人間の顔は食べづらい の商品レビュー

白井智之(著者)

2022/10/18

意外と読後感は爽やかです。
タイトルから想像してたようなグロい食人描写があるわけでもなく、プラナリアセンター絡みの倫理観は無いところもあるけれど、二転三転する展開で惹き付けられました。初読みの作家さんのはず。
社会から断絶させて飼い主にしか会わず、でも主に古典文学を与えて読ませているクローンはちゃんと賢く人間っぽくなるのか？チャー坊の口調はどれかの作品の（未読だからわからないけど「罪と罰」とか）訳文に影響されてるのかな。柴田さんすっかり……
飼い主に成り代わって革命するクローンたち。食用クローンの育て方あんな酷い方法なら恨みつらみも反骨精神も育ちます（フォアグラにする肝硬変な肝の作り方あんなのかも？）。パンクス。幸せに生き延びてほしいです。ラブを予感させる終わりでした。

2022/07/27

大好きな白井さんのデビュー作。とんでもない設定でありながら、しっかりとしたミステリーな部分が自分には魅力的ですが、いかんせんタイトルからして人を選ぶので、人には勧めづらい。

2021/04/11

白井智之デビュー作。とても面白かった。特殊設定SFミステリだが、設定自体が相当グロいので、苦手な人は避けた方がいいかも。この発想には驚かされる。二転三転する意外な展開も、トリックも見事というしかない。読む手が止まらない作品だった。次作以降も楽しみ。

2019/08/28

「食用クローンが合法化された日本」というディストピアな世界観が秀逸だった。タイトルから察するに、グロい食人描写があるのかと思いきや全くなくて一安心したと同時に、ちょっと拍子抜けした。トリックは非常に手の込んだものなので、犯人の目星はついてもトリックの詳細まで見破れる読者は、少ないのではないかと思う。今作が気に入ったので、作者の他の作品も読んでみたい。

2019/06/27

クローン人間の是非をめぐる近未来ミステリー。疫病により家畜がいなくなり、タンパク源をクローン人間の肉で補おうという考え。
アイデアは面白く、最後まで読んだが、ストーリーに無理があるところが多いのではないか。ずっと地下で育てていたクローンに本を与えたからといって、クローン元の人間より賢くなるのはあり得ない。主人が仕事中に外出できたらしいが、ふつうわかりそうなもの。外部との連絡の手段など不明点多いものの、結末が気になるために読んでしまった。

2019/06/14

クローン人間を合法的に食す時代というだけで読めない方もいるでしょう。食べてるシーンはほぼありませんがグロテスクな描写は多々あります。でもミステリとしてしっかり考えられて良くできてると思います。後半のリーダビリティは大したもので、ミスリードに引っ張られ、たくさんの伏線に指摘されるまで気づかず、作者の期待通りに振り回されて驚いた私は、話の作りでは横溝正史ミステリ大賞での大賞作（本作は最終候補）より好きかもしれません。とはいえ正直いろいろなところに甘さも感じられますので、それらを消化した次作に期待しています。

2019/02/17

読みやすくそれでいて飽きさせない展開と、オチまで目が離せないグロ・ミステリ。一気読みしてしまったので勿体無かったと思いつつも、何日かに分けて読むのも体に悪そう(笑)
著者の若さに瞠目しましたが、「若いから…」とか思わせるような下手は一切無かったのが素晴らしい。

ありがちですが、最後の畳みかけだけ若干物足りなかったと云うか、あれもこれも一気に回収しすぎな気も。そして由島って何だったんだろうか。

2018/10/15

グロい系のミステリー。
私はグロい系は得意なので、面白かった！
現実的な内容ではないにしろ、すぐに話に引き込まれた。

2018/05/19

多様な生物に感染した新型ウイルスは多数の死者をもたらした。安全な食料確保のために作られた食用クローン人間飼育施設で働く和志はある日、除去したはずの生首が商品ケースから発見されるという事件の容疑者にされ…。

横溝正史ミステリー大賞最終候補作で作者のデビュー作。なかなか引力のあるタイトルだけど中身は…。文章は読みやすいが、クローンが出てくるだけで何となくオチが読めてしまうのが致命的だった。
（Ⅾ）

2017/08/01

面白かった。設定がかなり奇抜で楽しい。やや設定の特殊さが首を絞めているところもあるのだけれど、基本的には特殊状況下のミステリとして設定が綺麗に生かされている。推理面ではかなりボロがあるけど、多重解決もののようなつじつま合わせの妙が光っている。正直特殊状況下だし推理の瑕疵については見逃せるかな、と思う。逃げ切りみたいなもので、最後の最後で説明のし忘れがあるくらいで他は気にならない。ロジックでたどり着ける内容にも巧妙に隠された部分があり総合的には見事なミステリ。