黒い瞳のブロンド の商品レビュー
フィリップ・マーロウ主人公の探偵もの。遺族公認の「ロング・グッドバイ」の続編と謳ってるが、単体としても充分楽しめた。「ロング・グッドバイ」は村上春樹氏訳で読んだので比較はできないが、今作のマーロウはそんなにタフでもなくウエットな感じがした。終わり方に工夫が欲しかった。
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オリジナルと比べると、弱みをさらけ出す人間的なマーロウという気がする。オリジナルがヒーロー過ぎるので、このくらいが人間らしくていいとも言えるか。チャンドラーのファンからは散々なロバート・アルトマン版の「ロング・グッドバイ」と同様に、マーロウ云々を気にせず、クラシックなハードボイル...
オリジナルと比べると、弱みをさらけ出す人間的なマーロウという気がする。オリジナルがヒーロー過ぎるので、このくらいが人間らしくていいとも言えるか。チャンドラーのファンからは散々なロバート・アルトマン版の「ロング・グッドバイ」と同様に、マーロウ云々を気にせず、クラシックなハードボイルド探偵ものだと思うとなかなか愉しい。個人的にこういうのが好きなんだと再認識した。
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レイモンド・チャンドラーの生んだ私立探偵フィリップ・マーロウは、多くのミステリー作家に愛されている。本書も「長いお別れ」の続編として書かれた。 マーロウファンとしては読むしかない。 マーロウの元に、黒い瞳でブロンドの美女、クレア・キャベンディッシュが仕事の依頼に訪れた。 愛人だ...
レイモンド・チャンドラーの生んだ私立探偵フィリップ・マーロウは、多くのミステリー作家に愛されている。本書も「長いお別れ」の続編として書かれた。 マーロウファンとしては読むしかない。 マーロウの元に、黒い瞳でブロンドの美女、クレア・キャベンディッシュが仕事の依頼に訪れた。 愛人だったニコ・ピーターソンを探して欲しいという。 ニコは既に死んでいることがすぐに分かったが、クレアは最近ニコの姿を見たという。 釈然としない思いを抱きながらも、クレアに惹かれるマーロウは調査を続ける。 「長いお別れ」のネタバレ有り。この話には初めすんなりと入っていけなかった。 なかなか動かないプロットはともかく、皮肉っぽい独白といい、くどくどした文体といい、今一つマーロウのイメージにそぐわない印象だった。 終盤の展開は楽しめたのだけど。
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ソフィー・ハナによるポアロ物の続編にも驚いたけれど、このフィリップ・マーロウ物の続編にはさらに驚いた。 こんな作品があったとは。 『長いお別れ』を読んだのはもう遥か昔のことなのでおぼろげではあるものの、この「ザ・ハードボイルド」感は再現性の面でそこそこ完成度が高いのではないかと思う。 とにかくタフで、でもお人好しで、意外に女に翻弄されるタイプで。 いちいち気の利いた皮肉を返すところ、世の中に対してはすに構えたところも健在だし、何よりブッカー賞受賞作家の手がける続編ということで時おりそこはかとなく感じる秀麗な表現・描写がぐっとくる。 ジョン・バンヴィル名義の本も読んで見たくなった。
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「長いお別れ」よりテンポがいいし、なにより描写が上手い。オリジナル作品より私は気に入りました。不満をあげるとすればクライマックスの終わり方かなぁ。
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レイモンド・チャンドラーの遺族公認の『ロング・グッドバイ』の続編らしい。著者はジョン・バンヴィル(別名義ベンジャミン・ブラックという名前を使っている) 『ロング・グッドバイ』ファン向けのパスティーシュという感じでした。テリー・レノックスを始めとした登場人物もたくさん再登場するし、物語もそれなりに楽しめた。 クレア・キャヴェンディッシュという黒い瞳のブロンド美女がフィリップ・マーロウを訪ねる。ニコ・ピーターソンという男性を探して欲しいと依頼するも、その男性はすでに死亡していた。しかし、クレアは死んだはずのピーターソンを目撃したという。 --- memo: 1023 私は、ビールを注いだグラスをわきに2センチほどずらし、こぼれた泡がつくった輪の上に再び戻した。二時間ほど前に同じ動作をしたクレア・キャヴェンディッシュのことを思い出した。ある女が頭にこべりつくと、どんなことでも彼女を思い出すきっかけになる。 1802 「アイオワ州ホープ・スプリングズで生まれたの。もちろん行ったことなどないでしょうね。行ったことがある人なんていないわ。ホープ・スプリングズは行くところじゃなくて去るところだから」 2386 彼女は立ち上がり、スカートに足を通し、わきのジッパーをとめた、女が服を着るのを眺めるのが好きだ。もちろん、服を脱ぐのを見るのと同じほど楽しいというのではない。どちらかと言えば審美的な目の保養ということだ。 3834 私はグラスの中身を飲み干し、バーニーの飲み残しも飲んでやろうかと思ったが、我々マーロウ族がけっして越えない一線というやつがある。
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熱心なチャンドリアンではないまでも、フィリップ・マーロー・シリーズの後日談と言われて食指が動かないわけもない。この世の文学の中で最も信奉するハードボイルドの根っこの一つみたいな存在であるチャンドラーを、現代に蘇らせようという人がいるならば、せっせとその火事場に駆けつけたいという...
熱心なチャンドリアンではないまでも、フィリップ・マーロー・シリーズの後日談と言われて食指が動かないわけもない。この世の文学の中で最も信奉するハードボイルドの根っこの一つみたいな存在であるチャンドラーを、現代に蘇らせようという人がいるならば、せっせとその火事場に駆けつけたいという野次馬根性もしっかり持ち合わせている限り。 チャンドラーはハードボイルドと言われるが、ハメットやヘミングウェイに比べるとやはり饒舌と言われる。もっともハメットのサム・スペードやコンチネンタル・オプに比べ、マーローは明らかに饒舌である。作者が託した饒舌の妙、と言ってもいい。米国に移住したとは言えチャンドラーはパルプフィクションの作家にとどまらず、ハードボイルドと言われる地平においても騎士道精神を貫かざるを得ない英国文学の血流のもとに生きていた。娯楽小説でありながら英米文学の正当なる直系として脈々と受け継がれるための条件を備えていた。文学性、気品、あるいはそれ以上の人間的なる何か、等々。 しかし、そうしたチャンドラーという、およそ手法とキャラクターが確立してしまった作風のシリーズを、改めて再現させようというのは、よほどのやる気と強い自負、誇り、その他(あればあるほど心強い)がなければ、できない試みであったろう。作者のベンジャミン・ブラックはジョン・バンヴィルの本作におけるペンネームであるとのことである。書きかけ原稿の続きを完成させてみせたロバート・P・パーカー(『プードル・スプリングス物語』)に続くチャンドラー再生の試みに挑んだ名誉あるペンネームであると言っていいだろう。 また本作は、『長いお別れ』の後日談である。『長いお別れ』は、『ロング・グッドバイ』として後に村上春樹が翻訳したり、NHKでテレビドラマ化されたり、もちろん映画ファンの中では70年代を敢えて舞台にし、ラストは原作と異なる結末としてあまりに印象的であったロバート・アルトマン監督の映画などで、様々なジャンルの人たちにチャンドラーの何たるかは知らなくても、これだけは、というくらいよく知られているであろう、シリーズ中、おそらく最も人気の高い作品である。 そしてテリー・レノックスという非常に重要な登場人物。マーローの戦争時代の仲間であり、個性豊かで、探偵の人生にとても影響を与えている男の存在が、原書と今甦った続編を繋ぐキーワードみたいなものなのだが、もちろん他にもお馴染みの顔ぶれが、顔または名前を出してゆく。 何よりもチャンドラーが書いたように書かれている本書のフィリップ・マーローは、映画のエリオット・グールドよりは、ロバート・ミッチャムやハンフリー・ボガートを想起させる純正チャンドラーワールドの住人として安心させられる。グールドのマーローが、アメリカン・ニューシネマの旗手が描いたマーローとしてたまらなく衝撃的で魅力的な探偵だったことはさておいて。 そしてひねられたストーリーと逆転の見事さ。黒い瞳をしたブロンドといういかにも怪しげな雰囲気を立ち上らせた依頼人に加え、死んだと思われる男がピンピンしているのを見かけたという出だし。何よりもマーローがまた熱い恋に胸を焼かれる気配、等々、まさに『長いお別れ』と重なる、チャンドラーですらこれほどのサービスはしないだろうと思われるようなお膳立てがたっぷりで、現代作家が過去の歴史的金字塔作品の続編に挑むというチャレンジ精神と、フェアに行きたいという騎士道精神を同時に発揮してくれた仕事っぷりがじっくり味わえる逸品となっている。 ハードボイルド・ファンには垂涎物の話題作であろうが、そうでない方にももしかしてこれがチャンドラー作品に触れるきっかけとなってくれるなら、大変有難いような出版であるように思う。なんであれば、このままシリーズに挑めばどうだろうかね、ベンジャミン・ブラックさん。
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かつてジョー・ゴアズが『マルタの鷹』の前日譚『スペード&アーチャー探偵事務所』を書いたのを思い出した。あれも面白かったが、こちらも負けず劣らずの傑作。アイルランド人作家がここまでアメリカらしい作品を書けるとは。ラストで懐かしのあの人物と再会。何ともほろ苦い。読み逃していた『バーチウッド』、なるべく早く読もうっと。
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今年「ロング・グッドバイ」を読んだということもあって読んでみました。が。 他の方のレビューでも言われているように、女の事で頭がいっぱいすぎる。タイトルがその女性の事ずばりだから、そういうものだと言えばそうなのかもしれないけれど、ほぼ最初から最後まで事件よりも彼女のことばかり。しかもマーロウにしてはちょっとくよくよ女々しい。 「ロング・グッドバイ」の続編ということで手に取っておいてなんだけど、続編じゃ無い方が良かった気がする。故人の作品を引き継ぐというのは本当に、難しいことだ。
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結構愉しんで読んだ一方、やはり訳文にいまいち感を覚えた。村上ファンでは決してないけれども、やはり作家と翻訳家の間にある文体のリズムに関しての絶対的な差を感じたかな。 まぁそれもこれも原文そのものに起因するものかもしれない。 当方この作家につきお恥ずかしながら全く存じ上げていないで...
結構愉しんで読んだ一方、やはり訳文にいまいち感を覚えた。村上ファンでは決してないけれども、やはり作家と翻訳家の間にある文体のリズムに関しての絶対的な差を感じたかな。 まぁそれもこれも原文そのものに起因するものかもしれない。 当方この作家につきお恥ずかしながら全く存じ上げていないですが、チャンドラー、特に『ロング・グッドバイ』にあった絶妙のオチというか間合いが欠落していると思ったかな。その結果、愉しんだとは言いつつ、何となく冗長さも感じたんですよ。 結局、本家と作家には勝てんというありきたりの結論なんでしょうかね。
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