クララ・シューマン の商品レビュー
男は天下を動かし、女は男を動かす。 日本の連合艦隊総司令官を務めた、山本五十六の言葉だ。彼がこの言葉を残した背景はちょっとわからないが、言葉だけは今に残っている。 クララ・シューマンという女性ピアニスト、名前の通りロマン派の巨匠シューマンの妻でもある。 元々有名なピアニストであ...
男は天下を動かし、女は男を動かす。 日本の連合艦隊総司令官を務めた、山本五十六の言葉だ。彼がこの言葉を残した背景はちょっとわからないが、言葉だけは今に残っている。 クララ・シューマンという女性ピアニスト、名前の通りロマン派の巨匠シューマンの妻でもある。 元々有名なピアニストであった彼女こそ、夫・ロベルトの作品を世に広めた第一人者だった。 まさに、冒頭の五十六の言葉のとおりの女性である。 本書を読んで印象に残ったのはそのプロデュース力だ。 厳しい父親に育てられたクララは、成長すると自分の演奏会をセルフプロデュースするようになる。 誰の曲を、どの順番で演奏すれば、受けが良いか。 そして夫・ロベルトの曲を何番目に演奏するかを、すべて考えて臨んでいた。 100年以上も前に、すでに演奏家として生計を立てていたという事実は知らなかった。 もう一つは、その不屈の精神とでも言おうか。 彼女は家族に恵まれた一方、その家族たちに振り回されることの多い生涯だった。 成長するにつれ厳しい父とは対立してきて、演奏会を妨害されるようになる。 また夫は次第に名を成していくものの、精神が不安定で、やがて体を壊しがちになる。子供には恵まれたが、やはり病気などで早く亡くす者もいた。 そんな中、一家の生活を一心に担う覚悟を片時もなえさせることなく、ヨーロッパ中を演奏会で駆け巡った。 同時代の男性ピアニスト以上に男性的だったとも評されている。 またブラームスやリスト、パガニーニなどとも親交があったということで、この時代の作曲家たちの活躍を強くバックアップしていたということになる。 まあこれらのエピソード、自分が知らなかっただけで、けっこう有名のようだが。
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