と名乗る雅な美剣士。 かつて許嫁だった少女のため、朝廷の隠密方棟梁...
読んだ覚えがあると思ったら、『駆込寺蔭始末』 封建の世、迫害を受けた女たちの救いの場とされた鎌倉の東慶寺。 その住持・玉渕尼は前中納言の息女で、汚れを知らない純真な少女。 無垢ゆえに傷つきやすい少女を護るのは、麿と名乗る雅な美剣士。 かつて許嫁だった少女のため、朝廷の隠密方棟梁を担う公卿の地位を捨て、 寺の用心棒となった。 正義の太刀が、女たちを地獄に引き房そうとする鬼どもを一掃する。 連作時代小説。 勧善懲悪的なオチにはなってしまうが、 麿の人となりを主とする人物設定が大好き。 この短編集の中では、「死出の雪」と「狼の眼」がなんともいえず切なくて好き。
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網野史観に基づく史実と、フィクションとの、巧みな融合により、都的好奇心を刺激する傑作を生み出しながら、惜しくも夭折した隆慶一郎の短編全集。 彼の描く主人公は、その活躍はスーパーヒーローであり、その矜持は漢(おとこ)そのもので、読者に爽快な興奮を与えてくれる。 長編ばかりでなく、こ...
網野史観に基づく史実と、フィクションとの、巧みな融合により、都的好奇心を刺激する傑作を生み出しながら、惜しくも夭折した隆慶一郎の短編全集。 彼の描く主人公は、その活躍はスーパーヒーローであり、その矜持は漢(おとこ)そのもので、読者に爽快な興奮を与えてくれる。 長編ばかりでなく、これら短編においても、そのたぐいまれな才能は、いかんなく発揮されている。 その作品群は、何度読み返しても、新たな感動を、読者に呼び起こす。
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短篇集1が「柳生」だったのに対して、こちらは「女」。 女は怖いな、というのが通底しているテーマ。 8篇中4つは「駆込寺蔭始末」で既読だったけれど、1篇読み終わるまではほとんど忘れていた。幸せに再読できた。 女が怖く、女が問題ではあるのだけれど、それを助けるために、主人公によ...
短篇集1が「柳生」だったのに対して、こちらは「女」。 女は怖いな、というのが通底しているテーマ。 8篇中4つは「駆込寺蔭始末」で既読だったけれど、1篇読み終わるまではほとんど忘れていた。幸せに再読できた。 女が怖く、女が問題ではあるのだけれど、それを助けるために、主人公による悪役の殺害が行われる。物語が積み重ねられていくが、殺害が一瞬にして終わるところにカタルシスがある。 その殺害を迷うシーンがある。 「顔だな、顔にしよう」 顔を見て気に入らなかった殺すことにする。甘やかされた顔。殺。荒淫と酷薄の顔。殺。卑しい顔。殺。 男は顔に責任を持たなければならない。女は怖く、生まれながらの呪術師である。 とても怖くて愉快なエンターテインメントであった。
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