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道づれの旅の記憶 の商品レビュー

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2015/05/08

夫婦作家の二人の学生時代文芸部の出会いから、それぞれの頂点まで、主だった小説の粗筋を辿る。二人の死生観が共通し、「死んだ人は物に過ぎない」とのこと。吉村の小説を読んでいて感じたところ。津村の少女小説の全ての紹介も興味深い。戦後の民主主義の中で自由と自立を求めて模索した若い女性たち...

夫婦作家の二人の学生時代文芸部の出会いから、それぞれの頂点まで、主だった小説の粗筋を辿る。二人の死生観が共通し、「死んだ人は物に過ぎない」とのこと。吉村の小説を読んでいて感じたところ。津村の少女小説の全ての紹介も興味深い。戦後の民主主義の中で自由と自立を求めて模索した若い女性たちの姿。それが約15年の吉村の不遇時代に二人の生活を支える収入の元だった!それから純文学に進出していく。津村の作品も与謝野鉄幹・晶子と山川登美子の三角関係を描いた作品「白百合の崖」などはぜひ読んでみたい。吉村が戦争小説を書くに至る経緯は「戦艦武蔵」を通して日本の戦争の戦略的な誤りを主張することから始まったのだ。吉村、津村が史実をどのように調べ、選択したのかを追うのが面白い。「長英逃亡」は長英自身の子孫、そして遠縁の鶴見俊輔も追っており、それが吉村の作品に反映していたのだ。歴史性を追求する執念の作品が彼の真骨頂だと思う。

Posted byブクログ