明治の「性典」を作った男 の商品レビュー
「性典」である。誰だ、エッチな事を想像したのは…って、少し前にも似たようなことを書いたけれど、これも性的興奮を呼ぶような本ではない。けれど違う興奮が得られてしまう。エキサイティングな作品だった。 性典そのものが主役ではなく、それを「作った男」を追う本である。 ちょっと...
「性典」である。誰だ、エッチな事を想像したのは…って、少し前にも似たようなことを書いたけれど、これも性的興奮を呼ぶような本ではない。けれど違う興奮が得られてしまう。エキサイティングな作品だった。 性典そのものが主役ではなく、それを「作った男」を追う本である。 ちょっとのヒントで、あっというまに「特定」されてしまう現代とは違って、積極的に自分の記録を残していない明治の人を探すのはむずかしい。 著者は性関係(一人遊びとか)を追求して東大の准教授になったという人であるが、古文書が読めるわけではないので、苦労しながら、性典を作った男、千葉繁を追いかけていく。 ここでまったく意外にも、千葉の足取りの中に僕が住む町が出てくる。僕も通う地方の図書館で、著者はさらなるヒントを手に入れる。ときおり見失いながらも、千葉本人、そして周辺の人を追っていく。 人を追いかけるのって面白い。素直に思う。 「性典」の中身はさほど多くは出てこない。その中身そのものよりも、それがどのようにして作られ、社会に受け入れられ(まあ、一種のベストセラーだったそうだ)、そして社会から忘れられていったか、が語られる。 ともかく、人に歴史あり、であるし、著作には背景あり、である。
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