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湯浅泰雄全集(8) の商品レビュー

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2021/01/22

『日本古代の精神世界―歴史心理学的研究の挑戦』(1990年、さみっと双書)のほか、7編の論文を収録しています。 『日本古代の精神世界』は、先に刊行された『古代国家の倫理思想』(1966年、理想社)と『古代人の精神世界」(1980年、ミネルヴァ書房)の内容を一冊にまとめて大幅に加...

『日本古代の精神世界―歴史心理学的研究の挑戦』(1990年、さみっと双書)のほか、7編の論文を収録しています。 『日本古代の精神世界』は、先に刊行された『古代国家の倫理思想』(1966年、理想社)と『古代人の精神世界」(1980年、ミネルヴァ書房)の内容を一冊にまとめて大幅に加筆修正をおこなったものです。和辻哲郎のもとで日本思想史を学んだ著者が、古代日本の思想史について考察を展開しており、日本の天皇制と倫理思想との関係について、あるいは平安仏教における「真俗一貫」の考えと山岳仏教的な性格について論じられており、最後に中世における武士の登場と鎌倉仏教の成立によって、思想史の新たな舞台が形成されていったことが展望されています。 この本で目を引くのは、著者のユング心理学への関心にもとづいて古代日本の心性が掘り下げられているところです。著者は、丸山眞男が日本思想史に広く見られる「神道的夢幻抱擁性」を指摘し、日本の思想史において知的座標軸が欠如していることを批判的に論じていたことに触れています。著者は、丸山の批判は明確な原理・原則にしたがう西洋的思考様式を基準にしていることを批判し、ユング心理学における「無意識の集合的心性」を日本の古代思想史のうちにさぐる試みをおこなっています。 ユング心理学を導入しているところに著者の独自性はありますが、「国民文化」という枠組みのもとで古代日本のエートスを探求するというスタンスは、和辻の立場を引き継いでおり、批判的に読むことが必要であるように感じます。

Posted byブクログ