信長研究の最前線 の商品レビュー
「重要なことは、近年の研究において、信長の強い革新性などが否定されつつあることである。しかし、一般向けの書籍では、相変わらず「超人的な信長像」が描かれており……専門家と一般の方との認識差は、ますます広がるばかりである。」 若手・中堅の研究者が「現在の信長研究の到達点」を15のテ...
「重要なことは、近年の研究において、信長の強い革新性などが否定されつつあることである。しかし、一般向けの書籍では、相変わらず「超人的な信長像」が描かれており……専門家と一般の方との認識差は、ますます広がるばかりである。」 若手・中堅の研究者が「現在の信長研究の到達点」を15のテーマで解説。 資料研究が大きく進展しだ結果、従来のイメージのような革新性は否定され、ごく中世的で保守的な存在であったことが明らかになってきた。見ようによっては地味でつまらない信長像になってしまった。これまで、革新的人物として信長をイメージしてきた向きには、「こんなのおれの知ってる信長じゃない!」となることうけあい。 とはいえ、根拠のないイメージだけの信長が独り歩きしてきた現状に問題があるし、等身大の信長像を明らかにすることは非常に価値がある。また、そうした正当な検討の中で改めて信長の再評価がなされるはず。それを一般に向けて書いた本書の意義はとても大きいと思う。 これから先何年かは、信長をめぐる言説はたとえ専門家でないとしても本書を参照することになるんだろう。 信長について語るとき、ちゃんと歴史学の成果を押さえているか、思い込みのイメージで語っているかは、ここでの議論を踏まえているかどうかがひとつの試金石になるので、マユツバな言説を見分ける基準になると思う。
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いろんな人の最近の信長の研究の成果を、いろんな人がいろんなテーマで小稿作って、客観的にまとめたもの。戦国時代の研究はどんどん進んでるみたいなんで、こうやってわかりやすい一冊にまとまるとありがたい。
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信長は革命家であり、破壊者であり、独創的である。カリスマ性もある。 と言った偶像化された信長だが、最近までの研究成果を13人の筆者により、ある意味で否定していく。 でも、中世の面白さを否定するものではなく、逆にますます面白くなってくる。 分かりやすく展開されていて、とても面...
信長は革命家であり、破壊者であり、独創的である。カリスマ性もある。 と言った偶像化された信長だが、最近までの研究成果を13人の筆者により、ある意味で否定していく。 でも、中世の面白さを否定するものではなく、逆にますます面白くなってくる。 分かりやすく展開されていて、とても面白い! ドラマや小説で語られていることを丁寧に学術的に打ち返しています。
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中世史は本当に熱い。いろいろおもしろかったが、特に足利幕府と義昭の再検討、信長から離反した武将の研究は興味深い。武田信玄も義昭上洛を支持していたり、駿河侵攻が同時作戦だったとか、松永久秀に謀反癖がなかったとか、周りのエピソードもおもしろかった。楽市楽座や関所の廃止など信長の独創で...
中世史は本当に熱い。いろいろおもしろかったが、特に足利幕府と義昭の再検討、信長から離反した武将の研究は興味深い。武田信玄も義昭上洛を支持していたり、駿河侵攻が同時作戦だったとか、松永久秀に謀反癖がなかったとか、周りのエピソードもおもしろかった。楽市楽座や関所の廃止など信長の独創ではなく流通の成熟した畿内とう地理的な特徴を踏まえてで、しかも三好氏がやっていたことの継承発展という歴史的経緯をしっかり見ないといけない。近年、重要性が指摘されている国衆の扱いも他の大名と変わるとこはない。尾張出身者に偏った抜擢。明智と四国取次の問題。戦国時代のルールの中で信長も生きている。そのルールを破ったり、地域の力関係を無視した人事をすると不満がたまり、その受け皿として足利義昭が正当性を与え、離反や謀反が起こる。ほか法華宗との関係などもおもしろかった。天正3年の右近大将任官が大きな画期。朝廷から正式に義昭没落後の公儀として認められ、信長自身も自覚を持って天下静謐の為に戦っている。徳川家康が対等の同盟者で義昭の直臣から信長配下の国衆へと手紙の形式が変わっていく。
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