巴里茫々 の商品レビュー
晩年の北氏が、想い出の地を回想、再訪して書かれたエッセイ二編を収める。これだけで一冊の本にするには、量が足りなかったようで、薄い上に活字がスカスカでやたら大きい。「カラコルムふたたび」はテレビの企画で、かつて京大隊と訪れたカラコルムを再訪した際の記録だが、さすがに無理があったのか...
晩年の北氏が、想い出の地を回想、再訪して書かれたエッセイ二編を収める。これだけで一冊の本にするには、量が足りなかったようで、薄い上に活字がスカスカでやたら大きい。「カラコルムふたたび」はテレビの企画で、かつて京大隊と訪れたカラコルムを再訪した際の記録だが、さすがに無理があったのか、ほとんどが愚痴で、最後は寂寞の念ばかりが募る結果となる。一方、「巴里茫々」は「どくとるマンボウ航海記」でも描かれた、パリに辻邦生夫妻を尋ねたときの回想。内容は当然、「航海記」と重なるのだが、老境に入った作家の目から、語り直された想い出にはまた違った味わいがある。迂生は「航海記」でTとイニシャルだけだった人物が、辻邦生氏だと知って、少し驚いた。
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パリ在住の辻邦生を訪れたのに、なぜか「ブッデンブロオクス」の講釈を受けることに。1節ずつ書き抜きしたカードとか、凄まじいなあ。 後半は「カラコルムふたたび」、パキスタンの再訪記。欝や下痢と戦いながら、ユンケル黄帝液を飲みながらのテレビ番組作成。こっちもお疲れ様。
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辻邦夫への甘え、案内人との再会に関する現実、どちらも作家の人間性を垣間見るようでなかなか読ませてくれます。とくに後者は何と言いましょうか、厳しい訳ではないけれども現実というものはそういうものだと腹落ちするもので、妙に感動的でした。
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巴里での辻邦生・佐保子夫妻と過ごした日々。不思議な関係と私は思わざるを得なかった。旅行者であったがゆえに、パリの煤けた黒染んだところも憧れたということが分る。そしてパキスタンのカラコルムでの26年ぶりの訪問と登山。北氏が登山好きとは初聞だった。道案内をしてくれた案内人メルバーンと...
巴里での辻邦生・佐保子夫妻と過ごした日々。不思議な関係と私は思わざるを得なかった。旅行者であったがゆえに、パリの煤けた黒染んだところも憧れたということが分る。そしてパキスタンのカラコルムでの26年ぶりの訪問と登山。北氏が登山好きとは初聞だった。道案内をしてくれた案内人メルバーンとの久しぶりの出会いは少し寂しい。年齢だけではなく、国際政治情勢の変化もあるのだろうか。「詩情あふれる」と帯には表示されていたが・・・
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短いながら静謐な情景が描かれる.淡々とした語り口の中に詩情的世界が開けてくる.これぞ北杜夫文学だと思わせる.確かにトーマス・マンを彷彿とさせる.
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