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不許可写真(1) の商品レビュー

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2019/07/13

 検閲という言葉から連想されるもの。国家による情報統制、言論の封殺、国民は何も言いたいことを言えず、身を潜めてじっとしている。暗い、暗い時代。。。  本書は、日中戦争から第二次大戦時の毎日新聞の従軍記者の写真と記事のファイルである。正確にこれをなんというのかはわからないが、新聞に...

 検閲という言葉から連想されるもの。国家による情報統制、言論の封殺、国民は何も言いたいことを言えず、身を潜めてじっとしている。暗い、暗い時代。。。  本書は、日中戦争から第二次大戦時の毎日新聞の従軍記者の写真と記事のファイルである。正確にこれをなんというのかはわからないが、新聞に載せる予定の写真とその説明文をはりつけたファイルである。実際にこれを陸海軍に提出したようで、“不許可”“検閲済(許可)”といった押印が押されている。文章、写真そのものにも赤ペンで“この表現を変えてくれ”とか、“ここはぼかして載せてくれ”とか書いてある。まるで通信教育のようだ。  検閲の項目も、いわゆるガイドラインがあったようで、兵器の内部や飛行場など、機密がバレるような写真はダメ、将校の階級章が写っていればダメ、屍体の写真はダメなどなっている。  本書を見ていくと、半分近くあるいはそれ以上が“不許可”となっている。モロに死体が写っていたり、戦車や軍艦の内部から移した写真がゴロゴロしてたり、まあ、おおむねガイドラインに抵触しているので仕方があるまい。特に上陸作戦に関わる写真はとても神経質に検閲をしていたようで、港や上陸舟艇など、少しでも写っていれば“不許可”になっていたようだ。記者も、同行している軍人たちも、ガイドラインは知っていただろうに。よくこんなにいろいろな写真を撮らせてくれたな?というのが素直な感想だ。部隊とよっぽど人間関係ができていたのか、ほかにも艦上で水浴びしている写真や、仮眠の写真まである。  面白いのが、まるで親の仇をとるように“不許可”印がいくつもおされている写真、“不許可”“検閲済み”印が何回も押されて訂正されている写真(結局どっち?)。検閲側が何とか採用してあげようと努力したのか、新聞社側が何度も交渉したのかはわからないが、お互いの努力の跡がみられる。検閲とは、機械的に冷たく切り捨てるもの、というイメージがあったが、意外に人間的な面もある。

Posted byブクログ