粘菌 の商品レビュー
イグノーベル賞を2度受賞した粘菌研究者による粘菌紹介の本。 ただし、本書では研究自体についての解説よりも筆者の研究哲学や、粘菌研究から感じたことについて語る部分が比率として多く、研究自体について詳しく知りたい場合は、同一筆者の「粘菌―その驚くべき知性」を参照する必要があります。し...
イグノーベル賞を2度受賞した粘菌研究者による粘菌紹介の本。 ただし、本書では研究自体についての解説よりも筆者の研究哲学や、粘菌研究から感じたことについて語る部分が比率として多く、研究自体について詳しく知りたい場合は、同一筆者の「粘菌―その驚くべき知性」を参照する必要があります。しかし、研究の概要のみを簡潔に紹介しているため、要点のみでいい場合はこちらを読むことをおすすめします。 むしろ、本書はかなりのページを割いてイグノーベル賞を受賞した後の授賞式の裏話などが記されていて、イグノーベル賞自体に興味がある人には興味深い話が多いです。 【こんな人におすすめ】 イグノーベル賞に興味がある 粘菌について知りたい 研究者がどんな事を考えているのかのエッセイが読みたい
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※このレビューにはネタバレを含みます
粘菌といえばアメーバ、くらいしか思いつけないものの、そのネットワークの構築力が首都圏の鉄道網に類似していたり、近似をとる(=おおまかなあらすじ)ことの動物的な知的感受性が高いという点では粘菌も原始的で単純な生物だと侮ることができない。 イグ・ノベール賞の式典の内容をはじめとして、エッセイとしてとても読みやすい文章。 不安定なものから答えを得るには明確な問いが必要、などなど、興味深い論旨が多く、勉強になった。 粘菌研究といったら南方熊楠、名前が出てきたので今度はこの人の本でも読もうかと思う。
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単細胞。ひとつの細胞から出来ている生物のことだが、この言葉が 人間に向けられると「考えが単純なこと」と、いささかバカにしたよう なニュアンスが含まれる。 これまで何度言われたことか。「なんでそう単細胞なんだ」って。ええ、 そうですよ。だって物事は単純に考えた方が楽じゃん...
単細胞。ひとつの細胞から出来ている生物のことだが、この言葉が 人間に向けられると「考えが単純なこと」と、いささかバカにしたよう なニュアンスが含まれる。 これまで何度言われたことか。「なんでそう単細胞なんだ」って。ええ、 そうですよ。だって物事は単純に考えた方が楽じゃん。 さて、本書は単細胞である粘菌のお話である。2008年に「粘菌が 迷路などのパズルを解くことを証明した」として。そして、2010年に は「粘菌で関東圏の交通網を構築した」として、2度もイグ・ノーベル 賞を受賞した著者。 冒頭のイグ・ノーベル賞授賞式の様子が楽しい。本家ノーベル賞の パロディではあるが、本家の受賞者をはじめ多くの研究者が式典を 心底楽しんでいるのが伝わって来る。 本家の授賞式はよくニュースで流れるけれど、イグ・ノーベル賞の 授賞式の中継をしてくれないだろうか。見ているだけで楽しそうだ。 粘菌には脳も神経もない。ぐで~っとしている粘菌だけれど、迷路 いっぱいに広げてふたつの出口にエサを置いてみると、あらあら 不思議。 半日ほどでエサ場を繋ぐ最短経路だけに管を残して、ふたつのエサ場 を繋いじゃう。 これだけでも面白いのに、関東圏の鉄道網の構築なんて「粘菌って 鉄オタなのか」と思うくらい、現在の鉄道網そっくりのネットワークを 作り上げちゃう。 こういった実験・研究に論考が加えられているんだが、単細胞とは言え、 その能力は奥が深い。脳も神経細胞もない。でも、ネットワークは構築 する。エサ目当てだから本能なんだろうけれど、それは環境適応能力 が高いってことにならないかな。 粘菌の研究が進歩して、いつか人間に向かって発せられる「単細胞」と 言う言葉は、褒め言葉になる日が来るかも。 そうしたら自慢するんだ。これまで何度も「単細胞」って言われたよ~って。 あ…これだから「単細胞」って言わるのかも。
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別に粘菌が人類を救うということではなく、中央集権的やり方一辺倒ではない、自律分散的(=粘菌的)やり方でも良いのではないか、という提言である。 粘菌の不思議さは、ある意味フラクタルなのかもしれないが、例えば成り行きで整備された首都圏や北海道の鉄道網が、粘菌に作らせた道管網と極めて...
別に粘菌が人類を救うということではなく、中央集権的やり方一辺倒ではない、自律分散的(=粘菌的)やり方でも良いのではないか、という提言である。 粘菌の不思議さは、ある意味フラクタルなのかもしれないが、例えば成り行きで整備された首都圏や北海道の鉄道網が、粘菌に作らせた道管網と極めて似ているというように、単純な行動規則により人為的な成果が説明できてしまうことにある。 この本の後半は粘菌についてというよりは、著者が長年の研究活動を通じて体得した人生訓について語られていて、それが非常に興味深い。いわく、適切な問いをすること、ものごとを一時近似で的確に大づかみする、物事は(原理的に)コントロールできない、など。納得。
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副題「人類を救う」という部分は遊んでるのだろうけれど、中身は堂々とした科学読本であり、知的興奮に満ちている。粘菌の鉄道網設計や、粘菌のためらい、の章の面白さは突筆もの。イグ・ノーベル賞受賞の顛末は、他では読めない話でもあり、興味深く読んだ。
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これからは粘菌を見習って自立分散型でいくべきだ、と後輩に力説してしまった。 組織のあり方にも当てはまると思った。
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ここのところ何か生物で割と珍しい分野のものを読んでいた。気持ちが疲れてくるときにはこういうのはよく効く。私にとっての何か大切なものがあるとよさそうと思う
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もっと違う題名付けてたらいい本なのに残念。粘菌について知りたかったから購入したのに、読み終わってみて結局粘菌が何なのかさっぱりわからないまま。題名に騙された感。
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発想とはシンプルこそ面白く深い,を地でいく.単細胞に原始的知性を追う点こそ鍵.こういうシンプルで深遠な発想を追い求めたいもの.
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【粘菌の知恵に、今こそヒトは学ぶべき!】単細胞生物と侮るなかれ。複雑な迷路を解く粘菌の賢さに学ぶべし。イグ・ノーベル賞受賞研究者が贈る、粘菌に学ぶ情報処理の極意。
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