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湯浅泰雄全集(10) の商品レビュー

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2018/03/22

『古代国家の倫理思想』(1966年、理想社)、『日本人の宗教意識』(1981年、名著刊行会)のほか、8編の論考を収録しています。 『古代国家の倫理思想』では、上代から平安末期までの日本倫理思想史について解説がなされています。著者は記紀神話に現われる神に、「地霊」と「英雄」二つの...

『古代国家の倫理思想』(1966年、理想社)、『日本人の宗教意識』(1981年、名著刊行会)のほか、8編の論考を収録しています。 『古代国家の倫理思想』では、上代から平安末期までの日本倫理思想史について解説がなされています。著者は記紀神話に現われる神に、「地霊」と「英雄」二つの類型があることを指摘し、未開の荒野に住む前者の信仰が、そうした悪神を退治する後者の信仰へと移っていったと主張しています。また、聖徳太子以降の日本仏教の性格について考察をおこない、南都六宗における三論宗と法相宗の対立が、平安時代の空海によって弁証法的に止揚されるという図式にのっとって整理しています。 『日本人の宗教意識』は、著者の講演をまとめたものやエッセイに近いスタイルで書かれたものなど、11編の論考が収録されています。あつかわれている時代も近代まで含んでおり、『古代国家の倫理思想』より読みやすいように感じますが、『古代国家の倫理思想』のような一貫した視点で書かれたものではないため、ややまとまりに欠ける印象があります。その一方、長年にわたって著者が関心を寄せてきたユング心理学の立場から、「歴史的心理学」という枠組みのなかで日本思想史を見なおそうとする企図が随所で表明されています。

Posted byブクログ