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古典注釈入門 の商品レビュー

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2024/05/17

古典注釈の歴史がわかるところが本書の醍醐味。特に江戸時代、北村季吟が登場し今日広く行われている頭注・本文という二段重ね(あるいは現代語訳を加えて三段重ね)の原型が確立する所。いわば、古典を可視化する<型>が成立したことの史的意義を重んじたいという著者の思いが熱く伝わる。 “な...

古典注釈の歴史がわかるところが本書の醍醐味。特に江戸時代、北村季吟が登場し今日広く行われている頭注・本文という二段重ね(あるいは現代語訳を加えて三段重ね)の原型が確立する所。いわば、古典を可視化する<型>が成立したことの史的意義を重んじたいという著者の思いが熱く伝わる。 “なぜ私たちは古典を読むのか。” 共感と違和感が必要だから。古典を読んで、その通りだと感じ、感銘を受けること。人生そのものの意味や、生きる上での姿勢といったものを学び、自分が成長できたという実感を得られることと言い換えてもよい。長い間、多くの人々に読み継がれてきた作品には、共同性を帯びた価値が詰め込まれていて、そこから多くのことを教えてもらえる。 すぐにわからないことは違和感。違和感こそ古典を読む上で必要なもの。 共感と違和感という二項対立は、 ・普遍的な価値に触れて、自分の基礎を形作ること。 ・多様な思考と感情に触れて、自分の幅を広げること。 と言い換えられる。 “徒然草” 「されば、一生のうち、むねとあらまほしからん事の中に、いずれかまさるとよく思ひくらべて、第一の事を案じ、その外は思ひすてて、一時をはげむべし」 “注釈が目指すものとは何か。” 一言で言えば、現代ではわかりにくくなってしまった作品の内容をわかりやすく解説するもの。作品との距離を縮め、古典の感動を読者に手渡す役割をしてくれるもの。 “注釈の役割” ・当時の感覚を掘り起こし今にわかりやすく伝えるもの ・その時代ごとの価値観を反映して、解釈の歴史を提示するもの “近現代のまとめ” 注釈叢書として特に重要なのは、昭和30年代から刊行が始まる、岩波の古典体系、角川の全注釈、小学館の古典全集、新潮集成と続いていく叢書類で、古典体系が飛躍的に注釈の精度を高めたあと、各社がそれぞれの持ち味を出したことによって、幅広い注釈のありかたが出現した。 まさに注釈の季節が到来。今日私たちは古典作品に接するのに十分整った環境を得ていると断言できる。そして、これらの戦後に制作された注釈は、今後百年二百年と命を保って、古典を読みたい読者に利便性を供給し続けることができると確信する。 “文学的な感動とはなんなのだろうか” 文学というものをあえて定義すれば、論理や事実だけではなく感情的な水準をも包摂して、人間とはどのようなものかを探求する、ことばの芸術。 文学は、事実に基づきつつ虚構化をも許容し、論理を持ちつつそれを越えたところにある感情に触れようとし、それを表現する手段として、ことばの技巧を究極まで磨いていくもの。

Posted byブクログ

2019/01/04

月日を経るごとに生きる人々から遠ざかっていく古典というものの真価は、注釈によって引き出されるものであると感じた。ただ理解しやすくするだけでなく古典が著された時代のことなど様々な要素も加味するなど注釈をつくる方の膨大な作業のおかげで、私たちは古典を愉しむことが出来る。注釈というもの...

月日を経るごとに生きる人々から遠ざかっていく古典というものの真価は、注釈によって引き出されるものであると感じた。ただ理解しやすくするだけでなく古典が著された時代のことなど様々な要素も加味するなど注釈をつくる方の膨大な作業のおかげで、私たちは古典を愉しむことが出来る。注釈というものはそもそも秘伝として限られた者のみに伝承されるものだったが、文化の享受者の増加に伴って頭注など形式・技巧が整っていったという歴史は興味深い。

Posted byブクログ

2015/06/26

されど注釈・・・というところでしょうか。 しかし、注釈こそが水先案内人。 注釈への見方が変わりそうです。

Posted byブクログ