湯浅泰雄全集(5) の商品レビュー
『東洋文化の深層』(名著刊行会、1982年)のほか、論考11編が収録されています。 『東洋文化の深層』は、著者の年来の主張である「メタ・フィジカ」と「メタ・プシキカ」の区別という観点から、西洋の倫理思想とは異なる東洋の倫理思想の特質について論じられています。とりあげられているテ...
『東洋文化の深層』(名著刊行会、1982年)のほか、論考11編が収録されています。 『東洋文化の深層』は、著者の年来の主張である「メタ・フィジカ」と「メタ・プシキカ」の区別という観点から、西洋の倫理思想とは異なる東洋の倫理思想の特質について論じられています。とりあげられているテーマは多岐にわたっており、マハトマ・ガンディー論やルース・ベネディクトの『菊と刀』をめぐる「罪」と「恥」の問題、道教の瞑想修行や儒教における「良心」の問題、そして人格と身体を切り離した倫理思想では表立ってあつかわれることのない「性」や「老い」の問題などが考察されています。 東西両洋の思想史を眺めわたし、さまざまな領域を横断しながら人間心理の深層にまで降り立って「倫理」とはなにかという問いを考察する著者の学識には感嘆させられます。ただその一方で、なぜその題材がえらばれたのかという理由が見えず、あらかじめ準備された枠組みにあわせて散漫な議論がなされているような印象もあります。
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