うたのチカラ の商品レビュー
ある面で悪名高きJASRAC。その発足の背景で始まるノンフィクション…だと思ったが、ほとんどは「私と音楽」みたいなコラム集だった。それも、「日本の音楽の未来」というサブタイトルに反して、振り返り的なものが大多数である。 JASRACの管理するどんな曲がどんなふうに売れた(使...
ある面で悪名高きJASRAC。その発足の背景で始まるノンフィクション…だと思ったが、ほとんどは「私と音楽」みたいなコラム集だった。それも、「日本の音楽の未来」というサブタイトルに反して、振り返り的なものが大多数である。 JASRACの管理するどんな曲がどんなふうに売れた(使われた)か、なんてこともある程度わかるので、30年で1位の「世界で1つだけの花」に次ぐ2位の「居酒屋」は、いったいどんなふうにオカネを稼いでいるのか、というのもわかる。というか、それを掘り下げるネタ記事もあったりする。 文字にするから、という面もあるだろうけれど、ほとんどは歌手や作詞家のことや、詞そのものの話が多くて、曲に関するものは多くない。本書でも少し語られているけれど、ヒット曲の多くは、曲自体は単調なのだ。世界で1つだけの花しかり、ヘビーローテーション然り。「ドレミ〜ドレミ〜」ではじまるヘビーローテーションなんて、ほとんど勢いだけでつくったという激白まである。 なんだか未来が見えねえなあ〜と退屈していたところに、巻末対談、島田雅彦、大友良英、ヒャダイン。なんだこの組み合わせは、と思ったが、島田雅彦はオペラの作詞をしていて、JASRACの会員なのだ。オペラは儲からないが、オペラ作曲家の三枝成彰は、アニメ曲としては比較的売れたZガンダムの曲を手がけていて、その収益をオペラに回している、などの裏話が。それは集英社で純文学を書いているような人が、ONE PIECEの恩恵を受けているようなものだ、って。 そう聞けば、JASRACの存在も悪くはないではないか。いや、だから悪いのか? 結局僕には未来が見えなかったけれど、冒頭の顛末と巻末対談は読み応えがあった。まあ、なんだか変わった本だなあ。
Posted by
- 1